今回は、通常受け付けていない改造案件のフォローとなります。
正常に動作をする変身ベルトを購入され、ご自身で改造を試みたが、その後動かなくなりお困りとのことです。急ぎご使用になるとのことで、急患対応しました。
まず、状況を整理します。
- 元々は正常品で動作も問題なっかた製品である。
- プロペラ背面を白で塗装しマジックで点の印を入れた。そのため、分解を行った。
- 分解作業の途中で配線が取れてしまい、どこについていたのか分からなくなってしまった。
- 可能であればLEDの装飾機能を除去したい。(オプショナル)
この変身ベルトでの依頼案件の多くは、長期期間の保管によるモーターグリスの劣化固化がほとんどでした。さて、内部を拝見します。
まず、電源の確認にて基板まで電圧が上がっていないため調査しましたら、電池ボックスの断線がありました。しかも、なぜか配線の腐食がかなりひどく再半田が不可能でした。この腐食は、導線を伝って基板直前のコネクタまで来ておりました。
さて、次に基板上を確認します。
基板上も所々断線しています。再半田で修復します。さて、目につく箇所の修復は、終わったので、動作確認をします。
電源投入後、スピーカーからの効果音は問題なく流れますが、プロペラもLEDもやはり無反応です。しかも、なんと!基板上のトランジスタが異常発熱しています。チンチンです。急ぎ電源を切り回路を調査します。
基板上の配線からチンチンになっているトランジスタの回路図を起こします。
なるほど、やはりモーターやLEDの駆動に関係するトランジスタです。TR3であるHE8051S(NPNトランジスタ)が異常発熱しています。念のため、基板から取り外し、トランジスタチェッカーで故障していないか確認しました。幸いなことにまだ故障はしておりませんでした。ここで、回路図をふと見て疑問があったのですが、NPNトランジスタのダーリントン回路と思いきや、TR3のコレクタとエミッタが逆につながっていない?でも、この回路が、仕様上の回路だし、、、!?と悩みながら他の原因も探します。
装飾のLEDが内蔵されているプロペラ内部に電源が供給されております。そちらも確認します。
プロペラ背面を白塗装する際に分解し、組み立て時に誤ってギアを逆にハメてしまったののでしょう。次にプロペラの内部回路は、この軸を外し確認します。
お祭りの屋台などでよく売っている光る扇風機でも同じ仕組みですが、回転するプロペラに電源を供給する際は、バネなどで軸とその周りに接点を二つ設けます。この仕組みを知らないと供給する電源のプラス、マイナスをそのままプーリーに挟み込んでしまいLED電源のショート招きます。もう一度書きますが、電源は、軸と回りのプーリーの2極と接続しなければなりません。
上図のLED電源がショートしてしまったらどうなるでしょう。赤線で記入しておりますが、TR3のベースからコレクタにPN接合が生まれてしまいます。発熱の原因はこれです。試しに、LED電源を外して起動すると発熱は、まったく起きなくなりましたので、これが動作不良の原因ですね。
慎重にプロペラのバネを電源端子に接触するよう組み立てます。起動プッシュボタンで、プロペラが、音楽と共に勢いよくまわりました。LED装飾も綺麗に光りました。
TR3のダーリントン回路についてですが、ベース電流さえ確保できれば、コレクタとエミッタの導通が確保できるので、動作的には動いてしまうのでしょうが、やはりダーリントン回路ではないように見えてしまいます。※私のスキルでは、ここまでしか解析できませんでした。回路設計者の意図は分かりませんので、メーカーの仕様通りのままにします。
最後に、LED装飾機能の除去についてですが、今回は断念することにしました。
人間の目の残像効果を利用した、本変身ベルトは、プロペラ内のLEDをその回転をICで制御しています。プロペラ側には、2個のLEDが付いており、回転することによって対向するフォトセンサーがその回転速度検知することができます。本品は、この回転を検知しない場合は、回転すらしない構造となっておりました。先のLED側への電源供給を切るとうんともすんともな状態からも、モーターの回転とLEDセンサーはセットなっておりますので、簡単にはLED装飾機能のみの除去はできなさそうです。
まぁ、表面実装されたLEDそのものを外してしまえばいいのですが、プロペラの構造体は、簡単には分解できず、またご依頼者様もお急ぎとのことで、LED装飾機能の除去は断念しました。
以上で急患の対応でしたが、無事元に戻せました。メデタシ、メデタシです。