ディズニークレーンゲーム スイッチ接触不良修理
今回は、外来勤務している地域のおもちゃ病院でヘルプ要請のあった案件を紹介したいと思います。
おもちゃ名は、ディズニーのクレーンゲームです。
アガツマ製のアンパンマンのクレーンゲームはお馴染みですが、同様のおもちゃがいろいろなキャラクターで販売されております。
基本構成は同じなので、一度、機構や動作仕様を理解できていれば、どんなクレーンゲームが来ても怖くないですね。
さて、故障の症状は、電源を入れた際にクレーンがホーム位置である左下端に移動しますが、移動に際しモーターの空回り音がしたまま止まないということです。
従いまして、遊ぶこともできません。
ホーム位置をクレーンが戻る仕組みを理解していれば、この原因は、端にクレーンが達したことを検知するスイッチに何らかの不具合がおきていると推測できます。
クレーンが既に左下のホーム位置に移動しているが、モーターが空回りしている原因は、クレーンが壁に接触したがそれを検知するプッシュスイッチの押されても、電極の接触不良でスイッチがONにならないか、何らかの原因はクレーンが壁に達していてもスイッチが押されていないようなケースも予想されます。
ケーブルの断線などの懸念もあります。
で、ヘルプ要請のあった前任ドクターから状況をお聞きします。
ここで、たいへん残念が事態に遭遇しました。
前任のドクターは原因が分からないので、しかたなく別の同じクレーンゲームを購入してクレーン部分を丸ごと移殖したそうです。
移殖元のクレーンゲームは正常に動作はしていたそうです。
ですが、移殖を行っても症状がまったく変わらずで自分に相談をしたという顛末でした。
┐( ̄へ ̄)┌」
次回の診察日も近いので、ここは診察方針についていいたことがありましたが、グッとこらえて引継ぎ診察することにしました。
従いまして、私が診断するおもちゃは、依頼者様の持ち物だった部分は、クレーン部以外で、クレーン部は、前任のドクターが購入したクレーンという混乱をしてしまいそうな感じです。
前任ドクターの判断で、本品を何とか修理して、その依頼者様に返却するそうですが、何か違う気がします。。。
文句ばかり言っていてもしかたないので診察を開始します。
まずは、現物を拝見する前に情報収集です。
ネットには、同じクレーンゲームの修理記事を拝見できますが、そのほとんどがクレーン移動用のピニオンギア割れでした。しかも、このおもちゃの持病のような症例でとても多くの修理記事があります。
ピニオンギアをはめ込むと分かりますが、軸が太すぎます。Φ=1.9のピニオンギアに対し軸が恐らく、Φ=2.1位ありそうです。
おおお、もう何か原因の一端が見えたような気がします。
ピニオンギアが割れてしまうとクレーンの移動時に軸が滑ってしまってクレーンが端まで正確に移動できずにスイッチを押せていないのではないかと推測できます。
ではでは分解します。
天井の蓋を外すとクレーン部が見えます。
と!ここで衝撃的な光景が目に入ります。
なんじゃこれ?
┐( ̄へ ̄)┌」
クレーンがY軸方向に移動する際に下辺に到達してことを検知するスイッチですが、止めネジは無いしクレーンの支柱とスイッチの突起の間にケーブルが挟まっているし、どうしてもうなったの?
前任のドクターは、クレーン部を丸ごと移殖したのですが、移殖の際にモーターとの半田付けもしなおしており、その際にスイッチ部も外して付け替えていたようです。
その付け替えで外したスイッチを正確に元に戻しておらず、しかも突起と支柱の間にケーブルを挟み込んでしまうという、何とも?と思えない作業です。
そもそもクレーンゲームの動作仕様をご理解できていないのですね。
本来は以下の画像のように、移動するクレーンの支柱がスイッチの突起を押しこみスイッチがOnになります。
これが、クレーンがY軸の下限の端に達したということを検知するためのスイッチとなります。
このスイッチは、押し込まれた反動でズレたり外れたりしないように本来ネジ止めされていたはずなのですが、このネジさえも付いていませんでしたので、付け忘れたネジを要求して付けておきます。
まずは、移殖に失敗した原因の一つが分かりました。
X軸方向の検知スイッチは、留めのネジは付いていませんがネジ以外のこれといった不具合はなさそうです。
この検知スイッチ2つは、動作にとても重要なので接点復活剤を吹いてコキコキしておきます。
調査を継続します。
前述のピニオンギア割れが懸念されるので、確認します。
やはり、ガッツリ割れていますね。
こっちも割れています。
X軸方向およびY軸方向どちらのピニオンギアも割れています。しかも、目視で分かるぐらいはっきり割れ目が見えるほど割れています。
移殖元のクレーンゲームは正常に動いていたとのことなので、恐らくは割れてはいるが、辛うじてトルクは残っている程度でギアは回転していたのだろうとは思います。それと、移殖元のクレーンゲームは中古品であったようです。
しかし割れているピニオンギアは、その内に完全に滑ってしまうので交換をします。
ここまでまとめます。
- 移殖元の中古のクレーンゲームは、正常に動いていたようだがピニオンギアが割れていた。
- ピニオンギアは、割れてはいたが回転のトルクが残っていたのでクレーンの動作に支障が出ていなかった。
- 移殖作業にミスがあり、スイッチの突起部の支柱の間にケーブルを挟み込んでしまいスイッチがONにならない状態だった。
ここまで調査結果から、この機種の不具合の原因は移殖作業に伴う移殖作業ミスだったようです。
挟まっていたケーブルも正常に引き回しテープ固定し、念のためスイッチに接点復活剤を吹き接点を綺麗にしておきます。
ここでスイッチの動作を確認します。
良好ですね。
では、取り付け忘れたネジを受け取りケーブルを固定し天井を取り付けて再度動作確認します。
ですが、ホーム位置に戻る際にモーターの空回りが発生します。
というか、天井の蓋の閉め方で動作が変わります。
正常に動いたり、モーターの空回りが発生したりと不安定です。
まだ、何か不具合の原因が潜んでいます。
このクレーンゲームは、クレーンが端まで到達した場合、スイッチがONになる旨は、前述の通りですが、他のクレーンゲームと違いスイッチの突起に対し点で押し込む仕様になっております。
その押し込む点というものも天井に仕込まれておりました。
天井の蓋に何やらあります。
この何やらある支柱の凸部分がスイッチの突起を押し込むようになっております。
そうです!
この天井の蓋が経年で湾曲しており接触が悪くなっております。
当初からモーターが空回りする原因がやっと判明しました。
この突起との接触を改善できなければモーターの空転は解消できません。
そこで、アルミの太目の針金を凸部の先頭に接着し凸部をかさ上げします。
針金をまずは瞬間系の接着剤で軽く固定しその周りとエポキシ接着剤で固めてしまいます。
注意点としては、この突起部分は、スイッチの突起のある先の収められている隙間にはまり込むので針金の太さには注意が必要です。
天井の蓋の突起は、前後を逆に取り付けても良いように両側に同じ突起がありますが、かさ上げは片方のみに対して施しているので、今後取り付け方向を間違えないようにマジックペンで明記しておきます。
問題ありませんね。
スイッチの感度も良好です。
引継ぎ案件でしたが、最終的な原因解明まで紆余曲折ありましたが、主因は天井カバーの突起部の湾曲でスイッチがONにできないためでした。