電動オルゴールとおはなしでんわ修理
楠原工業の電動オルゴール、いわゆる飾りを吊り下げてグルグル回るメリーとおおお!ダイヤル式電話の修理の依頼がありました。
まずは、メリー本体の修理から取り掛かります。
楠原工業 電動オルゴール
本体下部に飾りを掛けるS字フックがあり、下に引っ張るとスイッチがカチッと入り回転し始めます。止める場合は、再度下に引っ張りOFFにします。
以前、山洋音響精機製のメリーの修理経験はあるのですが、楠原工業製のメリーは初となります。
モーターが壊れているとのことでしたが、故障の原因は他にありました。
正極側は無事なので、負極側に腐食が広がっておりました。
電池ボックスの負極に酷い錆があがっています。
この負極は、ニッケルメッキ処理がされているのですが、何故か錆があがっているので、例の負極側に腐食があがりやすい要因のようですね。
腐食については、こちらのスタッフブログに記事を上げております。
腐食部は、ルーターで研磨して除去します。その他の箇所にも問題はないか確認します。
届いた際に何やら本体内部から、カラカラと音がしていたのは、この軸が外れていたせいですね。これではメリーは回転しません。
幸いにギアや軸の欠けや折れはありませんので、そのままはめ込むことで元に戻せそうですが、、、。
で、で、で、ですが何で!?このギア軸が取れてしまうのか考察しなければなりません。
でないと、また外れてしまいます。
メリーをONにするには、S字フックを下に引っ張るのですが、この引っ張る際に滑りが悪くなり軸が収まっている軸受けが多少浮いて外れてしまったようです。
外れた軸をはめ込んでみると、軸受けが少しずれており外れやすくなっておりました。
長年スイッチのON/OFFを繰り返すことで軸受け部が曲がってしまってのでしょう。軸受けの曲りを戻してはめ込んでおきます。
では、作業に入ります。
腐食の錆は、ルーターで研摩して綺麗にしておきます。
次に外れギア軸をはめ込みますが、ついでに他の箇所もまとめてオーバホールします。
モーターのブラシにも長年の稼働でグリスが焦げているだろうから洗浄してグリスを交換します。※本機は、カーボンブラシでないので、グリスを塗布しますが、カーボンブラシの場合はグリスは塗布しません。
搭載のモーターはオルゴールの筐体にカシメられているので、外す際には十分注意します。
力任せにカシメ部を抉ると折れます。
モーターのお尻の電極の負極側は、ボディGNDになって半田付けされていますので、半田吸引線で半田を吸っておきます。
さて、無事にモーターを外せたところでモーターのブラシを洗浄します。
やはり黒くなっていますね。
グリスが黒くなっていますね。ブラシ部は摩耗で削れてもおらずこのまま洗浄してよさそうですね。
コミテータも黒くなっていますね。
パーツクリーナーでグリスを洗浄して黒くなったコミテータは、サンドペーパーで軽く磨いておきます。
グリスは、タミヤ製のグリスを使います。
その他の可動部にもシリコングリスを塗布しておきます。
オルゴールの櫛歯は、ドラムを逆回転させると折れますので、くれぐれも回転方向に気を付けてください。
S字フック内のバネにもシリコンスプレーを吹いて滑りをよくしておきます。
問題なさそうですね。これでメリーの修理は完了です。
次にヨネザワのおはなしでんわに取り掛かります。
ヨネザワ おはなしでんわ①番機
ダイヤル式の電話って知らない人が多いかもしれませんよね。
固定電話を設置しない自宅も多くなり、設置してあってもプッシュ式だろうから、このダイヤルってなに!?という方も居られるでしょう。
また、電話ってアプリでという人が多いし、そもそも電話自体が無くなるかもしれないと思うと、このおもちゃって何?という時代もそう遠くないような気がします。
さて、修理に話を戻します。
この①番機は、音声再生速度が遅いという症状でした。
再生音声を聞くと何処かで耳にしたような音声です。
往年の玩具で使用されているミニレコードタイプの音源ですね。過去にもいろいろ修理した経験があります。
本体を開封します。
おお、ダイヤルを回してチャリンチャリン鳴るのは、この鐘をダイヤルに繋がっている金属のリングがぶつかるというメカニズムなのですね。可動部にグリーススプレーを吹いておきます。
次にレコード部を拝見します。
本体前面の押しボタンを押すと、この中央のボタンが押され、押すたびにレコードに収録されている、いろいろな音声を再生するというメカニズムです。
因みに、この手の音源は、再生速度を調整できるように電池ボックスの奥にスライドボタンがあります。内部に抵抗性の導線がありスライドさせて接点の位置を移動することにより、抵抗値を変化させモーターへ供給する電流を制御しております。
このスライドを最速位置にしてもなおも速度が遅い事態なので、駆動部や電気回路に問題がありそうです。
さて、分解時にも少々注意が必要です。
下部のモーターは、レコードのゴムベルトに引っかかっていますが、取り外してしまうと、はめ込むことが、非常に困難になります。
はめ込みコツを知らないと、恐らくもうはめ込むことはできなくなります。
コツは、こちらの記事で紹介しております。
モーターは、過去に分解した形状のモーターではなく、分解に際し破損のリスクも考え、接点復活スプレーを隙間からブラシ部に吹き付けておきます。また、グリーススプレーも回転軸の両側に吹いておきます。
黄色い枠部に再生終了を検知する接点があります。
レコードの針が、再生を上部から開始し溝に沿って下部に移動します。
下部に移動し再生終了すると、針のアームが接点をした方向に押し接点が離れて電源が切れるという仕組みです。
押しボタンを押すと、この下部に移動してアームを上にはね上げるので、再度接点が導通し再生を開始します。
で、この接点が導通していないとモーターに電流は流れません。金属部が剥き出しになっており、黒く変色しています。変色部をルーターで研磨します。研磨しすぎると折れてしまうので、注意です。
以上の作業で再生確認をします。
無事、復活しましてね。では、組み立てます。
本体内部のホコリや汚れも清掃しておきます。
押しボタンは、スポンジで押し戻しされます。
本体を固定する軸が折れていたり、本体の側面が割れてもいますので接着をしておきます。
最後に本体全体をアルコール拭きしておきます。
快調ですね。では、この勢いで②番機も修理してしまいましょう。
ヨネザワ おはなしでんわ②番機
②番機は、うんともすんともということだったのですが、原因の一つがすぐ見つかりました。
電池ボックスのの負極に何やら黒い物体があります。
どう見ても錆て朽ちた電極の残骸のようです。
①番機で正常な電極を知っていたので、すぐわかりました。まずは、この電極の腐食で電源の導通ができなくなっていますね。
では、他の不具合を調べます。
本体内部はとても綺麗です。では、レコード再生部を確認します。
幸い腐食は、負極のバネのみで、それ以降の回路に侵食しておりませんでした。動作確認のため、外付けで電池を接続し動作を確認しましたが、問題ありませんでした。
恐らく、早々に負極が腐食で朽ちてしまったので、その後は使用されずに保管されていたので、稼働時間も少なく状態も良かったのでしょうね。
では、負極バネの残骸を綺麗に除去し負極を交換してします。
同じバネ鋼の入手は難しいので、手持ちの電池ボックス用の負極を加工して取り付けます。
単三のプラス極とマイナス極を接続する電極が手持ちにあったので、それを負極の溝に収まるように曲げて加工します。
単二乾電池の収まりも考慮し位置決めして接着します。
接着は、乾電池の出し入れがあるので、弾性のエポキシ接着剤を使います。
電極が筐体から浮いた状態で固着するのは嫌なので、乾電池を挿入して抑えながら固まるのを待ちます。固まりましたら、配線をします。
この半田付け少々難航しました。腐食の被膜が導線の先端に付いたままだったので、念入りに研磨して金属部を剥き出しにしてから半田付けします。
では、音源単体で動作確認をします。
よさそうですね。では、本体に組み込み組み立て修理完了となります。
押しボタンの動作も良好です。おはなしでんわ②番機の修理も完了です。
今回は、いづれも思い出のお品物ということ修理のご依頼でしたが、いづれも無事修理完了できました。
この度は大変お世話になりました。
古いおもちゃばかりでさぞかし大変な作業だったと思われます。
おもちゃ一つ一つの動作確認もさせて頂きました。
綺麗に仕上げて頂きとても嬉しく、新品で購入するよりも倍も三倍も嬉しい気持ちになりました。
生き返ったおもちゃ達もきっと大喜びと感謝の思いで一杯でしょう。
ご丁寧な対応にも有難い気持ちです。
こうして蘇ったおもちゃ達を大切に使わせていただきますね^ – ^
本当に瀧下様には感謝のお気持ち満杯です。
そして代々受け継がれてきた、わたし、娘、孫の世代まで楽しめるおもちゃに対してなお愛しさが感じられより愛着も湧きました。
また今後も機会やご縁があればどうか宜しくお願い致します。
心からありがとうございました。
~依頼者様のご感想より~