地域のおもちゃ病院での診察案件の紹介です。
おしえてトーマスという押しボタンとスピーカーで構成された商品です。
電源用のLEDの類もないので、スピーカーから音が出ていなければ動作しているのかどうか分からないという状況です。
まず、限られた時間内で修理可否の判断をするため、電池ボックスをまず確認します。
液漏れで導通不良が出ていましたので、粉の除去とブラシで軽くアルコールでゴシゴシしておきます。
この時点で起動できればと思ったのですが、依然うんともすんともです。
次に分解して基板端で電圧が上がっているかを確認します。
依頼者のお子様が、しこたまシールを貼られておられたので、ネジの場所探しに苦労しました。
電池ボックスの電極にて正常に電圧が上がっていることと、その導線がつながっている基板端でも正常に電圧が上がっていることが確認できました。
電源は、ON/OFFボタンで制御されているので、電池を入れた時点で既にICは起動しスリープ状態になります。
ON/OFFのボタンにて処理が進行するかスリープするかというシステム制御となります。
液漏れの電極を綺麗にしておきます。導線も錆びてしまっていますので交換します。
分解には、蝶番のネジも外さないといけません。バネで蝶番の摩擦を増してあるので、かなりきつかったです。
で!すぐスピーカーの故障が判明しました。
コーンが浮き上がっておりチェッカーでも反応がありません。
音が出ていなかった原因はこれですね。
コーンが浮き上がっているので、印加電圧が大きくコーンがめくれ飛び出した状態のまま長期間保管していたようです。因みに、コーンを戻すと音が鳴りだします。
ささっと、スピーカーを交換します。
電源ONで起動してくれればと思っていたのですが、まだうんともすんともです。(´・_・`)
では、次に基板を確認します。
COB内のICでシステム制御されており、発振回路用の4MHzのクリスタルと外付けコンデンサーがあります。帰還抵抗と制限抵抗はCOB内のようです。
早速、オシロで発振を確認しても印加電圧に張り付いたままです。
おおお、発振回路にも問題ありですね。
4MHzのクリスタルとコンデンサーしかないので、恐らく発振回路が発振できず起動しないので、スリープにも遷移していなかったようです。
ですが、ちょうど4MHzのクリスタルの持ち合わせがなかったので、仕方なく4MHzの外部クロックをマイコンで生成し印加します。
あくまでも、4MHzのクリスタルの在庫補充されるまでの間のつなぎです。
電源ONのメンブレン配線を確認し端子を探します。
この外部クロックでの印加状態で暫定的に電源ONしてみます。
導線で端子を短絡すると、『いっしょに遊ぼう!』という発声が聞こえます。
無事にアンパンマンの起動音声が流れました。
スピーカーの駆動回路も発振回路以外の基板で動作しました。
電子回路側は修理はなんとかできそうですね。
さて、起動できるようになったので、メンブレンのボタンシートを取り付けて今度は電源ONボタンで起動できるか確認します。
ですが、起動はあまり期待はしていませんでした。
というのも、既に目視でわかるレベルで導電塗料の配線に劣化があります。
目視でも分かるレベルです。
稼働時の疲労で断線はしておりませんでした。
というのも、基板に接する配線端で抵抗値を計測します。ボタンの接点間で数MΩから数kΩをバラバラに抵抗値を指します。
しかも、それぞれの端子で抵抗値がバラバラです。
IC側のでのボタンの押下を認識するには、おそらく端子間の短絡を検出と思われますが、高抵抗の場合は認識できないようです。
目視で分かる以外の箇所にもおそらく劣化して配線部分が多岐にわたっているようです。
1mm以下の断線レベルでしたら、導電塗料などの補修材で補修しますが、このような長い配線でかつ、どこかにあるであろう箇所も分からないとなると修理は難しくなります。
案の定、メンブレンの配線も取り付けてもうんともすんともです。
一応、目で見える配線の表面はアルコールや接点復活剤での拭き上げはしていますが、依然抵抗値が高いままです。
導電塗料での電子の流れには詳しくはないのですが、配線内部の導電部が目で見えない箇所、塗料の内部などで劣化していそうです。
残念ですが、今回はメンブレン配線の修理不可能という判断となりました。