ソニートーキングカードプレーヤーCP-1000 アジマス調整
CP-1000を使っておられたお子様が、ご結婚されるのを機にお孫様にもということで修理のご依頼がござました。
では、早速拝見しますが、原因は直ぐ分かりました。
おおお!
例のヤツだ。
こっちもたいへんだ。
ゴムベルトが溶けてしまい各所に粘着しておりました。
当医院では、この手の除去には、アルコールを使用しております。
実は、他のおもちゃ病院の修理記事で、溶けたゴムベルトの除去には、『灯油がいちばん良い』とあり、またアルコールでの除去は、作業の無駄とまで記載されておりましたので、検証をしてみました。
結論から先に申し上げると、灯油での除去は、まったくダメダメです。
先の、おもちゃ病院のドクター様は何を基準に評価されたのかまでは、記載されていなかったので以下を基準に評価結果を掲載します。作業条件は、キムワイプで溶けたゴムを綺麗にこし取り、脱脂まで行うまでとします。
- コスト
- 作業性
- 品質
コストですが、これは、灯油に分があります。今冬、令和4年は、灯油価格の上昇もありますが、1リットルあたり、120円です。無水エタノールを純水で80%に希釈しも、この値段には敵いません。消毒用のエタノールでも、約10倍はしてしまいます。ですが、灯油で除去できても、最後にアルコールで脱脂をするので、どちらにしてもアルコールは使用する羽目になります。
次に、作業性ですが、灯油での作業は、かなりキツイです。そう、匂いがです。作業中ずーっと、灯油の匂いで頭痛がしそうなくらいです。塗装用のマスクが必要になります。なら、アルコールでも同じように匂いはするよねということですが、揮発してしまいほぼ問題になりません。どーしても、アルコールの匂いがダメな場合もありますが、灯油の匂いに比べたら天と地ほどの差があります。因みに、アルコールでも、IPAなどのイソプロパノールで、洗浄した場合も匂いでめまいがします。なので、エタノールでの洗浄が一番お勧めします。それと、アルコールの場合は、最終的には揮発しますが、灯油の場合、そのまま廃棄することはできないので、残った油をウエスか古新聞にしみ込ませて廃棄をしなければなりません。この点の追加作業でもアルコールの方が優位です。先の記事では、サクッと綺麗になったとのことですが、今回のゴムでは、灯油に付け溶かしキムワイプでこしとっても、粘着が酷くなかなか取れませんでした。
最後に品質です。
最終的に灯油でも溶けたゴムは除去できます。品質的には、アルコールとそう変わらないような気がしますが、前述の匂いで作業性が著しく低下し頭痛が伴うので、手元が狂い完全に取り切れる前に妥協してしまいそうです。
という結論に至りました。コスト以外に優位な点がありませんでした。
ということで、今回もアルコールでサクッと綺麗にします。
次に、ゴムローラーですが、状態もまだ使用に耐え得るだけの弾力が残っておりましたので、交換の有無のご判断を仰いだところ交換ということになりました。
さて、この時点でゴム部品を一旦仮交換して、他に故障が無いかを確認したのですが、音が出ません。何かかなり小さいような、鳴っていないような感じです。既に薄々気が付いていたのですが、磁気ヘッドのアジマスが狂いまくっております。
目視でも分かるぐらい磁気ヘッドが斜めです。多数の同じ機種を修理し見ていると、このぐらいのズレは目視でも分かるようになりました。
お聞きしたところ、旦那様が修理に挑戦された際にアジマス調整用のネジを回してしまったとのことでした。おおお、、、そうでしたか、、、。
製品出荷の際にアジマスの調整は、メーカー側で実施し出荷されますが、長い期間ご使用になると、カードのテープ部の摩擦である程度の”あたり”が出ます。
この”あたり”は、磁気を拾うのに、最適な角度であるはずだから、大きな問題でもない限りは、調整の必要性はほぼ無いはずです。従いまして、音が鳴らないからと言って、アジマスを調整してしまうのでは危険ですね。
当医院でも調整をする場合は、ゴムローラーのゴムが溶けてヘッドに粘着し、除去のためヘッドのコアを研摩した際や、キャプスタン軸のフランジが、落下の衝撃で曲がってしまった場合など、一番良い位置で”あたり”を再現する場合に調整します。
今回は、ママ工数を掛けて調整を行いましたが、どうもアジマスの狂い以外にヘッドの劣化があるようでした。高音域に籠りが出ております。
カードを聞き比べ一番良い音で再現できるところまでの調整を行いましたが、これ以上の改善は難しいということで、ご了承をいただきました。
当医院で使用している動作確認用のカードは、新品ではないのですが、やはり新品のカードの音質はいいですね。以上で修理完了です。
カードを通して動作確認してみました。
しっかり治療をしていただいて無事に退院してきたことを嬉しく思います!
お忙しい中、本当にありがとうございました。感謝の気持ちでいっぱいです。
~ご依頼様のご感想より~