ソニートーキングカードプレーヤーCP-1200磁気ヘッド不良
今回の記事は、修理不可能であった案件を紹介いたします。
CP-1200の再生音が小さいという症状で、もちろんですが、ゴム系部品の劣化もあったのですが、磁気ヘッド不良が致命的でしたので修理不可能でした。
CP-1200の修理において再生音が小さいという故障モードは、初めてです。一番多いのは、もちろんゴム系部品の劣化でカードが正常にスライドしないですが、次に多いのが、スピーカー故障です。
スピーカーが故障した場合は、全く再生音がしませんので、スピーカーの故障ではなさそうです。CP-55では、再生音が小さいという故障モードがあり、プリアンプ前後のACカップリングコンデンサの容量抜けという原因が多いです。さて、今回のCP-1200は、どういった故障でしょうか・・・。
CP-1200は、過去の製品の不具合の教訓がいかされているのか、磁気ヘッドにカードを押しあてる機構とカードをスライドさせる機構が分離されています。他のカードプレーヤーの場合、ゴムローラーのゴムが磁気ヘッドにカードを押し付ける役割とカードをスライドさせる役割の二つを担っています。ですが、カードが挟まっていないカードを差し込む前とカードのスライドが終わった後に空回り期間、ゴムローラーが磁気ヘッドを無意味に押し付け空回りしているので、磁気ヘッドの摩耗を招いております。
多数修理を行っていると、新品時に曲線を描いてあったであろうヘッド部分がフラットに摩耗しているのを拝見します。そのような摩耗が再生品質に影響するので、CP-1200では、磁気読み取り機構をカードをスライドさせる機構を分離したのだと推測されます。
ですが、今回の故障原因は、このような故障防止策も効果がなかったという事案になります。
目視でも分かるぐらいに摩耗し削れております。後述の解析の結果、この摩耗によってカードの磁気が十分に読み取れず再生音が小さくなったと結論づけました。
以前、修理を行った同期のヘッド画像と比べてみると、歴然と摩耗が具合が違います。
実は、この結論に至るまで故障個所原因の切り分けにかなり難航しました。まずは、物理的に磁気を読み取るメカニカルな機構の不具合なのか、音声を増幅再生する電子回路系の不具合かを切り分けます。
まずは、磁気ヘッドの摩耗は気になりますが、正常に読み取れアンプの前段まで音声が来ているかを確認します。
構成としては、磁気ヘッドから拾った音声をプリンアンプ段として2SC1345 2個で構成されたダーリントン回路で増幅しボリュームを介し1701刻印のオペアンプで増幅しスピーカーを鳴らすといった回路です。それぞれの段間にカップリングコンデンサが挿入されています。
一応、音は小さいなりにボリュームの増減はするので、回路に入力された入力レベルが小さいと予想されます。この手の解析には、いつも使うのですが、クリスタルイヤホンで回路途中の信号を直に耳で確認します。
結論からいうと、オペアンプの入力以前に既にレベルが足りていません。2SC1345のダーリントン後でのレベルもほぼ無いです。そこで、段間に挿入されたACカップリングコンデンサを総とっかえしましたが、不具合は解消されず、最終的に2SC1345も取り外しチェッカーで確認しましたが、問題ありませんでした。どうも電子回路にも問題なさそうです。
そこで、磁気ヘッドのチェックに戻ります。
ヘッドが摩耗しているのなら、実はカードの磁気部分に押し当てるポイントにズレが生じているかとも推測し位置調整のアライメントを取り直してみます。
確度、押し付け強度、上下高さ位置を調整ネジで調整できます。出荷時には、位置ズレが起きないようネジ止めが各所に塗られております。ですが、どう調整してみ音量の改善には至りませんでした。
CP-1200の磁気ヘッドは、替えの部品を在庫していないため、もう打つ手がありません。カードプレーヤーの場合、替えの効かないキーパーツとして、モーター、磁気ヘッド、フライホイールなどの機構部品があります。今回の事例は、そのキーパーツの不良による修理不可能事例でした。