ソニーリピートカードプレーヤー CP-7000 電子回路修理
CP-7000の機種は、原因不明の症例があったので、修理をお断りをしていたのですが、たいへんお困りとのこともあり、先の症例に関する不具合が発生しても不問でよろしいということで修理のご依頼をお受けしました。
さて、故障の症状は、電源が入らないとのことです。ですが、ソニー製のカードプレーヤーは、乾電池を入れただけとか、ACアダプターとつないだらとかでLEDが点灯し電源が入るよな製品仕様にはなっておらず、カードスリットに差し込み検知スイッチのレバーでスイッチを押して初めてモーターが回り始める仕様になっています。
なので、電源が入らないという表現というよりは、カードを差し込んでも引き込みスライド再生をしないといった方が正確です。さて、内部を拝見しましょう。
まず、到着後、乾電池での動作確認ではまったくカード検知せず動作もしないのですが、ACアダプターでは無事カードを検知しゴムローラーが駆動しました。開封すると電池ボックスの負極にかなりの腐食がありました。
実は、ご相談の時点で本体内部でカラカラと音がするとご説明もあったのですが、この電極の先の一部が錆びてもげており本体内部に転がっておりました。乾電池での動作不良は、まずこの腐食が原因の一つでした。ACアダプターでは、モーターは回転するので、その他の故障については、一先ずACアダプターで確認します。
カードを駆動するゴム系の部品も劣化が出てしますが、電子回路系の動作確認は、手でカードを押しながらで音がスピーカーから出るか確認します。
ですが、ほぼ無音に近いほど何も音が出ません。スピーカーチェッカーでもスピード自体には問題ありませんでした。うーん、何か起きています。
音声の増幅回路の解析を行う際は、クリスタルイヤホンで出力段から遡って回路の不具合箇所までたどり着くようにします。
CP-7000では、過去にも多いオペアンプまわりから攻めます。
オペアンプは、オーム社のBA526(ディスコン)というICが使われおります。OUTはもちろんですが、INにもアナログ音声が入力されていません。故障は、もっと前段のようです。
ということで、プリアンプ回路を調べてみます。
ところで、CP-7000は、他の機種と違い、TI社製の録再生LSI TMS3477ではなく、ソニー製のCXDナンバー付きのLSIが使用されております。キャッシュアウトを抑えて自社製のLSIにしたのですね。で、そのLSIより前段のプリアンプ部ですが、そもそも音声が増幅されておりません。磁気ヘッドでの音声は小さいなりに入力できているのは、クリスタルイヤホンで確認できましたが、プリアンプの回路に沿ってトランジスタを順を追って確認しても音声が確認できません。
プリンアンプに問題ありか!?
と、ここで、原因が分かりました。プリアンプのトランジスタには、NPNトランジスタが使用されておりますが、コレクタ端子の電源が上がっていません。これでは、音声は増幅できませんね。つまりプリンプに電源が供給できていなということです。回路仕様を調べてみると、プリアンプの電源は、先のBA526の9ピンにあるリプルフィルター端子から供給をされております。
実は、手持ちのBA526のデータシートは、抜粋版しかなく、この9ピンのリプルフィルター端子の役目が分からなかったのですが、内部回路でスッキリしました。
まぁ、つまり、電源のリプルを抑えた安定した電源のIC内部で生成して供給するという役目ですね。CP-7000のようなオーディオ機器用のプリアンプにはもってこいです。
さて、では9ピンにリプルフィルター後の電源が出ていないので、別回路でプリアンプの電源を供給してみることで故障の正当性を確認します。
R8抵抗のざっくりとした値を計測し3ぴんVccからジャンパー配線してみます。
BA526のIN端子に、無事プリアンプからの音声が印加されるようにはなりましたが、まだスピーカーから音声は出てきません。プリアンプの電源未印加も問題の一つではありましたが、まだ原因の追究が必要です。では、逆にOUT端子からの出力を確認すると、Vccに電源は印加されていますが、出力は出ていません。以前の修理事例と同じくこのBA526のオペアンプが故障しているのが、音声が出ていない理由と判明しました。
早速、手持ちのBA526に交換を行います。
無事再生ができるようになりましたが、電源OFFからの起動時に”ブオン”というノイズが出ています。電源OFF時から時定数を持つということは、電源系のコンデンサーも一式交換が必要のようですが、修理費用も嵩みましたので、詳しい原因解析は行わず、このままでのご使用となりました。
次にですが、カード再生中とリピート再生中のみ点灯するはずのLEDが点灯しっぱなしです。通常は、電源OFFボタンを押すと消灯するのですが、乾電池やACアダプターをつなげると直ぐ点灯してしまいます。カード再生はできているのですが、これでは電流を消費してしまうので、この原因も追究します。
パネルにあるLEDは、二つのトランジスタで駆動されております。Q208の旧三菱製 2SC2603が、直接LEDをドライブするトランジスタでその電流は、Q212の2SB739で供給されております。調べてみると、Q212の2SB739が壊れておりました。
PNP型なので、PN接合のダイオードとして見えているのかと思いますが、そもそもトランジスタではなくなっています。この2SB739は、以前の修理事例でも割れていたりするので、信頼性的に弱い部品なのかもしれませんね。早速手持ちの2SB739に交換を行い、無事再生中のみの点灯と電源OFF時の消灯を確認できました。
最後に、ゴム系部品も劣化しておりましたので、総交換を行い再生確認できました。※ただし、電源OFF時からの起動雑音は、解析見送りとなります。
今回もCP-700も電子回路系の故障でしたが、回路解析により無事原因も特定一安心です。
しっかり動くようになり感動しております。
遠い青森まで行かずとも、こんなにあっという間に治していたくことができるなんて、本当にありがとうございました❗
動かなくなってから、長い間 処分するにはもったいなくてどうしたものかと思いながらずっと保管しておりました。
この度、おもちゃ病院に相談させてもらったところ、すっかりなおしてもらうことができ、本当にうれしく思っています。
慣れないスマホでのやりとりで、ドキドキしましたが、大変わかりやすく丁寧な説明と速やかな対応を頂き、すっかり安心してお願いすることができました。
とても難しい技術のいる修理で、大変な作業だったことと思いますが、本当に感謝の気持ちで一杯です。
~ご依頼様のご感想より~