スノーイング ファイバー ツリー(雪ふるクリスマスツリー)修理
修理が終わるまでの過程を改めて読み直すと、本当に作り直しに等しい大修理だったと思います。
改めてスノードームを眺めると、雪を舞い上げ、そりが動き、木の枝とツリーの先も光っていて、音楽もでているという複雑なものだったと思います。
一つ一つ、丹念にチェックして、修理いただいた事に本当に感謝いたします。
最初にメールでご相談させて頂いた時は、正直に言うと、「修理不可能」ではないかと半分諦めていましたが、思い切ってメールして本当に良かったと思います。
これから先何年もクリスマスの時期にこれを飾り、多くの子供に診てもらおうと思います。 本当にありがとうございました。
~依頼者様のご感想より~
診療医院(人向け^^;)の受け付けで毎年恒例に飾られておられたクリスマスツリーが動かなくなってしまったということで修理の相談がありました。
クリスマス直前だったのですが、仕掛りのおもちゃ修理でいつもごった返しているということもあり、直ぐ受け付けできないので、クリスマスには間に合わない旨、ご了承いただき受け付けまで待ったいただきました。
初回のお問い合わせから年を越して約2か月後のバレンタインデー後にやっとこさ受け付けできるようになりました。
このクリスマスツリーは、似た商品が多くあり『雪ふるクリスマスツリー』で検索すると似た商品にヒットできるかと思います。
以前ボランティアで勤務していた、神奈川県横浜市のおもちゃ病院で四角い外形の同じ仕様のクリスマスツリーを見たことがあります。
商品の機能としては、以下の点です。
- ACアダプター電源。
- ドーム内部に雪に模した細かい球体の粒々のスチロール製の雪があります。
- スチロール製の雪が底面からツリー先まで中央の筒の中をファンによって吹き上げられます。
- 降った雪は、ツリー周囲をサンタのソリとトナカイが回転し吸い込み口に落とす。
- ツリー先の星にLEDが仕込まれていて点灯。
- ツリーの枝先には、光ファイバーが仕込まれていて点滅。
- 動作中は、電子音のクリスマスキャロルが鳴る。
- サウンドをOFFにでき、音量もボリュームのツマミで調整可。
クリスマス向けのスヌーピーのジオラマを修理した際は、電子音を鳴らすIC子基板が故障していることがほとんどで代替えでメロディを鳴らす必要がありました。
今回のクリスマスツリーでもメロディIC子基板が故障していた場合は、どうようにかして代替え策を考えねばなりません。曲目や音色などいろいろ好みもあるかと思いますので、あらかじめ依頼者様には、代替え時に曲目、音色が違ってもよいヒアリングをしておきました。
おおお!
電子音のクリスマスキャロルの曲名が箱の側面にありました。全12曲を鳴らしていたのですね。
さて、現物の動作確認をします。ACアダプターを接続し電源スイッチをONにしますが、うんともすんともですね。
モーター音すらなっていませんでした。
では、内部を確認します。
底面は、ネジ止めではなく三ヵ所のツメで留められているので、ツメを押し込んで底面を開封できます。古い商品なのでツメを折らないように!
制御基板とスピーカー、ハロゲンランプがあります。
側面には電源スイッチと音量調整用のボリュームとACアダプターのコネクタがあります。
上面には、雪を拭き上げるファン用の大型モーターとサンタ/トナカイ回転用のモーターがあります。ツリー先のLED用の導線も2本出ています。
枝先を光らす光ファイバーを照らすハロゲンランプが切れていますね。
MR11 6V5Wなのですが、国内では同じ規格を見つけることできませんでした。
ということで、いつもところに発注して届くのを待ちます。
次々と確認しましょう。
制御基板で搭載の各機能の電源制御をします。
電源は、ACアダプター9Vを3.5V系統にレギュレートしています。
レギュレーターは、TI製(旧ナショセミ)のLM317でした。
外付けの抵抗の比でレギュレート電圧が決定されます。最大1.5Aまで供給できます。
電源管理のをまとめると以下のような内訳です。
9V:雪吹き上げファン、ハロゲンランプ
3.5V:サンタとトナカイの回転、電子音のクリスマスキャロル演奏、ツリー先のLED
供給電源と制限電圧は正常に供給されています。そこで、それぞれの機能を確認します。
診断の結果、重症度の高い順になります。
その1.モーターによるサンタのそり回転
サンタとトナカイを回転させるモーターは、ギアボックスに装着されています。モーターの筐体は、マブチの140型と同型ですが、コイルの巻き数や磁石も強力でカーボンブラシにもなっているので強力型ですね。
このモーターを外して確認しましたが、ピニオンギアが割れておりました。また、モーターのグリスが固着しておりモーター軸が回転できなくなっておりました。
汎用の入手可能なピニオンギアではないです。
どうしょうか、、、。交換できんぞ。。。
ひび割れなので、エポキシ接着剤で固着しギアボックスで暫く稼働させ、不具合発生がないか確認することにします。
このモーター内のグリスが固着していたため、過電流が起きていたと思われます。
カーボンブラシなので割れないように慎重に扱い、コミテータの黒ずみは軽く研摩して綺麗にします。
グリスも劣化していますので、お掃除して新しいシリコングリスを塗布しておきます。
では粛々と作業をします。
ギアボックス内をアルコールで綺麗に洗浄してこちらも新しいシリコングリスを塗布しておきます。
ピニオンギアは噛み合わせの位置を合わせておき接着します。
2液混合タイプの接着剤で軸とピニオンギアは、脱脂処理をしてピニオンギアの谷間に入り込まないように接着します。
接着剤が固まるように十分時間を置きギアボックスを組み立て稼働テストをします。
よさそうですね。割れた境目でかくかくするかなと思いましたが、回転もスムーズでした。
ピニオンギア割れで重症度が一番高かったですが、今々はこれで凌ぐしかありませんので、この状態が引き続き長持ちしてくれることを祈りましょう。
その2.ツリー先の星型LEDとクリスマスキャロル
クリスマスキャロルの演奏とツリー先のLEDは、同じメロディIC子基板で制御されておりました。
制御基板に子基板が付いた状態では、うんともすんともなので子基板単体で動作するかどうかを確認します。
単体で動作をさせるために電源Vccとメロディの音声出力、GNDを引き出します。
追加している抵抗は、音調を可変できるようで制御基板に6.8kΩが付いていたので、同じ6.8kΩを付けています。
子基板を単体で動作させると、極稀ですがメロディを奏でる場面がありました。
ですが、Vccにちょっと触れたタイミングや先の6.8kΩの抵抗に触れたタイミングなど、再現性のない何かしらのトリガで演奏しますが、かなり不安定です。
再現性が全くなく適当に端子に触れていると、突如一瞬メロディが鳴ったりします。
運良く撮影できました。
運よく動画を撮影できたのですが、この後に症状が悪化し、どの端子をどのように触れてもメロディは鳴らなくなってしまいました。
何とか元々のメロディIC子基板を鳴らすことができればと思ったのですが、クリスマスキャロルは、後述の代替え策で実装することにしました。
次にツリー先星のLEDを診断します。
メロディIC子基板の2番ピン(BUSY)で制御されていました。
演奏中、この端子がLowに落ち、メイン基板側のS8550のベースを引き込みLEDを駆動点灯しておりました。よくあるLEDの点灯回路です。
『雪ふるクリスマスツリー』の動画をYouTubeで確認すると、演奏されるメロディの曲調にあわせて点滅したりします。
本ツリーが元々どのような使用だったのか不明でしたので、依頼者様にもヒアリングしたのですが、故障している時期が長くご記憶にないとのことでした。
さて、どうしようかと悩みます。
演奏中、点灯したままで曲間のみ消灯させるのであれば、代替え基板のBUSY信号を使って制御すればよいです。
ですが、曲間のみ消灯ってのも味気ないです。というか、枝先の光ファイバーが点滅するので、そもそもツリー先のLEDが点滅する機能って必要?
という議論もありますね。
うーん、と悩んでいましたが、一応曲調に合わせて点滅できる策を考えてみました。
マイクからの音圧でLEDを点滅する回路があります。
マイクからの音圧変化で電圧を検知しトランジスタでLEDを駆動するやつです。
ブレイクアウト基板が市販もされております。
このブレイクアウト基板を使ってスピーカーからのメロディを拾い点滅させてみます。
いい感じですね。曲調に合わせていい感じに点滅してくれます。
ですが、このような静かな状態では大丈夫なのですが、このツリーって雪を噴き上げるファンが、『ぶおーん』って鳴り続け、サンタもトナカイもギアボックスで回っています。
そうなのです、マイクで周囲の音を拾って点滅させるということは、メロディ以外の周囲の環境音でも点滅してしまいます。
またですが、個人的には、この手のツリーは点灯したままの方が趣き良いと思います。
今回は、元々付いていたメロディIC子基板のBUSYをGNDに短絡して常時点灯させます。
※もちろんですが、メロディ子基板のBUSY信号は、基板上で電流制限抵抗に付いているので、LEDの規定電圧と電流をちゃんと考慮しないとイケません。
さてまとめると、クリスマスツリー先のLEDは、動作中常時ONとし、クリスマスキャロルの演奏は、別途演奏策を実装します。
その3.ツリー枝先の光ファイバー
既に説明していますが、ハロゲンランプが切れているので交換します。
ただ、この手のランプは、国内の通販などでは入手できないので、隣国から購入します。
今後の使用を考えると、高輝度LEDでの換装策も検討しないとイケなさそうなのですが、LEDで換装すると、LEDの照射角が狭いため以前修理した他の案件では、単純な置き換えは難しいかもしれません。数種類のLEDランプを購入してテストを重ねるというのもあろうかとは思いますが、なにせ費用がかさんでしまいます。
この光ファイバーは、その1.のサンタとトナカイの回転と連動して色フィルターも回転し枝先の光ファイバーの色も変化を楽しめます。
その4.モーターファンによる雪吹上
大型の空気吸い込み吐き出すファンが付いています。
モーターも恐らく市販品ではなさそうですね。ファンのフィンも見えます。
外部から給電してみてもうんともすんともだったのですが、徐々に電圧をあげていき、フィンを外部から突っついてみると回転しだしましたが、不安定です。
何か、ブラシに異物か劣化グリスで回転したりしなかったりです。
画像からも分かる通り、筐体は突起が熱で溶かされケースに固定されています
このファンは、分解せずにモーターを外せない構造でした。うーん、悩みます。メンテナンスのために溶かしている溶けた支柱部分を削り分解する程の優先度はあるだろうか。。。
支柱を削り分解して元に戻せなかった場合は、、、。
ということで、モーターのお尻の隙間から接点復活剤を吹いてしばらく回して稼働の改善をみます。粘度の高い金属グリスも吹きつけて暫く稼働させると、ほぼ復活しました。
※間違ってもファンのフィンに吹きつけてはなりません。ファンは、そのままスチロール製の雪にも液体がかかってしまうので、思わぬ動作不良を起こします。スチロール製の雪が粘着したり溶けたりするかもしれません。
フィンの擦れか風切り音は、現状のままで仕方なしとしました。
恐らく、この風切り音は、元々大きな音がしていたと思われます。静音化する場合は、フィンの構造的な改善が必要でしょう。
ということでここまで、それぞく機構部の修理はほぼ完了できました。
では、最後に懸案のメロディ子基板の換装について検討します。