メダルでバトル!!恐竜図鑑パソコンΩ 短絡故障コンデンサー修理

初めての診察商品になります。

同様な商品に『すみっコぐらしパソコン』やメダル版でない『恐竜図鑑パソコン』がありますが、メダルでバトルができるバージョンは初となります。

8枚の恐竜の描かれたメダルがあり、それを、妖怪ウォッチのようにマウスに挿入するという商品です。メダルは、本体上面にはめ込み収納できます。

すみっコぐらしパソコンのマウスで着せ替えのようになっています。

症状としては、数か月使わずに、その後電源を入れたところ、一瞬画面が付いて消えたきりで電源が入らなくなったそうです。

以前、すみっコぐらしパソコンの診断でLCDドライバーがチンチンになっていたことがありました。こちらの記事です。

その時は、返却要請のため時間切れで診断途中で返却してしまったのですが、画面が一瞬付いて消えたということなので、同じような故障症状なのかもしれませんね。

では診断を開始しましょう。

他の同様な商品と同じく電源系とキーボードは、本体底面に収められております。

主回路と液晶は本体上面に収められております。

まず、電池ボックスを確認します。

致命傷ではありませんが、液漏れ痕があるので綺麗にしておきます。

あと、保安部品としてポリスイッチが電池ボックスの渡りにあります。

復帰型のポリスイッチですが、導通も問題ありません。

ところで、ご覧のドクターの皆さん、この保安部品のヒューズが、なぜここにあるのか、説明できますか?

手持ちヒューズがないからと言って故障したヒューズを外し導線で短絡するという、正気の沙汰ではない記事をインターネットで拝見しますが、絶対にだめですよ!

ヒューズが無くたってとか、いちいち細かいことをとか言う、とんでもないことをいう方がおられますが、前述のヒューズがなぜ電池ボックスの渡りに仕込まれているのかも当然そのような方では説明できないと思います。他のヒューズが仕込まれている商品のいづれでも、同じ電池ボックスの渡りに仕込まれていいますよ!

ドクターの皆さんはちゃんと考えてくださいね。

話しを修理に戻します。

電源からチェックします。

本商品は、電源ボタンの押下で起動するのですが、商品の回路仕様としては電池を挿入したところで制御は開始され、スリープ状態で待機しています。電源ボタンの押下でスリープ解除され起動するという流れです。

もちろんですが、ポリスイッチの劣化での抵抗分をもったりとか、液漏れの粉で電圧降下が起きたとかは、事前にさっさともう確認済みです。

電池ボックスの単三乾電池4本ですが、電池ボックスの両端で1.2V~1.5V程しか上がっていません。

あららら~。

どこかでリークしまくっていますね。きっと、どこかの部品がチンチンになっていそうです。

確認のため電池ボックスの導線を外し両端計測すると無事6.0Vを指します。

恐らく起動不良の主因によって、このリークが生じ給電不良を起こし制御IC類への給電ができなくなっていると推測されます。

では、底面にある電源基板を確認します。

電池ボックスとACアダプターの給電排他処理が、P-ch MOSFET 3415で制御されています。

ACアダプター側が優先で、ACアダプターから給電されるとP-chのMOSFETがOFFになり電池ボックス側のDrainからSouceへの給電が遮断されます。

当初、このP-ch MOSが故障して内部短絡でDrainからGate側へリークがあるのかと思いACアダプターで給電し、再度確認したのですが状態変わらずでした。もちろんですが、チンチンにはなってはおりません。

給電の電位は、470uFのパソコンが直ぐ横にあるのでそこで電位を確認できます。

因みに、基板は多層貫通基板で設計されており、特に電源層は内層になっておりますので基板上で解析することがとても困難です。とういうかできません。

念のためP-ch MOSFETを外し部品チェッカーでチェックします。

データシートも比較しVtも問題ありませんでした。ということで、電源基板は一旦白ということで、液晶側の主基板側を確認します。

ここ以降は、電源回路は白として電源は、ACアダプターから給電しながらで故障解析を進めます。

他のシリーズと同じく、液晶周辺に化粧シールが貼られており、固定ネジはその裏に隠れて仕込まれております。

暖めてゆっくり剥がしネジを外します。

化粧シールは、すみっコぐらしパソコンと同じシールで剥がすとシワシワになります。

めくり癖が付くので養生テープで養生しておきます。

いつもの光景が見えます。

やはり同じような構成で設計されているようですね。

マウスケーブルと電源とキーボードの導線およびLCDの40pinのコネクタがあります。

解析のため主基板と電源基板を取り外しリーク原因を探ります。

ACアダプターから給電し基板を眺めます。

依然と470uFの電解コンには、1.5V程度しか供給されておりません。

基板を眺め調べていると、チンチンになっている部品が見つかりました。

というのも、火傷する程ではなく、ほんのりと熱くなっているというレベルです。

その1.微盟電子 SOT23 V2UE

シルク IC103のSOT23のICが暖かくなっています。実は、この裏面の素子も暖かくなっています。

刻印マークのV2UEで検索してヒットせず、横にあるベンダーのトレードマークを見た時、『このマークどこかでみたことあるぞ!』と記憶の片隅にありました。

レギュレータでお馴染みの微盟電子です。

ですが、如何せんV2UEで探すことができないのですが、GND端子の位置からほぼ電圧のレギュレータと推測できます。

SOT23の1pinが、GNDで2pinが、OUT端子で、3pinがIN端子ですね。

電圧を実測してもそもそもリークで電圧が落ち込んでいるので、IN=1.1V程度でOUTもそのまま1.1V程度にしかありません。

で、V2UEを取り外しリークが止まり470uFの電解コンデンサーの電位が6.0V程までに回復するか確認します。

ざんねーん!

リークのまま電位は回復しません。

しかも、まだ基板が暖かいです。

( ,,`・ω・´)ンンン?

IC103のV2UEが犯人かと誤認逮捕したようです。

基板も指で摘まみ確認すると、なんと!

ちょうど裏面のQ101のSOT23が熱いではないですか!

J3が熱くなって基板を伝い裏面のV2UEが熱いと誤認していたようです。

その2.SOT23 J3 S9013

Q101シルクのJ3刻印 S9013 NPNトランジスタが熱くなっています。

さっそくJ3のトランジスタも外してチンチンが沈静化するか確認します。

まずは、取り外したS9013は壊れていて欲しいのですが、チェッカーで確認します。

問題ありませんでした。( ̄▽ ̄;

犯人と思っていたのに、ざんねーん!

もちろん落ち込んでいる主電源の電位も回復していませーん。

おやおや、これは迷宮のアンドローラ状態です。

チンチンになっている犯人を外したけど電位は回復せず、もちろんリークも止まりません。

ということは、このJ3のチンチンは、他にあるリーク要因によって副産物的にチンチン化したのかもしれません。

電源の電位が落ちるリーク要素は考えれば数知れない数あります。

IC部品でいえば電源GNDの短絡ショートからトランジスタでも異常Vtでじゃんじゃん電流が流れたりといろいろあります。

また電子回路を考えてみても、先の電源補償用の電解コンデンサーやノイズ対策のパスコンやインダクタもあります。

んー、悩みます。

また、最初にもどって基板を眺めます。

困ったときは、これに限ります。

指で他にチンチンになっている部品はないか確認すると!

あっちー!

今度は指で触れないほどチンチンになっている部品がすぐ分かります。

そうです。

先のV2UEやJ3は副産物的にリーク元が原因で熱くなっていたのですが、その部品が無くなったので、主原因であるリークが顕著になり、主犯格の部品がものすごくチンチン化しています。

その3.電源補償用チップコンデンサー

C104のチップコンデンサーがものすごく熱いです。もちろんですが、触れることすらできません。※火傷注意です。

片方がGNDでもう片方が電源であることはVIAの数と打ち方で直ぐ分かります。

特に電源の島には、VIAが6箇所打ってあるので、インピーダンスを落とすためと推測されます。横のC105は容量の違うチップコンデンサーですね。電流もそれ相応に流れる前提で基板設計されていますね。

因みに、自分は一応プロとしてプリント基板の設計経験があるので、このような判断ができます。

チップ部品のサイズは、1608です。※因みに、シルクのC***なので、コンデンサーですね。

早速このチップコンデンサーを外しますが、電源側の熱容量が大きく半田を溶かしてもチップコンデンサーが取れません。かなりランドに熱が放熱されているようです。サーマル接続ではなくベタでランドが島に乗っかっています。

仕方ないので、半ば強引に外します。

うううう、、、。

電源側のランドごと剥がしてしまいました。

ですが、剥がれたのは銅層の上に付いたランドメッキで、その下に銅の島が露出していますので、再度半田を盛れば問題なしです。

さて、ここまでで電位が回復するか確認します。

おおお!やったー!

電位が6.0v程迄回復しています。

犯人は、このチップコンデンサーでした。

チップコンデンサーの短絡故障でリークが発生し、その副産物的にV2UEの電圧レギュラーターとJ3 S9013のNPNトランジスタも発熱していたようです。

V2UEとJ3は元に戻して一応念のため主電源の電位が回復したままか確認します。

問題ありません。もちろんですが、先のチンチン化もしていません。

さてさて、C104 1608のチップコンデンサーはどうしましょうかね。

容量が分かっていないので、手持ち1608サイズで一番大きな容量の1uFのチップコンデンサーに交換します。

サクッと仮組し起動テストしましょう。

ドキドキですね。

主電源の電位が回復しても起動しない場合もあります。

どうでしょうか?

起動確認

やったー!

問題なく起動しますね。動作も問題ありません。

チンチン容疑者、二人の誤認逮捕した時は、もうこれはダメかもしれないと思ったのですが、無事、真犯人を探し出せ修理できました。

後は、粛々と元通りになるように組み立てます。

シワシワになった化粧シールも再度、暖めながら貼りつけます。

とここで、そういればメダルの認識確認はしていなかったと気づき8枚のメダルをマウスに入れて認識確認をしました。

そうすると、1,2枚のメダルで誤認識がありましたので、マウス内の検知スイッチに接点復活剤を吹きコキコキしておきます。

5列ある真ん中のスイッチが反応していなかったのですが、コキコキで復活しました。

メダル系は、妖怪ウォッチと同じですね。

動作確認

問題ありませんね。

昨年のお問い合わせから、数か月お待ちいただく事態にもなりましたが、無事修理もでき安心です。

お子様も楽しんでもらえたらうれしいです。


早速子供が喜んで遊んでおります。

これからも大切に使わせていただきます。

丁寧かつ迅速にご対応くださり、大変感謝しております。

お忙しい中ありがとうございました。

多数のお問い合わせや修理対応で大変かと思いますが、応援しております。

ありがとうございました。

~依頼者様のご感想より~