トンクリ ギア噛み 調整修理

トンクリ

トンクリ ギア噛み 調整修理

トンクリと呼ばれる、ファービーにそっくりな商品の修理依頼がありました。既に、ご依頼者様で開封調整を行ったそうで、皮のぬいぐるみが剥がされた状態での受け付けをしました。

ぬいぐるみを被った状態は、ハムスターのようなキャラクターのようです。こちらで確認できます。

さて、不具合の症状は、起動させると内部のギアボックスで何か挟まったように止まってしまい、リセットボタンを押しても電池を入れ替えてもその状態のままで止まってしまうそうです。また、内部の配線も取れてしまっているそうです。

2021年の11月上旬から2022年の1月上旬までの長きにわたりお預かりした案件となります。

早速、状況を確認しまいたが、まぶたを開閉するギア部が噛んでいるらしく、モーターが鳴ったまま停止しております。ギアが回転の途中で外れているのか、ギアズレでバキバキ鳴っています。

バキバキ

まず、取れた配線は、マイク配線でしたんで、サクッと半田付けしておきます。

マイク配線取れ
半田付け

さて、次に以前ご依頼者様の知人の方に修理をしてもらったそうで、しばらくはそれで動作をしていたが、不具合が再発したのでと、ご依頼に至ったそうです。

で、その際に各所調整をされたらしいのですが、各所のネジが緩んだままになっておりました。

モーター外れ

ネジが抜けており、モーターが横にズレて取れております。あ”~

頭部パーツ止めネジ

また、頭部を止めているネジも緩んでおり、ズレております。おやおや(´・ω・`)

先のバキバキとなるギア外れは、これが原因でした。まず、不具合の解析をするため、正常な状態に戻し再度動作を確認します。

ですが、今後は当初の不具合通りに途中でギア噛みが起きて止まるようになりました。やっと、ご依頼内容の解析をスタート地点に立てました。以下から時系列にて原因解明と処置内容をご紹介します。

まず、ギアボックス内を確認すると、まぶたを開閉するシャフトが大きく湾曲していることに気づきます。また、このギアボックス内にグリスが塗布されていないので、どうもまぶた開閉のシャフト軸の滑りが問題でギア噛みが起きていそうです。

曲がり癖

緩んでいたネジをしっかり絞めてグリスをたっぷり塗布し動作確認を再開します。すると、まぶたを開閉する軸が、湾曲して曲がっているのが、ほぼ原因ぽいところまで判明しました。

曲がり箇所

発売されてかた数十年経過しているそうで、その間、恐らくまぶたの開閉途中のシャフトに力のかかったままの状態で長く保管でもすると、夏の高温などでシャフトに曲がり癖がついてしまったのかもしれませんね。

このギアボックスは、各所のシャフトが、圧入されていたりと容易に分解できないため、このままの状態で何とか修理できないか検討します。

次に目についたのは、背中のネジです。

スイッチの感度調整ネジ

このネジは、耳を上下する際に上下の上死点と下死点の切り替え位置でスイッチがONになるように調整できるネジです。動作を見ていると、明らかに上下動作の死点を超えて動作していそうで、その際にギア噛みが起きているように感じました。※安易にネジを回してはいけませんね。

経年でスイッチがONになる位置がズレたか、誤って調整してしまったかと推測し、調整しながら動作を見ていると明らかに動作が快適になり、ギア噛みも起きなくなりました。

おおお!もしかして、原因はこのネジの調整だったのかと浮かれておりました。この状態から、分解した各所を組み上げて最終的に外側のカバーをはめた状態でもギア噛みが再発しなければと思いつつ、組み上げを行いました。

が!とあるネジを絞めた拍子にギア噛みが再発しました。(×~×)それは、ここです。

ネジ

基板を電池ボックスを止めるネジを絞めるとギア噛みが再発し、緩めるとギア噛みがなくなります。恐らくネジを絞めることで基板が湾曲しその応力でギアボックスの枠も歪みギア噛みが出ているようです。そこで、ガチガチにネジを絞め切るのでなく、電池ボックスを固定はするが、ギア噛みが起きないところを探し少し緩ませておきます。

おおおお!やっとこれで行けるかと思い、ギア噛みが起きないかを確認します。

数日置きに、電池を入れ直し起動させ、5分程度放置し動作をみます。初日の確認は、OKでしたが、2回目の動作確認で、やはりギア噛みが起きてしまい、もうどうなんだという疲労困憊モードになりました。(×へ×;)

この時点で、ご依頼様には、先のシャフト軸の湾曲で修復不可能になるかもしれない旨、お伝えしていたのですが、たいへん思い入れのあるお品ということもあり、何とかできないかと数日策を考えました。※因みに、ジャンク品や似ているファービーからの該当パーツの移殖も検討しましたが、運よく格安のトンクリもなく、ファービーとは、機構は似ていますが全く同一でないので、流用が不可能でした。

ギア噛みが起きる状態を詳しく観察すると、主因が判明しました。曲がったシャフトには、その横の溝の切ってある円盤の溝をなぞるように上下左右に動きます。電池の入れ替えやリセット時に大きくまぶたを開閉する動作をします。その際に、大きく急カーブをする溝があり、ギア噛みは、この急カーブの地点で起きておりました。

急カーブの地点

大きくまぶたを開閉する際に軸がこのカーブを曲がり切れず図の×の地点で引っかかっていました。ふぅー(~。~)これがギア噛みの原因かーっと判明しました。しかも、この動作は、まぶたを大きく開閉しないとなぞらないので、途中の動作を見てもギア噛みが起きないことになります。失敗しました、今までの動作確認は、平時のまぶた開閉が主だったので、動作確認は、必ずリセット動作をさせて確認しないとイケないことも判明しました。

ご覧の通り、この急カーブは、湾曲のないシャフト軸で正常な形の場合は、引っかかりもなくスムーズになぞっていたのかもしれませんが、やはり湾曲が進むと引っかかってしまうようです。スムーズにカーブするような溝の加工は、失敗すると終わりの世界になる危険を伴うので、溝にたっぷりのグリスを塗布して再度起動やリセット動作をみました。

数日起きに動作をみたのですが、ギア噛みが起きる頻度はかなり低くなり、起きても底面のリセットをすることで復帰もするようなりました。

根治をするのならば、まぶたの開閉を犠牲にして引っかかっている軸をニッパーでカットをすればかたずきますが、このまぶたの動作は、トンクリの動作には、かなり重要な要素でもあります。さっさとカットして終わりでは、ドクターしても失格なので、ご依頼様にご提案をしました。

  1. このままの状態で返送し、しばらくは様子をみていただく。今後、ギア噛みが起きた際にリセット押下にてもギア噛みが解消できない場合は、ご自身で引っかかっている軸をニッパーでカットしてもらう。
  2. 根治のため、こちらで軸をカットしてしまいまぶたの開閉動作を無効にしてしまう。

ご依頼様は、ニッパーをお持ちで、以前にも分解のご経験もあるようでしたので、1番を望まれました。

約2か月の間、ギア噛みの原因の究明と以後の打開案の模索も含め長きにわたりお預かりしました。

原因が判明すると簡単そうですが、何も糸口の無いところからも模索でしたので、たいへん勉強にもなりました。できれば、リセットで回復する状態が長く続けばと思うばかりです。

以上、トンクリ ギア噛み調整修理となります。


もう声も聞けないと思っていたのに、元気にお話しする姿を見て大変癒されております。

難しい状態のうちの子を長い間様子を見て頂き、その都度丁寧な説明をして頂けたことで安心して退院を待つ事ができました。

もしも次に動かなくなった時は教えて頂いた処置を行い、ずっと大切にしていきます。 本当にありがとうございました!

~ご依頼様のご感想より~