特救指令ソルブレイン パイルトルネード修理

特救指令ソルブレインというヒーローが、悪と戦うため(!?)の武器であろう、『パイルトルネード』の修理依頼がありました。

銃の形をしており、引き金でいろいろがアクション動作をします。

今回の依頼は、引き金を引くONにしても、銃口がピストン運動をしないということです。

過去にも数回修理の経験がありますが、いづれもギアボックス内ギア割れが起き噛み合わせ位置がズレたため空転していました。また、ギアを駆動するモーターのグリスも劣化で導通不良を起こしていたというのもあります。

では、まずは状態確認です。

状態確認

依頼時の問い合わせでは、ピストン運動をしないということでした。

ですが、到着してすぐの動作確認では、ピストン運動をしだしたりします。

ですが、しばらく稼働させるとギアズレのようなノイズが出てピストン運動がうんともすんともになります。

恐らくですが、後述するモーターのグリス劣化で導通不良が起きていて、モーターが動かずうんともすんともであった。

パトライトは光っていたとのことなので、恐らくはモーターの不具合が起きていた依頼があったようです。

ですが、こちらで動作確認をすると『なんと!』動き始めました。

これにも理由があります。

依頼者様は、使っていた乾電池を同封されませんでした。

上記の動画は、当医院の乾電池を使用したのですが、グリス劣化のモーターにはショック療法が効く場合があります。

恐らく依頼者様が動作させた時は、マンガン乾電池で容量が少なめだったかと思います。

当医院のほぼ新品のアルカリ乾電池で起動した際に一時的に過電流が流れ不導通だった劣化グリスにも一時的に大きな電流が流れグリスの抵抗成分から熱が発生し劣化グリスが焦げ除去され導通が回復したようです。因みに、この仮説は目に見えるレベルではないです。

ただ、いづれにしても稼働後にギアズレが起きているので、どちらにしても修理が必要です。

まぁ、依頼者様のお手元で仮に動作していたとしても同じようにギアズレは早かれ遅かれ起きるでしょうね。

では、分解し本体内部を診断します。

本体を分解するには2か所の化粧シールの対応が必要です。

その1.上部に何かアタッチメントを装着するであろう、カパカパする扉があります。その付け根の化粧シールの下にネジが2か所ありますので、化粧シールを温めながら剥がします。

糊が残っていますが、ダイソーのシール剥がしで糊を除去します。

その2.その下の化粧シール

その下にも化粧シールがあります。黄色のラインで切り込みを入れます。

剥がしていいのですが、切り込みの方が失敗のリスクがなく切り込みも目立たないのでおすすめです。

ここまでやってやっと分解できます。

ただし、ネジ多数です。

おっと、ここで電池ボックスの負極に液漏れの腐食を発見します。

負極で奥まった電池ボックスなので分解なしに目視できないのですが、錆で一部朽ち落ちていますね。

研磨して整えておきます。

130型のモーターで駆動されていますね。

分解し後でオーバーホール可能かどうか確認します。

問題もピストン運動をするモジュール部分です。

問題のギアはこの中に仕込まれています。

画像のように開いてください。

逆に開くとギアがバラバラをばらけてしまいます。

中央のギアが問題のギアです。

中央のギアがトルクギアになっていて無理な力がかかるとバネが縮み空転して力を逃がすという構造です。

このギアは、四角い軸に圧入されているのですが、樹脂の劣化で割れると軸を滑りズレます。

このズレが大きくなると小さな力でも容易にトルクが逃がされ前述の動画にあったガガガと異音を発する事態になり空転します。

指で押しても動いてしまうぐらい締まりが弱くなっています。

2か所で割れが生じていますね。

対処としては、完全に割れてはいないのでアルコールで脱脂をして正常な位置でシアノアクリレート系のサラサラ接着剤で固定します。

ただ固定するだけでは、ピストン運動の衝撃でまたすぐズレますので、さらにズレ予防をします。

アルミ針金で軸回りを巻き巻きしてエポキシ接着剤で固めてしまいます。

こうすれば、完全に割れでもしない限りギアの稼働はできますね。

ですが、残念ながらさらに他の不具合もありました。

激しいピストン運動をするので、該当ギア以外のギアにも破損がでることは容易に予想できます。

今回は、端のギアにも割れが生じていました。

これも完全に割れているのではないので、接着剤で固定はしておきますが、補修には3Dプリンターで新たにギアを作成する必要があります。

依頼者様へ状況を説明し今後の使用についてはできるだけ衝撃を避けていただきたい旨お願いしました。

今後の他の方からの依頼でギア割れ破損まで達した故障の場合は、ギア設計の必要がありそうです。所属のおもちゃ病院協会でもアンパンマンクレーンゲームのギア作成例もありますので、その際はCADデータを設計し制作をお願いしようと思います。

さて、修理に話を戻します。

こんな感じに装着することになります。

では次にモーターをオーバーホールします。

やはりグリスが黒変していますね。

グリスを除去してブラシとコミテータを確認します。

コミテータは、摩耗筋がありますが軽くサンドペーパーで磨くときれいになりました。

ですが、ブラシ側には摩耗で穴が空き始めています。

依頼者様と相談をした結果、モーターは新品に交換することになりました。

導線の色と取り付け位置は本体側の導線の色と逆になりますので、注意してください。

さぁ、くみ上げて動作確認をします。

剥がした化粧シールもきれいに糊を除去し薄手の両面テープで貼り付けます。

動作確認

引き金、周辺の導線噛みやパトライトのギアの噛み合あせなどやや難航しますが、動作は問題ありませんね。

今後は、大事に保管をされるということなので、無事修理もできて何よりです。


問題なく可動しております、この度は治療をしていただき本当にありがとうございました。

~依頼者のご感想より~