アンパンマン おしゃべりいっぱいことばずかんDX 腐食 断線 修理
当院でのお馴染みの患者様である、セガトイズ製 アンパンマンおしゃべりいっぱいことばずかん DXのタッチペンです。シリーズは、日本語と英語が切り替えられるDX(デラックス版)となります。
数年前までに娘様がご使用になられて、そのまま保管しており、息子様が今度は使用するということで久しぶりに動かしたそうです。最初の数か月は、使えていたのだが、ここ一か月で、電源投入時に『ア・ア・ア』と途切れ途切れに音声が流れ、調子がいいといつもの『アンパンマン おしゃべりいっぱいことばずかん』と一通り流れるが、絵本のの絵柄には一切反応しなくなったそうです。
何か、進行性の故障が起きていそうですね。それと、『ア・ア・ア…』と起動時の音声になる原因は、セガトイズのFAQに電池容量不足という案内が掲載されております。
今回もその原因を懸念して新しい乾電池での動作確認もお願いしておりますが、症状は改善しませんでした。起動時の『ア・ア・ア…』という乾電池容量不足起因の症状が出ていているのは、もしかすると乾電池の液漏れで粉が電極に付着したままの場合、運よくいくらかの抵抗成分で可動した場合は、いくら新しい乾電池にしても改善はしないと推測されます。また、他のおもちゃですが、メーカー様に故障の相談をすると、電極を綿棒で掃除してみてくださいとお願いがあります。このような原因を推測してだと思います。
到着後、動作確認をします。無事起動音は、流れますが、やはり絵本の絵柄への反応はしません。では、開封してみます。
開封から何やら嫌な状況があります。通常は、ペン先は、ツメではめられているだけなので、カパッと外せるのですが、接着剤でもない、何か粉々した付着物がカバーの密着部分に粘着しており外すのがたいへんでした。正体は、後述。
ペン先に何か液体が付いていますね。いやな予感がします。基板の裏側も確認します。
やはり、電池の負極からの液漏れがあったようです。ご依頼者様に確認したとこと、以前電池を入れっぱなしの時に液漏れをさせてしまったようだとのことでした。
とすると、アンパンマンタッチペン故障あるあるである、その逆側の基板とその部品も腐食してしまっているはずですね。
以前の修理実績と同じで液漏れにより赤外線LEDのドライバ回路が全滅しています。恐らく原因は、赤外線の照射が出ていないためでしょう。一応、赤外線LEDの電圧を計測しますが、2つある赤外線LEDのどちらも、全く上がっておりません。腐食回路を解析すると、LED駆動回路のスイッチトランジスタ用の電流制限抵抗 8.2Ωのチップ部品のパット腐食でGNDへの経路が断線しております。そのため、赤外線LEDを駆動できなくなったおります。
GND側への経路は、細長い基板を横断する形で結構長く配線されているのですが、結線するスル―ホールの部分に腐食が回ってこちらも断線しております。
以前にも回路解析した際に、回路図が頭に入っていましたので、おおよその推測はつけることができました。腐食が広範囲に回っており断線が酷いです。スイッチ用のトランジスタ回りとSONIXチップへのパターンも一通り結線状態を確認し、回路図のX印箇所の断線以外は生きていました。断線箇所の再建は、チップ抵抗のパットが腐食でやられているので、リード抵抗で直性SONIXチップの足に半田付けして回路を再建します。
さて、その他の機能部分も一通り確認します。
16MHzのクリスタルも無事オシロで規定の周波数で発振していることを確認できました。また、SONIXチップとイメージセンサーモジュール間の通信もPin1~Pin 4までの通信波形を確認し通信はできていることを確認しました。波形は、こちらを参照。
絵柄への反応は先の断線で変化はないので、前述の抵抗部分の回路再建でいけそうです。
ここで、衝撃的な光景を目にしました。
ペン先のイメージセンサーのモジュールですが、通常はハウジングのため接着固定されていますが、カパッと外れていました。開封時にペン先に何やら液漏れのような現象を見たのは、負極からの液漏れした液体が、ペン先部分にも及んだのかもしれません。はたまた、接着固定なので、絵本へのタッチする振動で外れていたのかもしれません。基板中央部にイメージセンサーのチップが見えます。
私事で恐縮なのですが、SONYにて長らくイメージセンサーの開発に従事しておりましたので、改めてイメージセンサーのチップを見返し懐かしんでおります。
イメージセンサーとSONIXチップ間の通信が生きていそうなので、外れたカバーは、慎重に接着固定しておきます。もちろんですが、外れたままにしておおくと、カバー側のレンズとセンサーとのピントがズレてしまい画像の認識ができませんので注意です。
さて、赤外線LEDの照射回路の再建に着手します。チップ抵抗のランドが腐食で使えないため、SONIXチップのQFPの足に直に1/8の小さな抵抗の足を曲げ調整して半田付けします。
かなり心労する作業でした。間違って隣の足に付けてしまったり、基板取り付け穴との干渉や本体カバーとの干渉も逐次確認しながらの作業です。本当、ヘロヘロになる作業です。
GNDは、イメージセンサーの足にGNDがあったので、そこで迂回配線しました。
最後に、カプトンテープを回路側と電池ボックスの負極に貼り動作確認をします。
良好そうですね。では、この状態で筐体に組み込みます最終動作確認をします。
こちらも良好ですね。
腐食の浸食は、今後も進行し続けますので、後々新たな不具合が出ると予想されます。乾電池の液漏れによる腐食は元には戻せませんので、保管時の乾電池抜きは徹底しなければなりませんね。
絵本にバッチリ反応して、息子が大喜びして使っております!
息子には、落としたり投げたり強く叩いたりしないように…と注意しましたが、3歳なのでキチンと守れるとは思えませんが、せっかく直ったのだから、出来るだけ長く使ってもらいたいです(^^)
我が家のアンパンマンタッチペンがかなり修理困難だったことを痛感いたしました。
そんな修理を引き受けて下さり、また、直して下さったことに本当に感謝しております❗
アンパンマンタッチペンは故障も多く、メーカーもおもちゃの病院でもお手上げのところがあると聞いていたので、半分諦めていました。
そんな時に瀧下様のHP実績をみて、お願いすることを決めました。
瀧下様に修理をお願いして本当に良かったです(^-^)
ありがとうございました。
~ご依頼様のご感想より~