DWE 両面デジタル プレイメイト DSP起動故障 修理不可
2022年7月 追記
両面デジタル版のトークアロンカードとSDカードをお持ちの方に朗報です。
本記事のように再生機本体が修理不可能である場合、お持ちのトークアロンカードやSDカードが、使用されずそのままというのは、とても残念でしかたありません。
そこで、DWE内職用の機種を開発しました。こちらです。
プレイメイト本体が、修理不可能で代替えできる策がない場合に、とても有効です。もちろんですが、プレイメイト本体が故障していなくても購入できます。
興味のある方は、お問い合わせフォームの通信販売からお問い合わせください。
今回は、修理不可能であった案件のご紹介です。
当医院は、ソニー製のカードプレーヤーの修理を得意としておりますが、メーカー様での修理受け付けができない、ワールドファミリー社製のプレイメイトの修理を受け付けております。
ただ、保守部品も無く、修理実績も多くないので、修理ができる可能性も低くなってしまいます。特にゴム系の部品は、市販などももちろんですがされていないため、断線などの、ほんとうに簡単な故障修理に限られてしまうことになります。
アナログ版での修理実績は、いくつかあるのですが、今回はデジタル版というカードに印刷されたバーコードを本体のリーダーで読み込みSDカードに保存された音声を読み込んだバーコードに従い再生するというメカニズムです。
ご依頼者様は、ご使用の途中で突然動かなくなったとのことで、お住まい近隣のおもちゃ病院へ一先ず診察を依頼されたそうです。ですが、修理不可能とのことで、当院のご紹介があり、今回のご依頼になりました。
デジタル版のプレイメイトですが、機構系の故障でない場合は、多層基板に実装されたDSPやメモリ、LDOなどなどの電子回路の不具合になります。
設計情報も解析治具もない状況では、ほぼ修理不可能といってよいと思います。修理困難になる要因は以下の通りです。
- 基板上の回路構成がわからない(社外秘)
- 回路構成を解析しようとしても多層基板のため内層回路を調査できない(リバースエンジニアリング)
- 電源投入からLSIの起動シーケンスの仕様も不明(社外秘)
- 例え、それらの情報があったとしても解析治具や測定装置がない(解析設備)
- 故障箇所が分かっても交換部品や基板もない(入手不可)
私も、長年LSIの故障解析業務で製品の故障モードを解析することを行っておりましたが、これらの作業は、もう既におもちゃ病院で実施できる範疇を大きく逸脱しており、工数も設備投資の費用も尋常ではなくなります。
また、半導体部品も市場で容易に入手できませんし、部品が入手できてもファームウェアも不明でICEなどのデバッグ環境を構築となるともう眺めるだけで解析の限界を感じます。
本記事をご覧のおもちゃドクター様も感じられておられるかと思いますが、おもちゃ自体の差別化のため、メーカー様も高機能化するために実装されて回路も高度で複雑化しております。昨今のおもちゃに実装されているこれらの回路をみると容易に修理できない事案が多いです。
恐らく4層の貫通基板で設計されており中央にTI製のDSPが鎮座しております。このDSPが、制御を担っており周辺には、電源などのLDOやインダクタ、コンデンサーがあります。
まず、故障の症状は、カードをさし込んでもスライドされず音声も再生されない状況です。過去の修理実績にある、デジタル版のプレイメイトでは、SDカードの故障でしたが、SDカード未挿入の場合は、LEDが3回点滅するはずです。
今回の事案では、SDカード未挿入の場合でもLEDが点滅せず点灯のままでした。SDカード検知シーケンスが動いていません。
突然動かなくなったとのことなので、まず基板上のクリスタルをチェックしましたが、電源も供給されており刻印の周波数で発振しております。多ピン狭ピッチのQFPは、もうマルチメーターの先もあてることができないくらいであったり、そもそもDSPのデータシートも入手できないので、この時点で既に解析できる手がほとんどありません。
一応、電源用と思われる電解コンもチェックしましたが、問題なくここで解析を修理しました。
基板下部にICE用のコネクター端子とシルクがあるので、ここにICE用のコネクターを接続できればDSPの状態も確認できたかもしれません。
非常に残念ですが、修理不可能として返送しました。LSI制御のデジタル回路を実装した製品での修理の難しさの一例となります。