コンプリートセレクション 仮面ライダー1号 変身ベルト モーター修理

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コンプリートセレクション 仮面ライダー1号 変身ベルト モーター修理

本品は、修理実績の記事から検索された方からの修理依頼があります。発売から既に年月が経っており、経年によるモーターグリスの固着でモーターが駆動しなくなる事象が多いです。こちら参照

中古市場では、新品未開封のお品が高額で取引されておりますが、恐らくその多くは、同様の不具合で何らかの不具合が生じるように思います。

さて、今回のご依頼は、前述のように新品未使用として購入されたのですが、手元に届いてからLEDが点灯しない不具合があり、交換を申し入れたが、やはり経年による不具合ということで断られ、お困りとのことでした。

当医院では、故障品と知りつつ購入され、その修理を依頼されるケースもあろうかと思いますが、有料修理となるおもちゃにもあるように有料修理とさせていただいております。

前置きがいつも長いですが、前述のご事情もあり、それでは是非当医院で修理をさせていただきたく受け付けをさせていただきました。早速状況を拝見しましょう。

やはり動作を確認すると、プッシュボタンの押下で起動音声は正常に鳴りますが、肝心のタイフーンのLEDが点灯しません。

電池ボックスの錆

電池ボックスの負極に腐食痕がありますが、致命的ではありません。

本体

分解し本体と取り出してみても外観的な断線や不具合は見当たりません。

が!なんと!改造(もしくは修理)されているではありませんか!

マブチ製 FA-130RAモーター

新品未使用のはずが、がっつりモーター交換されています。マブチ製のFA-130RAモーターです。

過去の記事でも説明していますが、本品で使用されている純正モーターは、制御回路向けの専用モーターで市販のモーターに交換した場合、恐らく動作しませんというか、今回のご依頼で動かないのが実証されました。

動作状況を調べてみると、明らかにモーターへの供給電流が足りずLEDの同期が取れなくなっております。回転がのろのろです。そのためにLEDも点灯しなくなっておりました。試しに、外部電源でモーターの回転数を上げると綺麗に模様を描いてくれます。この事実をご依頼者様へお伝えしたところ、ショックを受けられておられました。他のおもちゃ病院などでは、おそらく通常は、ここで修理不可能としてしまうかもしれませんが、当医院は違います。何とか、LEDが光るまでの策を検討します。

このLEDは、最近駅看板などでもよくみる、残像の視覚効果を利用した点灯パターンを回転するプロペラ上に映し出す仕組みなります。仕組み参考ページ

変身ベルトは、タイフーンのスリット間の縦に5つ並んだLEDを使用してタイフーン裏の同期用LEDと本体側フォトダイオードで回転同期を取り点灯パターンを作りだします。なので、タイフーンが回転する速度とそれに同期した信号の生成がLED点灯に重要な要素となります。

まずは、いつもの通り回路図に起こします。タイフーン内LEDと モーターは、ダーリントン回路で制御されておりました。注意:タイフーン内回路は、回路がどうなっているのか不明なので、LED二個で代用記載しています。実際は、LED五個と同期制御回路など複雑となりますので、ご注意ください。

既存の製品回路図(一部)

ここでいったんひとりブレストタイムです。なぜブレストをするかというと、中古で購入された当初の持ち主の方が、なぜ市販のマブチ製モーターに交換をされたのかと疑問に感じたからです。

推測ですが、大事に保管していたベルトを久しぶりに動かしてみたら、モーターが”うんともすんとも”で、ぱっと見、マブチの130モーターを同じ外形をしているからと交換をされたのかもしれません。それとも、モータードライバの回路に不具合にあり、モーターではなく回路に不具合があったのかもしれません。はたまた、当医院の修理実績のように単なるグリスの固着を故障と間違えて交換してしまったのかもしれません。どちらにしても、現回路が正常かどうかをざっくり判断します。回路図から、IBの値を計算します。

IB = (3.3 – 2.1)/10k = 0.12mA

NPN 8050のデータシートを確認し、IC – VCEの特性グラフを参照すると、やはりベース電流が低めにみえます。ダーリントン構成ではありますが、LEDは光らない状態でモーターのみの電流を実測すると、250mA程度で、これも低くでています。ベース電流低く、ダーリントンのコレクタ電流も低いためのようです。製品仕様が不明であるので、ベース電流の正否は正直分かりませんので、試行的にベース電流の制限抵抗を調整しベース電流を増やしてみると、今度は、モーター起動時にCOB側の電流が減ってしまったようで、音声の再生が途切れ途切れになっていました。かなり作りこまれた回路仕様だったと分かりました。安易に回路常数を変更するのは危険そうです。

最終的には、以下方針をご依頼者と相談し決定しました。

  1. 純正モーター仕様に近いモーターを探してみる。
  2. モーターが見つからなかった場合は、モータードライバを外付けして制御信号と同期させLEDを光らせる。

まず、適用できるモーターですが、手持ちモーターは全て全滅で現状の回路が正しいとすると、如何に低電流で高回転するモーターであったかが分かりました。ローター内のコイルの巻き数や配線径が専用に設計されていたのでしょう。

他の市販品もそうですが、実測でLEDが同期して光るためにはやはり500mAは流せないとLED光りそうにないです。高トルクや高回転系のモーターは、ピクリともしないモーターもあり、結局代替えモーターは見つかりませんでした。実用的回転は、やはりマブチ製のモーターでした。

★ひとまず、純正モーターを市販のモーターに交換してはイケません。

では、モーターは、市販のマブチ製130モーターを使用することで決定とすると、駆動できる回路検討をします。モータードライバは、実装できる回路面積や構成できる電源も考慮すると、シンプルなトランジスタでのスイッチ回路ですが、 COBのIOHの進行性の劣化不良が原因だった場合は、安易にIBを取り出すのは危険と判断しMOS FETでの実装としました。また、電源も6Vも不要なので、モーター起動時の突入電流における電圧降下も考えると、1.8V程度に降圧してドレイン電圧に供給します。※モータードライバは、設計を誤ると貫通電流などで、発火の危険性もありますので、回路はご紹介しません。

回路

ちょうど裏面のタイフーン横にスペースがありましたので、お手製のヒートシンクに横並べて結線しました。一応、SS8050での構成も下記動画通り動作検証しておりLEDの点灯確認しているのですが、前述の安全性からMOS FETでの実装としていいます。

余談ですが、当初の検討では、バイポーラトランジスタSS8050を想定してベース電流を抵抗で制限して、電源に6Vを供給して電流を診ながら調整しようとしましたら、やはりSS8050がチンチンになり、ベース電流のみで制御は難しいと判断しました。そもそもモーターの規格も3.0Vですし。また、乾電池での動作では、やはりというかやっぱりというか、モーター起動時の電圧降下が激しく突入電流と同期してCOBの音声起動にも途切れが出てしまいました。

この症状は、MOS FETでの構成でも同じく発生してしまい、特にモーターの温まりや周囲の温度で大きく変化します。十分に電流を確保できなくLEDが全く点灯しなかったり、点灯してもパターンが不安定だったりします。

ここらへんもCOB制御では、モーター起動→音声発生開始というタイムラグでも挿入して解消していると思いますが、如何せん外付け回路のみでいっぱいいっぱいなので、次回以降の宿題として検討したいと思います。

最終組み立て動作確認も済み、起動時の音切れや不安定動作が残っている旨、報告し現物で最終の出来をご確認いただきことで修理完了としました。

おもちゃの修理という範疇を大きく逸脱していますが、お困りな状況もありましたので、今回は頑張りました。

P.S どの修理案件でも同じですが、自己責任でのご使用を前提にさせていただきました。今回の修理は、発火の危険性のある回路のインプリでしたので、ご使用に際する誓約をご依頼者様と交わさせていただきました。