ソニーリピートカードプレーヤーCP-7000修理
先日、修理のご依頼のあった、1台目(修理不可能)に続き、2台目の修理のご依頼です。症状は、カード再生音量が小さいとのことでした。1台目と同様であれば、ゴムローラーの摩耗で磁気ヘッドとゴムローラーとの間の隙間(専門用語でラップと呼ぶらしい。)が開きすぎてカードの磁気テープが磁気ヘッドに密着できていないかもしれません。早速再生確認をしましたが、再生音が小さいどころか、カードが滑ってスライドしません。手でスライドをサポートさせても音声は全く出ていません。
( ,,`・ω・´)ンンン?
開封して何が起きているか確認します。
再生音量が小さい原因は、直ぐ判明しました。やはり1台目同様にカードの磁気テープが磁気ヘッドに密着できておりません。というか、隙間の間隔が尋常でないレベルなので、ゴムローラーの摩耗というレベルではありません。何が起きている?
その他の状況を調べてみます。
レバー用のバネが1本増えている。。。
状況をお聞きすると、以前近隣のおもちゃ病院に修理を依頼して際の修理の形跡のようです。ですが、ネジ止めの代わりに塗料とカード挿入検知レバーのアライメントネジには緑の収縮チューブが被っており、さらに本来は無いバネが付いていたりと、いろいろと調整されたようです。ですが、このアライメントの調整と隙間には関係あるか調べてみたのですが、微調整はできますが、流石に画像のような開きは別の原因がありそうです。
とここで、しばらく眺めて独りブレストしていました。
- 磁気ヘッドモジュールのアライメントレベルではない隙間になっている。
- 隙間はゴムローラーの摩耗というレベルでもない
- モーターでの回転はできる
- 筐体の破損も各所のぐらつきもない
小一時間眺めたあたりで異変に気付きました。
この斜め角度から眺めるとフライホイール軸が、Vの字に開いているのに気づきました。軸が曲がってる?もしそうであれば、修理は不可能となります。裏面も確認します。
やはりですが、プーリーのズレています。隙間の原因はこれです。
原因は、軸受けが曲がっておりました。ですが、この曲がりは異様です。切削したアルミ部材に圧入しているので、そう簡単には曲がるはずはありません。原因は不明ですが、マイナスドライバーか何か固い異物が挟まって力ずくで引き抜くか、誤ってマイナスドライバーで抉ってしまったしか考えられません。ですが、どちらにしても元も戻さなくてなりませんが、過去の経験でペンチでうまく元に戻せるかが次にポイントでしたが、無事はめ込みでき元の水平に戻せました。
ゴムローラーは、接着が取れて空回りしていたので、ゴムベルトも曲がり癖が付いているので交換します。以上で、ゴム系部品の交換と磁気ヘッドの隙間修理を行ったところで動作確認をします。
1枚目の冒頭のノイズが酷いです。調べてみると、電源OFFからの起動で冒頭の1枚目のみ酷いノイズが現れます。2枚目以降のノイズはありません。うーん、( ´ ⌒ `)ゞ困った。。。
冒頭ノイズの現象は初めてです。ご依頼様からの熱いご要望もあり、このノイズの原因を突き止め解消できるか調査することになりました。また、独りブレストします。
- 電源OFFからの起動時のみで1枚目の冒頭のみにノイズが現れる
- 電源OFFから冒頭1枚目であっても、録音された音声であるリピート再生時には、なぜかこのノイズが無い
- 電源ONのままでは、冒頭1枚目であってもノイズは無い
- しばらく数枚再生を続けても同じようなノイズはない。
もう、原因が分からず、 _| ̄|○脳もヘトヘトになっているので、1日置いて脳をリフレッシュすることにしました。翌日再度同じ動作確認すると、なんと!症状が、もっとひどくなっていました。( ̄▽ ̄;なんてことだー。
電源OFFからの冒頭ノイズはそのままなのですが、2枚目以降にも再生中のノイズが含まれるようになっています。途方に暮れておりました。ToT
仕方ないので、そのまま再生確認を続けていると、糸口が見つかりました。次第に、2枚目以降のノイズが少なくなっていきます。おおお!何か時定数のある症状かもしれない。また、ICなどが温まったおかげで不良症状に変化が生まれたのかもしれません。
アンプなどトランジスタ回路の設計のご経験があれば熱によって半導体の挙動が変化するのはご存知かと思います、私も半導体の開発エンジニアでしたので、この点には納得し説得力もあります。では、作業確認の段取りは以下の通りとします。
- 時定数を持つ能動素子で経年劣化が疑われるノイズに関係しそうな部品を交換する。プリアンプの電解コンデンサの交換。リピート録音時にノイズが無いので、プリアンプ回路には問題ないと推測されますが、この機に劣化が懸念される電解コンデンサーを交換します。
- リピート録音時には、ノイズが含まれないので、ノイズの混入は、リピート録音ブロック以降であるので、再生系の最終ブロックであるオペアンプ回路を解析する。
- オペアンプ回りの経年劣化が疑われる部品を交換する。改善しなければ、温度変化による状況変化から最終的にオペアンプも交換する。
まず、1.の試行結果。
磁気ヘッドから伸びるケーブル先のプリアンプ回路をプリント基板上で解析しACアップリングコンデンサを突き止めます。該当の電解コンデンサーを全て交換します。また、一部カラーコード型のコンデンサーが破損し割れていましたので一緒に交換します。※手持ちは、セラミック型しかなので、同容量に交換しました。結果、念のための交換で推測通りですが、ノイズ解消されませんでした。
次に2.の試行結果の前にオペアンプ回路を下調べします。
使用されているオペアンプは、ローム社のBA526です。ネット上には、概要のデータシートは存在しますが、推奨回路等の常数も調べていたいです。運よく、BA527という後継のピン互換の推奨回路付き仕様書がありました。
手書きのメモが、プリント基板上の設計値となりますが、ほぼ推奨回路通りの構成でした。データシートを眺めていると気になる箇所を見つけました。起動時のポップノイズを抑えるための推奨値が決められております。
- C1:入力結合コンデンサー・・・推奨値は、2.2uF
- C2:帰還回路の直流カットコンデンサー・・・推奨値は、33uF
- C3:リップルフィルタ用コンデンサー・・・推奨値は、100uF
C1, C2, C3は、電源投入時の立ち上がり時間およびポップノイズとの関係があると、まさにビンゴが注記があるではないですか!(☆≧▽≦)ノヽ(○≧Д≦○)
オペアンプの周辺もこの機に全ての電解コンデンサーを交換します。ですが、残念ですがノイズは解消しません。うーん、残念。
最期に3.のオペアンプBA526を交換します。もちろんですが、BA526は、とうにディスコンしているので、当医院在庫のBA526に交換します。やっと、ここでノイズが解消されました。長かったです。データシートの等価回路から、Q1~Q4あたりのトランジスタの劣化不良なのでしょうかね。。。
以上で、無事に機構系の故障と電子回路の故障も修理できました。
無事起動時のノイズも解消できました。
新品同様で、もちろんノイズもなくリピート機能も正常でした。
1時間以上連続で使用しましたが、音量低下もなく、不具合は見られませんでした。
瀧下様のおかげで、故障していた30年前のプレーヤーを再び使うことが出来る様になり、心から感謝しております。
今回はいろいろとお世話になり、誠にありがとうございました。
~ご依頼様のご感想より~