フィッシャープライズ オルゴール ティーチング クロック
1960年代の時計の読み方や時刻、時間を教える教材用のオルゴールとのことです。
仕込まれたオルゴールのメロディにあわせて、文字盤も回転するそうですが、全体的に動きが遅く、連動する開所の動きも緩慢とのことでした。
ご存知のとおり、オルゴールのムーブメントは、機械式のゼンマイで巻いて、ガバナーの回転で再生速度を抑制しつつ、櫛歯でをシリンダーのピンでつま弾く仕組みです。以前、地域のおもちゃ病院で担当したオルゴールも鳴らなくなったとのことで拝見しましたら、各所の金属製のギアの滑りが悪くなっておりオイルスプレーを吹いたら、あら不思議と元に戻ったという経験があります。
さて、今回はどのような故障でしょうか、早速拝見します。
ですが、事前にオルゴール本体の画像を拝見していたのですが、分解に苦労しそうでした。
というのも、60年代の代物で本体の各所がリベットか鋲で止めてあるのです。
困りました。故障の原因の調査には、内部を拝見したいのですが、年代物ですし、できれば大がかり切り開いては、見た目にも影響しそうです。
まずですが、裏面には、木製の板にシールで化粧がなされておりそれが鋲かリベットで止めてあります。
オルゴールのムーブメントは、この裏面の板にどうも取り付けてあるようです。
ゼンマイのツマミの近くにも2箇所の鋲がありますが、これはムーブメントを固定するリベットでした。ここに手を付けてはいけません。
綺麗に開封する作戦は、まず、鋲なのかリベットなのかを判断しないといけません。
鋲であれば、引っこ抜くことができますが、リベットの場合は、いくらこじっても抜けません。鋲の場合、引っこ抜くは引っこ抜くのですが、鋲の頭をラジオペンチなどでこじると周辺のシールが傷つくので、たまごっちのネジ外しでも経験済みの、見えている頭をルーターで削り板のパネルを外そうという作戦です。鋲でもリベットでもこれなら外せます。
ですが、思ったようには流石に行きません。ルーターで削っても、回転の反動で直ぐ直ぐズレてしまい結局は、周辺のシールも一緒削ってしまいました。( ̄▽ ̄;
仕方ないので、できるだけ損傷が少なくなるように慎重に作業します。
ですが、しかしこの削り作業、かなりしんどかったです。本体を固定しながら、ルーターの先がズレないように両手で力強く慎重に作業し結局4箇所を外すのに1時間位かかりました。
鋲の頭が取れたら、木製のパネルを剥がしますが、これもヒヤヒヤものでした。パネルは、MDFのような集成材のようで経年でかなり脆くなっています。
マイナスドライバーでこじると、その部分でバキッと割れてしまいそうです。
かなーり、慎重に開きます。
ところで、パネル裏にあったゼンマイ ツマミ周辺の鋲は、このムーブメントを固定するリベットでした。
さてさて、ムーブメントを単体で取り外せたので、動作をさせてみますが、見てからに動作が遅く、ゼンマイを巻いても何やらバネが折れそうなくらいキツキツです。
各所に金属ギヤ用の高粘度のグリーススプレーを吹いてみます。
すると、びっくりするくらい快調になりました。この”カチカチ”というタイミングが、時計の秒を刻むような働きをしているのですね。
さてさて、ムーズメントは、これでよしとしますが、本体に組み込んでも動作確認してみます。
問題なさそうですね。
次に、鋲を外した裏の木製のパネルの取り付けは、どうしょうか思案しました。
元と同じように鋲で打ち込んでもいいのですが、グリスをスプレーするだけなら、ご依頼者様でも今後メンテナンスできます。元と同じように鋲で固定してしまうと取り外しが困難になるので、今後のメンテナンスの容易性も考慮しネジ止めとさせていただきました。
M3 * 12mmのタッピングネジのなべネジがあるので、それで固定しました。周辺の削れたシールの箇所もうまく多い被せできます。
当初の鋲は、2.6mm程なので、M3のネジをねじ込むと、木製パネルの穴周辺が割れるので、あらかじめM2.8のドリルで穴をこじっておいてネジ止めしました。以上で修理完了です。
補足として、古いオルゴールのムーブメントのゼンマイは、やはり金属の劣化もあるので、ゼンマイを巻くときは、ほどほどに巻いてくださいとお伝えしました。
オルゴールが手元に戻り、動作確認させていただきました。
購入した時のようにオルゴールが滑らかに奏でられ、とても幸せな気分になりました。
受付以降、とてもスピーディーにかつ、ご丁寧に作業していただき本当に感謝いたしております。
誠にありがとうございました。
~ご依頼者様のご感想より~