くすぐり エルモ 軸可動レバー 修理
今月は、外来勤務の地域のおもちゃ病院で2体のくすぐりエルモも修理を行った。1体目は、先日の記事のこちらのエルモになります。無事、修理完了しました。
今回の記事は、2体目のエルモの修理内容のご紹介となりますが、1体目とバージョンが異なります。外見は、パイル生地のぬいぐるみに覆われておりますが、開封すると筐体の色の違いに気づきます。
1体目:白筐体・・・白エルモ
2体目:黒筐体・・・黒エルモ
白エルモは、ネットでの修理内容記事が多く、ピニオンギアの割れが原因での動作不良が不具合の多くを占めます。恐らく白エルモが、製造時期としては先のバージョンと思われます。
黒エルモは、先の白エルモの不具合の改良がなされており、ピニオンギアの割れの修理記事も検索ではヒットしないほどになっております。
さて、今回はこの黒エルモの修理内容のご紹介となります。
故障の状況は、笑い転げる際に頭をもたげる動作の際に本来は、その反動で尻餅をつくのですが、反動の勢いが低下してため、尻餅をつけずに頭をもたげたまま笑ってしまうという現象です。
実は、当初お預かりした際に、この状況をお聞きする前に動作確認をしたのですが、違った不具合も出ておりました。動きが緩慢で特に途中でモーターがウィーンと鳴り止まってしまいます。白エルモのようなギア割れと似た現象でしたので、白エルモ同様にピニオンギアの割れと推測し作業に開始しました。
白エルモ同様に背中の縫い目から開封します。すると、知らない場合は、少し驚くかもしれませんが、黒色の筐体が見えます。
本体内部を確認すると、電子基板や機構部分が見えますが、明らかに白エルモより改良がくわえられております。
- 制御基板は、青色のレジストになっており、COBは子基板構成になっております。恐らくですが、言語エリア毎に組み替えられ出荷されているのだろうと推測しました。
- モーターにノーマル/コモンモード用のノイズフィルター基板が付いています。白エルモは、ノーマルモード用のセラミックコンデンサーのみが端子間にあるだけでしたが、黒エルモは、ノーマルモード用のセラミックコンデンサーと各端子にコモンモード用のインダクターがそれぞれノイズフィルターとして取り付けてあります。EMC対策などのご経験があれば、直ぐ分かりますが、回路仕様については、村田製作所様のこちらが参考になります。
- 姿勢センサーが胴体の中心部に移動接地されております。
- あと、なぜか股関節の左足が外れませんでした。いろいろ調べて頑張ったのですが、外せませんでした。仕様なのか不明です。
さて、肝心の不具合の調査をします。まず、白エルモ同様にモーターのピニオンギアが割れていないかと確認します。
どちらのモーターもピニオンギアの割れはありませんでした。というか、ギアボックスが改良されているようで、容易にギア割れが起きづらくなっているようにも見えました。
ということで、黒エルモについては、他の要因による故障となりますので、詳しく調査します。
修理の経験があれば、分かるかもしれませんが、ぬいぐるみの皮が付いたままでは解析が困難です。そこで、両脚先の電池ボックスを取り外しぬいぐるみを完全に脱がせます。顎のボタンも取り外します。
何か、カッコイイ感じになりましたね。
稼働する右腕もぬいぐるみの皮から外さないといけません。腕は、ネジで軸に固定されておりますので、一部を切り開きネジと緩め腕を取り外します。
ここで、再度動作確認をします。やはり、お辞儀をするあたりでギア噛みのような止まる現象があります。動かしながら、各所の起動動作を目視確認すると原因が分かりました。
画像の青色のレバー状の部品が引っ掛かっており、モーターがウィーンと鳴っておりました。
このレバーは、尻餅をつく際にちょうどお尻の下にある軸の稼働を制御するレバーでした。
エルモの動作を解析すると、かならず、腕が上がっていないと、尻餅が付けない仕様となっており、腕があがっていることを検知し、尻餅動作を制御しておりました。
この可動レバーの腕の軸が、本来であれば、スムーズに上下に稼働し連動して足の稼働を制御するはずですが、プラスチックの経年の劣化のためでしょうか、微妙に湾曲したのか、どきどき滑りが悪くなり上下できなくなっておりました。画像のとおり、腕側の軸にグリスを付加しかつ足側の軸にもグリスを十分につけておきました。
無事スムーズな動きが復活しました。
白エルモ同様に開いた背中を縫いあわせて修理完了です。