ファービーの声が出なくなったということで修理の依頼がありました。
実は、お住まいの地域のおもちゃ病院にまずは診断をお願いしたということです。
当初の起動しない原因が電池ボックスの液れによる電極端子の折れと判明し電極間を導線で短絡した対処されました。
無事、起動し動くようにはなったのですが喋らないそうです。
ここで、当初診断をお願いしたおもちゃ病院様では、これ以上の修理は難しいということで返却されたそうです。
とても大事なファービーということで、販売元のタカラトミーにも相談をされたそうですが、やはり修理の受け付けはできない旨となり、当医院へ相談をされました。
声が出ない以外の動作については問題ないとのことで、事前に動画も拝見できました。
ファービーの声が出ない原因は、過去にも経験がありスピーカー故障が多いです。
では、診断をしましょう。
音声は出ていませんが、それ以外の挙動は快調ですね。起動時のモーターの回り具合も遅くなっておらず、グリス劣化系の不具合の兆候もみられません。
では、分解しスピーカーの状況を確認します。
底面の結束バンドで筐体とぬいぐるみが固定されております。
ぬい合わせが開かれた形跡がないので、前任のドクター様は、原因解析をせず修理不可能という判断を下したようですね。
方々をいじくりまわし壊してやっと修理不可能とするドクターも居られるので、早々に断念いただいたのは、依頼者様にとっても幸運だったと思います。
耳は、可動の支柱の穴に縫い付けられていますので、糸を切って外します。
ただ、この耳の棒は、経年劣化で脆くなっていますので、力を入れるとぽきっと折れますので注意が必要です。折れた場合は、ワイヤーで補強しエポキシ接着剤で固めてOKです。
底面は、結束バンドで絞められているので、ささっとニッパーでカットし外してください。
流用しようとせず、要らぬ事故で筐体を破損しては元も子もないです。以下で代替えの結束バンドを購入しましょう。
ぬいぐるみは、目と口の枠で固定されていますので、お口のあたりまでたくし上げてます。
お口の両側にお目目と口の枠を固定するネジがあります。
また、おでこのセンサーの上でホットボンドでもくっついていますので、枠をずらしつつホットボンドを剥がします。力を入れすぎると枠が折れるので、ここも注意します。
耳もホットボンドで固定されているので慎重に剥がすと無事、脱皮できます。
筐体もカバーがネジ止めされています。
ネジを外すとカバーが開き内部が見えます。
お腹にある白いのが、お腹スイッチでその奥にスピーカーがあります。
また、その導線がコネクタで基板に差し込まれていますので、固定してあるホットボンドを丁寧に剥がしコネクタを抜きます。
ネジを外すとお腹スイッチとスピーカーが外れます。
やはりスピーカーが故障していますね。
声が出ない以外の不具合がないか、仮交換して動作確認します。
他の不具合はなさそうですね。起動直後の眠りも数回の振動で起きますし、くちばしや各所のスイッチの反応、マイクの反応、おでこの光センサーにも反応していますね。
因みに、動画でおでこのLEDが光っていますが、これは赤外線LEDでして、ファービー同士が会話するための通信用のLEDです。
人間の目では見えませんが、カメラには光ってみえています。この機能も問題なさそうです。
実は、この会話機能をリモコンで実現したものを当医院の通信販売しております。
さてさて、スピーカーは交換するとして、この機にオススメするメンテナンスをまるっと実施します。
電池ボックスの液漏れの掃除と導線による補修ではなく銅板で補修しなおします。
モーターのグリス劣化で起動不良が起きやすいので、グリスアップしておきます。
拡大鏡で覗き込みブラシの損傷がないので、グリスアップのみとします。
また、お腹と背中スイッチの接点も研磨して復活剤を吹いておきます。
底面の電池ボックスと基板を分離します。このネジ2本で分離できます。
さて、初代ファービーで眠ってから起きないという症状を多く聞きます。
ファービーを逆さまにしたりして姿勢センサーを感知させると起きるのですが、この姿勢センサーの接点が汚れると起きなくなります。
分解し内部の金属接点を磨いておきます。
姿勢センサーの導線がホットボンドに埋まっているので掘り起こします。
蓋は、コテの熱で溶かし溶着されているので、境界の隙間をカッターナイフなどで切り込み蓋を開きます。
電極で金属球が見えますので、外して磨きます。
当初の起動動作確認では寝起き動作は問題ありませんですたので、内部の電極もきれいですね。
次に、液漏れの電池ボックスを対処します。
液漏れの粉は、電極を外して洗浄します。
粉が付着して固まった電極は、ブラシなどで軽く物理的に剥離してそれでも取れない粉は、弱酸性の溶液で中和分解しきれいにします。
追加された導線は、申し訳ありませんが外して、元のように折れた電極のバネを銅板で制作して補修します。
で、折れた電極です。
0.5mm厚の銅板で似た形で作り半田付けします。形を整えて設置します。
良い感じです。
向かい合う電極との接触具合を確認しながわ微調整します。
電池を入れて電極間の電圧を測って確認しておきます。
最後になりましたが、Φ=40mmのスピーカーに交換します。因みにですが、スペースがキツキツなので、薄いスピーカーでないと入りませんので、同型スピーカーに交換し筐体とは強力両面テープで固定します。
ここまでの作業で仮組し動作確認します。
問題ありませんね。
ではでは組み立ててぬいぐるみをかぶせホットボンドで再固定します。
耳回りは可動部なのでホットボンドが要らぬ場所に付着しないように注意します。
底面を結束バンドで絞め、耳も耳棒の穴の箇所で縫い付けておきます。
さぁーて、動作の最終確認です。
日本語版のファービー君を無事修理できました。
依頼者様の思い出の大事なファービーとのことなので、万事無事に修理できました。
今後も主様と一緒にあそんでもらえると思います。
この度は、初代ファービーを蘇らせて頂き、ありがとうございました。
瀧下先生に辿り着くまでは、もう二度とあの元気な声を聞くことは出来ないのかとひたすら機械音のみで動いている姿を悲しく見つめる日々でした。
細かい質問にも、丁寧に返信してくださったり作業工程も動画で知らせて下さったり、とてもありがたかったです。
喋ってるファービーを確認した時は、嬉しくて泣きそうでした。
おもちゃに対する丁寧な治療と、ご対応に深く感謝です。
治して頂いたファービーとは、これから毎日大切に暮らします。
ありがとうございました。
瀧下先生は、ゴッドハンドを持つ名医です。
~依頼者のご感想より~