くすぐりエルモの修理依頼がありました。
受け付けまで既に半年以上お待ちいただいておりました。
お住まいの地域のおもちゃ病院に診断をお願いし修理不可として返却されたそうです。
諦めきれずということで依頼がありましたが、受け付け、待機患者多数で通常受け付けも既に閉じておりましたので、しばらく待機の上で半年以上お待ちいただき着手できました。
なお、2024年2月現在でも通常受け付けはしておりませんので、ご注意をください。
くすぐりエルモは、筐体が2種類あり、黄色い枠の色が白色の筐体がマイナーチェンジ前の筐体です。
白筐体のエルモは、持病とも言える経年でモーターのピニオンギアが割れて滑ってしまいます。
されに、このピニオンギアも腰曲げ用のピニオンギアが特殊ギアで一旦の市場では入手できません。
以前、CADで設計し3Dプリンターで発注の見積もりを取ったのですが、1個あたり1000円程してしまう事態でした。※ほぼ送料です。
如何ともし難い事態に、所属の日本おもちゃ病院協会にて3Dプリンター仕上げのギアを入手できるようになり、今までも数々のエルモを修理してきました。
さて、今回のエルモの症状を診断しましょう。まずは動作確認です。
電池ボックスに酷い液漏れがありますね。
これもエルモで多い症状です。
でも、んんん🤔
確か修理不可で返却されたはずなのに液漏れの対処がなされていないぞ!
いい加減な診断をしたのかもしれませんぞ。。。
だめだ、こりゃ。
何も液漏れの掃除をしていません。残念なおもちゃ病院にあたってしまったのでしょうね。
残念でしかたありませんが、液漏れは固着した粉を取り除き電極の表面を綺麗にし導通と抵抗値を確認しながら作業します。
ただ、診断を先にしたいので、外部電源でひとまずは起動テストをします。
液漏れは、4本が収納できる電池ボックス側のみでしたので、そちらのみ6.0Vを給電して起動してみます。
おおお!
起動しましたが、明らかに腰曲げで腰曲げの角度を位置センサーが検知できるずにハングアップしていますね。
ピニオンギア割れの典型的な動作です。
ほぼほぼピニオンギア割れですね。
ただ、顎とお腹の起動スイッチでは起動しないことも判明していたので、それらお含めて診断を進めましょう。
まずは、以後は電池ボックスで動作確認をするので液漏れの対象しましょう。
負極のバネを外してこびり付いた粉を除去します。
腐食のためバネ抑えが折れていますので、研摩して半田付けして固定します。
ですが、半田付けによって負極バネの高さが高くなってしまい、単三乾電池の出し入れがきつくなります。
この負極のバネですが、とても応力が強力で電池ボックスが破損していたこともありますので、バネ1.5周分をカットしておきます。
このレベルの液漏れをここまで綺麗にします。
もちろんですが、作業途中でちゃんと抵抗値を計測しながら作業をします。
黒変した箇所はルーターのワイヤーブラシで研摩します。
電池ボックスに組み込み乾電池を挿入し電圧が正確に上がっているかもちゃんと確認します。
問題ありませんね。新品のアルカリ乾電池なので、多少高くは出ています。
これでやっと乾電池での動作確認ができるようになりました。
スタートラインに立った感じです。
では、エルモを開封します。
ここで何や発見です。
足裏が、本来であれば結束バンドで留めてあるのですが、黄色いナイロン製の糸で結んであります。
前任のおもちゃ病院では電池ボックスの結線は確認したのでしょうね。ただ、液漏れの対象を何かもしていないのに内部を診てもしかたないです。
背中の縫い合わせに沿って開きますが、既に開かれていたようでスルスルスルーっと開けました。
顎の起動スイッチが効かないのは断線が原因ですね。
後はササーっと分解してピニオンギアを確認します。
やはり、腰曲げ用のピニオンギアは割れて滑っておりました。
そうすると、腕振り側も恐らく割れていますね。
先の動作確認では腕振りはできていましたが、完全に滑っていなかったのかもしれません。
腕振り側のピニオンギアも割れていますね。
どちらのピニオンギアも交換してしまいます。
が!
3Dプリンター製のピニオンギアは、ジュラコン製のギアと違い弾性がありません。
軸の口径が狭いので強引に挿入すると折角のギアが割れてしまいます。
当医院では、垂直にモーターの軸を熱して圧入します。
ここで肝心ななのは垂直で挿入しないと回転ムラが生じてしまいますので、治具などを用意して圧入します。
モーターの外形の径と同じ筒を厚紙で作成して横からコテ先を軸にあてれるようにすれば大丈夫です。この原理は、アンパンマンのわくわくクレーンゲームのギアの圧入時にも使えます。
で、次に肝心なのは、ギアボックス内のクリアランスです。
圧入位置が浅いとピニオンギアがギアボックスの壁に干渉してしまいます。
位置確認のため、軸にマジックペンで目印のラインを記入しておきます。
成功するとこんな感じになります。
まだあります。
コテで熱して圧入しても緩む懸念もありますので、最後にエポキシ接着剤で根本を固定もしておきます。
電池で軽く回転させピニオンギアの回転ムラがないか確認します。
腕振り側のピニオンギアは、ジュラコン製なので、これはそのまま圧入して大丈夫です。
こちらもギアボックスの干渉位置に注意します。
ですが、上の画像からもハッキリ分かりますが、ギアの噛み合わせを面一にしてもモーターの軸が短すぎますね。ピニオンギアの半分しか刺さっておりません。
さてさて、ここまででピニオンギア割れの処置は完了となります。
次に顎のスイッチとお腹のスイッチを修理します。
オレンジ色の導線は再接続しますが、この作業中に方々の他の導線が取れてしまいます。
もうイヤになるほど取れまくります。
根気よく補修作業をしましょう。
さて、お腹の起動スイッチを調べます。
導電極の表面はサンドペーパーで磨いておきます。
ですが、まだ接触不良が解消しません。
いろいろ調べてみると基板の湾曲してしまいボタンの接点が基板のパターンに届いていません。
しかたないので、ネジ止めしてあるネジの台座を削り幾分前に基板がでるようにします。
この原因が判明するまで、とてもたいへんでした。断線もなく基板間で導通も問題ないのだが、筐体に装着すると接点が接触しません。
シリコンのボタンを直接押すと導通しますが、筐体にネジ止めすると導通しません。
よし!
作業中あちこちの導線が取れたりたいへんでしたが、やっと起動確認できるまできました。
どうでしょうか?
お腹も起動スイッチも効きましたね。
ここまで確認できればおおよそ大丈夫ですね。
外した綿を頭に入れて縫い合わせます。
問題ありませんね。
お目目の黒の一部が擦れているのでマジックペンで塗っておき修理完了です。
お孫様が大好きとのことなので、エルモを楽しい思い出を作ってください。
エルモ到着しました。
とっても元気です😄 エルモと一緒に大笑いしています。
止まってしまったエルモがいつかまた動く日がこないかと、ずっと思っていました。
ボランティア修理ということで半信半疑で依頼しましたが、受付の仕方やメールのやり取りから、本当におもちゃが好きで元通りにしたいと思ってくれる人がいるのだと感動しました。
本当にありがとうございました。
~依頼者様のご感想より~