アンパンマン おしゃべりいっぱいことばずかん SuperDX 赤外線LED交換 修理
電源を入れると、本体正面のLEDは点灯するが、起動音声も絵本の絵柄への反応もしないとのことでご依頼がありました。
届いて直ぐ起動確認をしたところ、起動音声の『アンパンマン おしゃべりせいかつずかん スーパーデラックス』と戸田さんのセリフが流れます。
おや!?起動音はなるぞ?では、絵柄への反応はというと、全くの無反応でした。
では開封します。
SuerDX版のネジは、▲の特殊ネジが使用されていますので、専用のビットでネジを回しますが、ここで思わぬ事態に遭遇します。ネジ穴に入りません。というか、フィットしないのです。
1.8mmの▲ビットですが、ネジの穴が製造誤差なのか、製造が適当なのか奥まで挿せません。そのため、ネジを回す際に滑ります。
一応、押し付けながらならネジの開封はできましたが、絞めることは不可能でした。これ以下のサイズのビットは、ネットでもみつからず入手できそうにないので、仕方なくY型のビット使用しました。
さて、内部を拝見します。
SuperDXの新型らしく、ペン先は、イメージセンサーとが処理ICがモジュール化されており、基板とモジュールは4軸のフラットケーブルで接続されております。画像認識のICも旧SONIX社製からヌヴォトン製(旧パナ)になっております。
パナさんも半導体事業を分社化し、私も転職前だったので自分自身は経験しておりませんが、モトローラ時代にもそのような分社化の波が起きておりました。東芝さんもFlashメモリの分社化などもあり、80年代の半導体の勢いも衰退し時代の波なのでしょうかね。
こちらの情報から画像認識のSoCは、ARMのCortex-M0コア 49MHzで動作しSPI. UARTなどのペリフェラルのI/Fを備えておりますね。
『N569SAK2 Cortex®-M049 MHz 64KB Flash 128Mbit 2.4~5.5 16,000 6 KB 18 SPI, UART 8 – DPWMDAC √ – 3-ch Voice8-ch MIDI LQFP48』
M0の開発経験は、SONYで経験しておりましたので、急に親近感が湧いてきました。もちろんですが、市販の汎用SoCではないので、データシートは社外秘だろうから入手できないでしょう。
さて、気になるのは、フラットケーブルの断線ですが、ハンディテスターのピーピーチェッカーで調べ断線はありませんでした。ちょうどよい機会だったんで、フラットケーブルの信号を調べてみます。
フラットケーブルのVDDとGNDが両端になっております。前述の画像向かって左端がVDDで右端が、GNDです。残る2線を調べてみます。
オシロの1番プローブはデータIOで2番プローブがクロックとすると、クロックは、約25kHzで立下りエッジでキャプチャするとすると、0b101010110となります。MSBが先かLSBが先かはわかりませんが。。。
この波形は、ペン先を外した状態で計測しているので、電源投入初期のハンドシェイク時の波形で、IDかなにかの読み取りに成功したら、画像認識の波形になると予想されます。
というのも、当初ペン先のモジュールが付いた状態で計測するとアナログ波形が観測され、電源投入時から観測してもアナログ波形に矩形波が重畳していたので、真偽の程は不明。
50Hzの波なのですが、ペン先を絵柄に近づけると振幅が大きくなります。恐らくですが、以下のようなフローじゃないかと思われます。
- 電源を入れる。各所起動。
- SoCとペン先のモジュールIC間が通信し認証を確立させる。この認証が成功しないと絵柄の読み取りはしない。ペン先故障時のような事態を想定。アナログ波形に矩形波が重畳して送信。前述の2線の矩形波は、ペン先を外した状態。
- 一旦スリープモードに入り、絵柄へのタッチまで待つ。その間は、ペン先からは、アナログの波形が出ており振幅の増減を待つ。この間は、赤外線LEDはOFF。前述のアナログ波形がこれ。
- 振幅が大きくなったら、絵柄へのタッチがあったとして、赤外線LEDを照射コマンドを送出し絵柄を読み取り絵柄のIDを返送する。
- 読み取った絵柄のIDから発声音を再生する。※画像取得忘れ。
ただ、この症状は、赤外線LEDが故障している状況で観測できた波形なので、本当に正しいのかは不明なので、次回、正常稼働中にちゃんと波形を取っておこうと思います。一旦製品の通信仕様の解析はここまでにして、故障の箇所を探します。旧来製品と違い、基板用にクリスタルもなく、基板上の液漏れ腐食などもありませんでした。
フラットケーブルの断線は、確認済みなので次にペン先を調べます。赤外線LEDを調べたいのですが、先のフローにより電圧は絵柄に近づけた際の一瞬でハンディテスターのレベルでは、一瞬1.5V近辺まであがったら直ぐ下がってしまいます。赤外線LEDの照射と絵柄の認識は、一瞬なのでしょう。ということで、スマホのカメラで直に点灯を確認しましたが、やはり一瞬も点灯しておりませんでした。目視でも確認は難しいのかもしれません。外して確認します。
新型のタッチペンのペン先は、カバーが外れにくいです。小さいマイナスドライバー2本で片方のツメに差し込んだまま、もう片方をこじってスライドさせあけます。
SuperDXの赤外線LEDは、他のドクター様の記事から850nmと分かっておりましたので、1.5V, 20mAで検査します。取り外した2本の赤外線LEDは、どちらも故障して点灯しませんでした。
因みに、正常であればこの程度に点灯します。これで、赤外線LEDの故障と判明しましたので、赤外線LEDを交換して再度動作を確認します。
良好ですね。でここで大きな問題に直面します。
先の交換した赤外線LEDがカバーに入りません。LEDの半田付け後に判明したので、ショックが大きいです。 ̄▽ ̄;
ことばずかんのペン先をあけた経験があれば、ご存知かと思いますが、旧来のカバーは全体を覆いかぶせるドームのようなカバーなのですが、新型のカバーは、テーパーが掛かったようなより部品にフィットするようになっております。赤外線LEDも3mmの筐体がちょうどすっぽりジャストフィットするようになっております。
手持ち交換した赤外線LEDは、3mmのサイズではありますが、よく見るとリード線とモールド下部の境界に盛り上がりのツメがありここが障害になりカバーに入りません。仕方ないので、ルーターで削ることにしました。
本来であれば、削っても正常に点灯することを確認できた赤外線LEDと交換すべきところですが、既に半田付けしてしまっているので、今回はつけたまま削ります。
最後に結構なトラップがありましたが、無事最後の動作確認までできました。
3mmの赤外線LEDで下部の突起の無い部品を見つけることができなったので、今後の修理は事前に削ったものを用意して対応したいと思います。