くすぐりエルモ 液漏れ腐食 ピニオンギア割れ 修理

くすぐりエルモ

くすぐりエルモ 液漏れ腐食 ピニオンギア割れ 修理

当医院のYouTubeチャンネルを見た方からのご依頼でした。YouTubeチャンネルは、こちら

ご依頼様の近隣におもちゃ病院が無いとのことで、お困りのところのご依頼でした。

購入は、20年程前で、以前は声も出て少しは動いてもいたそうです。乾電池を入れたままにされており、足裏の電池ボックスに液漏れを腐食もあるそうです。

以前は、笑い声もしていたが、もう最近は、新品の電池に交換しても、うんともすんともだそうです。お孫様も修理に期待をしているそうなので、気合を入れて作業に取り掛かります。

電池ボックスの液漏れ
電池ボックスの液漏れ

液漏れの粉や腐食により接触不良であれば、まったく動かないか、動いても腐食による電圧降下で動きが緩慢になるなどあります。

どちらにしても、故障診断のためには、この電池ボックスの液漏れは、最初に綺麗に除去し接触を回復させないと、故障診断ができないので、作業に取り掛かります。

液漏れの粉を除去し腐食箇所は、研摩などで接触を回復させます。該当の電極を全て取り外します。

うあ”~
液漏れの粉

だいたいは、粉除去で大方綺麗になるのですが、腐食が酷いと電極の交換が必要です。

相手は強アルカリ性でたいへん危険なので、中和するために溶液を作り洗浄します。換気と手袋とガスを吸い込まないようにマスクもして洗浄します。

洗浄

ここまでは綺麗にできましたが、腐食の酷い端子は、やはり折れておりました。負極のバネを取り外せなく研摩もできないので、新品に交換します。

程度の軽い腐食

程度の軽い腐食では、バネを外し腐食部分を研摩して取り付け抵抗を測ります。

抵抗値を測定

ちゃんと研摩し接触を確保できているか確認します。

腐食折れ

こちらの渡し用の電極は、脆くも折れてしまいました。新品の電極に交換をしますが、電池ボックス取り付け用の羽がないので、銅板で別に作成して取り付けします。

羽作成

半田付けで固定しますが、根本の半田部分で曲げると直ぐに折れてしまうので、電池ボックスに固定する方向を変えて対応します。

ぴったり

G17ボンドで固着しておきます。

電池ボックス修理

さて、ここでやっと動作確認できるようになりました。ご依頼様からは、まったく動かなくなってしまったとのことでしたが、モーターの空回りのような音はしておりますが、その他の動きは全くしません。すこし、ピクっとするぐらいで止まります。

まぁ明らかにモーターの空回りがあるので、例の白筐体のエルモによくあるモーターのピニオンギア割れを想定し開封します。※一応念のためですが、ご依頼様には開封の許可をいただき、縫い合わせも出来高でと了承をとっております。

電池ボックスの電極修理で既に白エルモだと分かっていたので、モーターのピニオンギア割れの確率が高いですね。

白エルモ
縫い糸

背中の縫い目に沿って縫い糸を切り開きます。また、首回りは、結束バンドで固定しているので、こちらもさっさとカットして開きます。因みに、頭部の綿はなくさないように袋に入れておきます。

まず、音がうんともすんともなので、頭部基板奥のスピーカーを確認します。

スピーカーが破損しており音が出ていませんでした。LCRメーターを持ち合わせていないので、DC測定にはなりますが、マルチメーターで計ってみます。

破損スピーカー
異常値

O.Lかと思いきや異常値をさしておりますね。ですが、電極の半田を溶かしなおしたら、O.Lになりました。ボイスコイルの断線かと思われます。

ですが、このスピーカーが見つかりません。50mmで16Ωのインピーダンスです。8Ω品もあるのですが、低いインピーダンスのスピーカーに交換するのは、その後の仕様における破損の懸念が残るし、そもそも国内で新規に調達すると送料も掛かってしまうので、別ルートで50mm 16Ω品を発注しました。

まず、声が出ていなかった原因は、スピーカーの故障で、手持ちの仮スピーカーを付けてみると、笑い声が復活しました。

スピーカー位置(暫定)

笑い声は、復活しましたが、その他の動きが全くしない原因をさらに追究します。

実は、このエルモですが、起動時に、右手を上下に振るのですが、この上下の運動がないと、異常を検知し、動作を止めるようになっていそうです。

実験として、笑い声が復活した際に、手で右手を強制的に上下に稼働させると、腰曲げ動作まで動き出しました。従いまして、起動時に右腕の上下運動を行い、上下運動の位置を検知できなかった場合は、その時点で停止する措置がプログラミングされているようです。

でなら、まずは、右腕の上下運動を行いモーターを確認します。幸いにモーター音はしており、ほぼ確実にギアが滑っているような音がしています。

まずは、モーターの位置から。

モーター位置
右腕

右腕用のモーターを外すには、右腕も外す必要があります。ネジを外し右腕も浮かし引っこ抜きます。ここで、注意は、右腕の回転位置を検知する金色の電極があるので、取れて紛失しないようにします。

金色の電極

この電極が、基板上のパターンをなぞり、右腕の位置を認識します。さて、これで無事にモーターまでたどり着けます。ギアボックスを開封します。

ギアがない!

ピニオンギアが割れて滑っているかとおもったら、ぱっかり割れて諸共なくなっていますね。

交換ピニオンギア

8Tのギアに交換します。ですが、先の画像のとおり、モーターの軸の長さが短く連結するギアまで軸が届いていませんね。

さて、この130型のモーターですが、一応ですね、ブラシも状態を確認しておきます。

長年正回転と逆回転を駆使していたので、ブラシの損傷も懸念されるので確認したいところです。

ブラシ確認

綺麗ですね。カーボンのブラシもまだまだ残りもあり、コミュテータも損傷や削り溝もないですね。では組みつけます。

ギア挿入

ボックスの壁への干渉なども注意し新しいピニオンギアを挿入し新しいグリスを塗布しておきます。基板の接点も接点復活剤で綺麗しておきます。

接点洗浄

ここで、再び動作を確認し、笑い声を右腕の上下運動も無事復活しました。

ついでに、尻餅をつく腰曲げの動作もするにはするのですが、負荷がかかると、モーターがうぃーんとなり空回りします。やはり、腰用のモーターのピニオンギアも割れているようです。

腰用モーター

腰用モーターを取り外すには、足の股間部分を外す必要があるのですが、後々ピニオンギアを交換する可能性もあるので、どちらの足を外そうか悩むかもしれません。

モーターのオーバホールなども必要な場合は、結局両足を外すことになります。

今回は、モーターのブラシの状態も確認したかったので、先に右足側を外しモーターを抜きます。

足方向
腰用モーター
カーボンブラシ

カーボンブラシの残量も十分でコミュテータも変な溝もできていませんね。モーターのオーバホールは不要そうです。では、ギアの状態を確認します。

ピニオンギア割れ

腰用のピニオンギアは、ぱっかり割れてはおらず、ひび割れだったので、辛うじて負荷をかけるまでは、若干動いていたのでしょう。今回も協会より手配した3Dプリンターで製作したギアに交換しますが、今回はトラブルが起きました。

右足側からモーターを外したので、元々付いていたピニオンギアの位置を同じ位置に交換用のギアを挿入できれば良いと思い込んでおりました。

ピニオンギアの位置

図の通り、モーターの端から17mmの位置で揃えて交換用ギアを挿入し今回もエポキシ接着剤で固定したのですが、この位置が狂っておりました。

そもそもですが、割れているピニオンギアの位置は、信用してなりません。この17mmで、新しいギアを位置合わせしてもギアボックスの内壁に干渉して動きません。しかもエポキシ接着剤で固定していまっているので、微調整もできないです。

実際の正常稼働できる位置は、左側の足を外しギアボックスを開封して位置合わせしないとけません。それを知らずに組み上げて動作確認をすると、尻餅をつくところで、うぃーんを空回りせず、唸り声(コイル鳴り)をあげたままになります。

位置合わせ

ギリギリ次のギアの山には噛んでいますが、出過ぎており、ギアの先端がギアボックスの内壁に干渉していますので、仕方なくルーターで先端を削りました。

幸いして、次のギアの山には噛んでくれていたので良かったです。

従って、交換用のギアの位置合わせは、ギアボックスを開けギア噛みに余裕が取れるように位置に合わせる必要があります。

※動作確認でうぃーんとなったまま、うんともすんともだった時は、変な汗がドバっとでました。x_x;

ここまでで、一先ず一連の動作をみます。縫い合わせは、安全ピンで止めてあります。

頭部の重心位置がまずいのか、尻餅や起き上がりで変に失敗するところがありますが、ひとまず、この時点での動作は、以上で完了とし、発注のスピーカーを待ちます。


約ひと月程ですが、発注のスピーカーが届き交換をしました。

左:発注スピーカー、右:故障スピーカー

Φ=50mmでインピーダンスが、16Ωとなると、そう簡単には入手できません。早速、届いたスピーカーをサクッと交換してしまいます。

交換スピーカー

あとは、粛々と組み上げて、開いた縫い目を縫い合わせます。

首の結束バンド
縫い合わせ

エルモの縫い合わせも複数台経験すると、コツも分かり、なかなか上手にできるようになりました。

縫い合わせ完了

さて、最終の動作確認ですが、前述の頭の重心の件が、やはり顕著に出ておりました。

モーター駆動のおもちゃですので、アルカリ乾電池で動作を推奨します。また、尻餅を付くので衝撃を抑えるために低反発マットレスを敷いて動作を確認しました。

その1.アルカリ乾電池と低反発床マットでの動作

アルカリ乾電池と低反発床マットでの動作

全てにおいて、動作がおかしいです。アルカリ乾電池の電流容量のおかげか、機敏にモーターが回っているのか、尻餅を付いた後、そのまま座って居て欲しいのに、元に戻ってしまいます。(T_T)

なので、本来の動作と異なり内蔵の姿勢センサーでの制御ができなくなっております。

以前、この手電動のぬいぐるみを修理した経験があったのですが、重心の位置は、個体固有の定数のような物で、容易に調整できるものではありません。

今回のエルモに至っては、重心を調整するにしても、追加で重りを後頭部に入れるか、現在頭内部に詰めてある綿を減らすかなどです。

そこで、使用条件をいろいろ変えてみました。

その2.アルカリ乾電池と絨毯床での動作

マンガン乾電池と絨毯床での動作

ウレタンマットを使用しないと幾分改善されます。動き全体は、マシになりました。

その3.マンガン乾電池と絨毯床での動作

アルカリ乾電池と絨毯床での動作

ほぼ正常な動作です。マンガン乾電池のおかげでモーターの動きが緩慢にな り、その影響で勢いも弱まり正常な動きになったようです。

ご依頼者様へ、以上の動画をご確認いただいたところ、マンガン乾電池でのご使用を前提ということで、ご了承をお願いしました。以上で修理完了です。

※もしかすると、購入時から既にこのような動きだったのかもしれませんが、、、。


エルモとの再会にドキドキしながら開封させていただきました。

電池を入れて、動きも確認いたしました。

元気になって、とても嬉しいです。

半分諦めていたので、 ネットで見つけることができて本当にラッキーだったなあと思います。

本当にありがとうございました。

~ご依頼様のご感想より~