CP-33の修理依頼がありました。
カードを挿入しても自動で引き込み再生しないということです。
カードプレーヤー全般に共通しますが、ソニー製やDWE製、学研など、当時この点の商品を開発販売していた商品では、全てにおいてゴム部品が使用されております。
恐らく、1990年代でしょうかね。
製造から既に30年近い年月が経過しておりますので、特にゴム部品については、素材の性質から加水分解でボロボロになります。
これは、ゴムという素材を選択した時点で既に逃れることのできない持病となります。
加水分解するしないは程度の差こそあれ逃れることはできません。
ですが、CP-33については、設計思想も手伝って、溶けたゴムが他の故障を誘発します。
では診断をします。
ゴムローラーがボロボロになっていますね。
これは、素材の性質上、仕方ありません。
ですが、この加水分解したゴムローラーが磁気ヘッドに密着し磁気ヘッドにも影響します。
磁気ヘッドのコア部が接していた跡がありますね。
ご覧のとおりなのですが、溶けたゴム成分が単に粘着していれば剥がせるかもと思いますよね。
残念ですが、そうはなりません。
IPAなどで拭き取ってもヘッドのコアが破損しています。
アモルファス合金が脆くもボロボロです。
もちろんですが、このままでの状態では、磁気テープに記録された磁気をまともに読み取ることができないのでカード再生も、もちろんですができません。
本来であれば、ここで修理不可能と判断をします。
往年のテープデッキであれば、このような故障であれば音質に大きく関係しますので、まともな音質で再生できません。というか、再生自体してはいけません。記録媒体のテープを壊します。
ですが、本機種のカードプレーヤーは、主に語学勉強など向けの機種なので、オーディオ並みの音質をそこまで求める必要もないかもしれません。
そこで、当医院ではこの磁気ヘッドを研磨し何とか記録された音だけでも再生できないか挑戦します。
駆動モジュールに磁気ヘッドを再セットし、アジマスを再調整後に研磨します。
ちょうどカード上のテープと同じ当たりがでるように研磨します。
当医院では、このような対応で元々の音質にはなりませんが、音だけでも再生できるようにします。
※もちろんですが、当医院は、ただのおもちゃ病院ですので、この手のオーディオ専門の修理業者のような品質まで回復はできません。完全を期すのであれば、8トラ用の新品のモノラル磁気ヘッドをプレーヤーのモジュールに交換するのでしょうが、点付けのスポット溶接なので、一気にハードルが上がります。
さてさて、脱線しましたが、音質についてはこのように出来高で修理とさせていただきました。
その他の故障としては、電池ボックスの負極に錆が上がっておりましたので、ルーターで研磨してさび取りおきます。
ではでは、ゴム系部品を一式交換して、アジマス再調整、カード再生速度も調整し修理完了となります。
ゴムベルトも溶けかけておりのびのびです。
溶解してはおらず、後始末が楽でした。
ゴムローラーも交換します。
やはり、特に高音域において籠ったような音質の劣化が残りました。
筐体もほぼ無傷の新品の状態でしたので、また活躍できるまで修復できました。