ドリームトイパッドプラス 乾電池容量コンパレータ回路故障 修理不可

タカラトミー製のドリームトイパッドプラスというタブレット商品の修理の依頼がありました。

新品の乾電池を入れて起動しても容量が低下しているから交換してねという表示が出て起動できないそうです。

地域のおもちゃ病院でも修理ができなかったようなで、当医院に依頼がありました。

乾電池の容量を起動の頭でチェックし容量が低い場合は、乾電池の交換を促すという機能です。

依頼者は、乾電池で動作させていたということでした。

当該商品は、専用のACアダプターも使用できます。

乾電池は、1.5V * 4本 = 6.0Vとなります。

一方、専用のACアダプターは、5.0Vの仕様となっております。

いづれの給電経路であっても、電源回路のレギュレーターで、IC用電源の3.3Vに降圧されております。

ではということで、ACアダプターで起動させるとどうなるか確認します。

まずは、分解し基板と液晶とスピーカーのみにします。

とりあえず、念のためクリスタルは正常に発振していることは確認できました。

本商品も同様の商品と同じ6MHzのクリスタルで動いています。

乾電池側からの6.0V給電では、同じく容量不足表示が出ます。

ACアダプターからの5.0V給電でも同じように容量不足表示が出ます。

ホホー。┐( ̄へ ̄)┌

給電されているのが、乾電池なのかACアダプターなのかまではチェックしておらず、単に電位のみをチェックしていそうですね。

ある閾値を下回るとアラート表示をして電源を落とすというアルゴリズムのようです。

乾電池の場合は、遊んでいると次第に容量は低下していくけど、ACアダプターは、アダプターの故障でもない限りは電位は低下しないから、低下していた場合は、乾電池の容量不足としているようです。

電源回路を回路図に起こすとACアダプター側が優先でいづれの経路でも3.3レギュレーターを通して減圧されます。

一方、今回の乾電池の容量不足に起因する、容量低下をチェックする回路は、どちらの給電経路であっても同じ回路に入力されておりました。

主電源から、液晶用の電源やIC側の3.3Vは、正常に給電されているので、システムとしては正常なのだが、主電源のコンパレータ回路が故障しているので、アラートを出して電源を落としていると思われます。

で、そのコンパレータ回路を探しました。

基板上の制御ICが内蔵されているCOBに横に抵抗分圧されている回路を見つけました。

主電源が直で入力されており、分圧された中点の電圧が、COB内部に配られております。

ほぼ間違いなく、主電源のコンパレータへ電位を印加する回路のようです。

このコンパレータで電位をチェックしています。

乾電池であった場合とACアダプターであった場合で、印加電位と抵抗分圧の電位を確認します。

と、おやおやー!?

中点のはずが、大きく下回っておりますね。

ちょっとざっくりですが、ACアダプターでの起動以上の電池を同定すると、5.0Vの半分の約2.5Vが閾値としてもどちらも下回っているので、アラート表示が出ていそうです。

前述の回路図と計測された電位から、不良モードはどのようになっているのか推測します。

抵抗分圧の抵抗値は、いづれも177kΩ程でした。

中点の電位が落ち込んでいるので、COB内部に何かリークがあり、中点が低下したと思われます。

計算してみると、COB内部に186.67kΩ程度の抵抗成分があり、その影響で2分割の抵抗分圧が、1/3まで低下しております。

自分は、この商品ICの設計者ではありませんが、コンパレータの不良でリークがあるというのは珍しくはありません。

古くは、ラダー抵抗式のADなどでも何らかの不良モードでリークが起き変換できなくなっていたりも予想できます。不良モードとして有力なのは、IOのプルダウン側の抵抗が、常時有効になっているのかもしれません。

いづれもしてもCOB内の不良なので、もうお手上げ状態です。

┐( ̄へ ̄)┌

であるならば、もう一歩突っ込んだ検証をしてみました。

リーク分の抵抗値が、分圧の抵抗値に近いのであれば、R19の基板上の抵抗を取り払ってみると、いくらか中点に近づきコンパレータ回路自体が活きていれば、もしかするとアラート表示されずに起動できるかもしれないと浮かびました。

抵抗ちっちぇー!

拡大鏡と極細ピンセットでやっとつまめるレベルです。

早速外して起動テストをしてみました。

が!

ざんねーん。_| ̄|o

リーク分が無くなり完全にプルアップ状態になりました。

中点の電池は、5.0Vです。

リークがあろうかと思いきやコンパレーターの入力はプルアップする事態になりました。

ですが、依然として乾電池の容量不足のままです。

この結果から、内部のIOリークではなく、コンパレータ回路が故障しており機能していないようです。スタック故障のように常時コンパレータ閾値を超えることができないような故障モードです。

まぁ、いづれにしてもこの事態を打開できる策はありませんんで、依頼者の方に報告をし修理不可能という結論になりました。