いきなりの衝撃的な画像となりましたが、ウッディの首が取れてしまったそうです。
ご自身で接着されたそうですが、やはり取れてしまったとのこと。
また、背中の紐を引っ張っても発声せず、これもご自身で修理に挑戦したそうですが断念されたところで依頼がありました。
当時のメルマガ登録から既に半年以上経過しており、かなりお待たせしておりました。
早速診断しましょう。
アセトンでもみもみしたのですが、綿生地は柔らかくできましたが、接着剤が残ってしまいました。
白く粉々していますが、これは瞬間接着剤でいわゆるシアノアクリレート系の接着を使用したで、余分に付けすぎた接着剤が蒸発して空気中の水分と反応したためですね。
これって、補修が大変です。
ご覧のドクター様におかれては大丈夫と思いますが、接着する時に瞬間接着剤を使用する方がほとんどです。
なぜ、瞬間接着剤を使用するのかは不明なのですが、何かを接着する場合は、
- どのような素材同士をくっつけたいのか?
- どのようにくっつけたいのか?
- 接着後の強度の持続性は十分か?
- 接着が難しいようであれば強行せず他の固定方法はないか?
をはっきりさせることが重要です。とりあえず、瞬間接着剤でくっつけようとすると、思わぬ失敗になります。
ソフビの裂けた面同士をくっつけたかったのだろうけど、それはそもそも玩具を遊ぶという前提では強度的に不可能です。
接着面積が小さいため強度が足りません。
今回のウッディは、ちょうど首の内部に樹脂製の軸があるので、ソフビを軸側にくっつける方が自然です。
ですが、相手がソフビなので弾性が必要です。
今回は、赤ちゃんシリーズの骨折のようにワイヤーで固定し弾性のエポキシ接着剤で内部を固定することにします。
当初は、シリコンシーラントで充当しくっつけようかとも思ったのですが、ワイヤーで固定し内部に充当する術がなかったので、弾性のエポキシ接着剤をあらかじめ塗布しワイヤーを締め上げ固定することにしました。
首の補修方針は決定しました。
次に本体側を拝見します。
まず、電池ボックスの蓋ネジが異常に噛み合っています。
恐らく無理にねじ込んだようです。ネジ側の山が潰れてナットと噛み合いません。
もうこうなるとネジを交換する以外にありません。
しかも、ナット側が収まるスペースもネジが噛んだまま無理に回してしまったようで、こちあも削れてガバガバです。ナットは、接着剤で固定しネジが締まるようにします。
また右肩のネジも締め過ぎで溝が削れてしまっております。
削れた溝奥にネジ込めるようにM2.6 * 10mmの長めのネジで絞めます。
まぁまぁいろいろと破損があります。
やっとここで本体を分解でき診断します。
電池ボックスの電極もヒューズも問題ありません。
では、ボビンスイッチを見てみると原因がすぐ分かりました。
あるはずの部品が無くなっています。
んんん?
何かないぞ!
電極が接触できずスイッチがONしません。
当医院は、過去に修理したウッディ画像があるので、それで確認します。
過去修理時の画像で確認すると、電極をボビン側に押し付ける金属製のバネとそのバネを抑える樹脂製のワッシャーがありませんね。
そういえば、依頼者様はご自身で修理し断念されたとのことなので、恐らくその時に弾け飛んだかもしれません。
早速、部品が残っていないか依頼者様に確認します。
紛失して無いそうです。チーン_❘ ̄|o
おおお、最重要部品なので、部品がない場合は修理がグッと難しくなります。
どうしょうか悩みます。
どうしょう…
どうしょう…
どうしょう…
で、あれば作ってしまいましょう。
ただ、全く同じ部品は揃わないので、スイッチの回路を考察し手持ちの部品で構築するようにします。
ウッディの発声スイッチは、ボビンで巻いていた紐が緩むと電極が浮き上がります。同時にボビンが回転することによって浮いた電極と基板側の電極が接触し導通することでONになります。
ただ、ボビンの軸が電極の片側なので樹脂製のワッシャー使用されております。
手持ちにM2用の金属ワッシャーがあります。
ボビンの軸はΦ=2mmなので、樹脂製のワッシャーの代わりになりますね。ただ、金属製なので、回路的に金属バネを接触していると短絡ショートの懸念があります。紐を引っ張り切らないうちに発声してしまいます。
ただ、M2のワッシャー以外の手段がないので、バネを電極と絶縁しないとイケません。
そこで、M3の樹脂ワッシャーも噛ませて絶縁処理をします。
金属製のバネは、ノック式ボールペンの芯を交換した際に余っていたバネになります。
バネも長く径も小さいので実物に合わせてサイズを拡張したりカットしたりします。
M3用の樹脂ワッシャーも電極の軸に合うようにΦ=4mmに穴を拡張します。
これでやっと材料がそろいました。組み立ててみます。
綺麗に収まるようにM2ワッシャー側のバネをすぼめておきます。
電極の接触の具合もやボビンの電極の浮き加減も動作を挿せながら微調整します。
誤作動もなく、全く遜色なく動作できるようになりました。
では、次に首の接合をします。
まず、瞬間接着剤で白濁して部分をルーターで綺麗に研摩して接着剤の付きをよくします。
先に修理完了した本体側を洋服に通しておいて軸を出しておきます。
ワイヤーを横に通せるようにピンバイスで穴を水平に開けようと思ったのですが、スカーフの上からワイヤーが見えるのはイヤなので、スカーフに隠れるような位置に横穴をあけておきます。
画像には残していませんが、この接合部にしこたま弾性のエポキシ接着剤を塗りたくっておきます。
ワイヤーを引っ張り固定した後、ウッディを直立させ先に塗っておいた接着剤が重力で下に沈殿で接合部を貼り合わせてくれるという寸法です。
ワイヤーは、0.8mmのステンレス製のワイヤーで固定後は、ラジオペンチで結わえてこれもエポキシ接着剤で固定しておきます。
固着待ちの間はまっすぐになるように座ってもらいます。
無事固着もでき接合部はスカーフで隠しておきます。
これで首取れも無事補修できました。
当たり前ですが、固定するのがやっとなので回転なぞはできません。
残りの作業をします。
紐と輪っかは、もやい結びで絞めておきます。仕上げに瞬間接着剤で結んだ箇所を固定します。
銃をしまうポッケの端が裂けていますので、これもワイヤーと通して弾性のエポキシ接着剤で固定します。
これでやっと一連の修理作業が完了しました。
お顔の汚れも綺麗にしました。
いろいろと破損箇所も多く、いろいろ悩むところもありましたが、無事おおよそご希望の要件は達成できたのかと思います。
とても丁寧に直していただき、ありがとうございました。
まさか本当にあそこまで綺麗に修理してもらえるとは思わず、しました。
息子もきれいに直っていてとても喜んでいました。
本当にありがとうございました
~依頼者様のご感想より~