アンパンマン ことばずかんDX ペン修理

アンパンマンおしゃべりいっぱいことばずかんDX

セガトイズ製のアンパンマン ことばずかんDXの修理依頼です。

タッチペンからの音声が、ノイズで聞き取れないとのことでした。届いたペンの動作をみたところ、起動音らしき雑音(ジーッ、ジーッ…)とタッチの際の動作音も(ジーッ、ジーッ…)という雑音がひどく、何か言っているのだろうけど、起動やタッチのタイミングはあっているけど、発声が全くの雑音でした。早速、開封し基板を拝見したところ、導線外れやスピーカー自体の概観には不具合は見受けられなかったので、音声をオシロでみてみました。

聞き取れる音と波形は一致しており、発振が原因らしいですね。恐らく回路後段のオペアンプの定数が、おかしくなったで、発振してしまったのかと推測しました。※しかし、起動音(らしき音声)の終了後やタッチをしていない期間は、ノイズが止んでいるので、不可思議な点は、残ります。一応、カードにタッチすると、反応はするので、前段のイメージ認識回路には、問題なかろうという安易が認識で基板のチェックに移りました。

さて、基板を拝見すると所々問題が出てきました。

電池BOXの負極からの液漏れで基板側のパーツ本体と基板の配線に腐食が出ておりました。負極リード線の酸化も酷く半田もできないので、取り替えております。

後段のオペアンプ(と思われたCOB)にも、負極リード線からの腐食が伝わり近接している0オームのチップ抵抗も腐食しておりました。

負極リード線の腐食伝播
イメージセンサ処理IC周辺回路の端子腐食

不具合原因の究明ですが、症状と状況の因果関係を考察してみました。

■オペアンプの発振について

スピーカーから発振音は、腐食パーツ(恐らく抵抗値)が原因で利得定数が変化し発振してしまったと推測し、反転回路か非反転回路かは回路図を起こしてみて確認しました。

出力からの帰還があるかと推測しておりましたが、RCフィルタからの入力をSP側出力するという回路構成になっており、定数で設定されている抵抗値等の異常と推測しておりましたが、実際の回路は異なっており推測が外れ振り出しに戻りました。一方、電池BOXの負極に接続されているリード線付近の赤×印の0Ωのチップ抵抗(R4)に腐食が見つかり、回路上での計測では、異常抵抗値を示しておりました。このGNDに接続されているR4のジャンパーの役割は、仕様書が無いので何とも言えないのですが、C30, C31にも多分に影響し回路設定を変えてしまいそうで、早速取り外し短絡したところ無事アンパンマンの起動音が現れました。

が、しかし、音量がものすごく小さい。本オペアンプの設定に寄与する外付けの部材は、R29, C29 RCのフィルタとR28の音量制限の抵抗、仕様不明のC30, C31のキャパシタ。仕様書もないので、増幅率は、そもそも設定できるかという疑念もあるのですが、万事他の策も思いつかないため、R28の抵抗値で音量を調整しました。(所謂、ボリュームの調整のような感じで。)

■イメージ認識部の腐食について

オペアンプ部の腐食対応が完了し、当初からカードにタッチした反応は、確認できたので、問題なかろうとたかをくくっていたら、画像にタッチしても反応がなくなっておりました。( ̄▽ ̄;

考えてみると、当初の雑音発声時の動きは、タッチ動作の反応と思い込んでいたのですが、実は違っておりました。オペアンプの回路を調査しておりましたら、このオペアンプには、Enable信号がありイメージを認識した際にしか、Enable信号が入力されず、発振もこのEnable時のみにしか雑音が出てこなかったことが分かりました。したがって、タッチ動作の反応で発振ノイズが出ていたに過ぎませんでした。ここも振り出しに戻った感があります。基板の配線を回路図に起こし調査してところ、配線の断線とチップ抵抗の腐食による異常値とが発見されました。赤印×に断線が見つかり、R12の抵抗値も異常値でした。

早速手持ちのリード抵抗とリード線で回路を復活させました。※イメージ認識LSIのSONIXからR13に接続されるパターンも断線していることが、後に判明しその箇所も配線しております。

動作確認にて、無事、画像認識と音声の発声が確認でき無事修理完了としました。

電池ボックス負極からの液漏れ対策としては、LSI側を保護するため、カプトンテープで覆いご依頼者様には、液漏れには十分ご注意いただくことをお願いしました。

※拡大鏡では大きく見えますが、以前のType-BのMINI USBコネクタの断線修復同様に極細作業は、とても疲れますが、無事動作したときは、かなりうれしいですね。

P.S

ベネッセ World wide kids カードリーダーの修理にて、同じピンハイのアンプに遭遇しました。アンパンマンのおしゃべりいっぱいことばずかんDXのアンプの型番は、GPY0030Bとなります。

【ご依頼者様のお声】
久しぶりに声を聞かせてくれるアンパンマンに子供がとても喜んでおります。
それを見て、私もとても嬉しい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。
瀧下様には問い合わせから診察内容まで、何度も丁寧で迅速な素晴らしい対応していただきました。
診察内容についてはとても詳しく教えてをいただき、とても安心してお願いすることができます。
もうダメかもなと諦めかけていたので、治って戻ってきてくれてとても嬉しいです。
瀧下様にお願いして本当によかったです。
また機会があればぜひお願い致します。
この度は無償で修理していただき本当にありがとうございました。


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