ソニーリピートカードプレーヤー CP-7000 トランジスタ ゴムベルト交換
ソニーリピートカードプレーヤー CP-7000 トランジスタ ゴムベルト交換30数年前に購入されたそうです。動かなくなってしまったとのことで修理のご依頼がありました。CP-7000は、過去に修理実績はないのですが、修理に挑みたいと思います。
CP-1100などでは、モーター音などを確認できると、ゴム系パーツの経年劣化が原因でベルトが駆動できない場合や、ゴムローラーが滑ってカードを送れない場合などがほとんどで、パーツの交換で復活できるのですが、今回のご依頼は、うんともすんともな状態です。早速、状況を確認します。
基板までの電源経路上には、電圧が上がっておりますが、カード検知のスイッチが、ONしてもモーターが駆動しません。電圧も供給されていません。
カードプレーヤー系では、新しい電子回路系の故障のようですね。ゴム系のパーツ交換もいいですが、実は、電子回路の故障解析の方が得意です。
基板上を目視確認すると、早速原因のひとつが判明しました。2SB739という旧日立、現RENESASのトランジスタが、真っ二つに割れて中のシリコンが見えています。シルクのQ212です。
回路図に起こすと2SB739は、電源制御機能を担っているので、このトランジスタが破損すると電源が、基板に供給されません。不具合の主因を発見しました。
ですが、該当の2SB739を交換しても電源はまだ供給できていません。再度基板を確認するとお隣のQ210のトランジスタも割れているではありませんか!
さて、無事二つのトランジスタを交換したところ、電源が基板上に供給されスピーカーからのポップ音の反応が復活しました。ですが、肝心のモーターが回転してくれません。電圧が上がっていません。試しにカードを手で送ってみると再生音が聞こえ、リピート再生も無事機能します。半分ですが、ヤッター!
さて、モーターが駆動しない原因は、回路解析で突き止めます。
※年末で時間があったので手書き回路をCADで起こしなおしました。
モーターが接続されているコネクタから回路を遡って回路図に起こしました。カード挿入のスイッチが入っても回路上の2SC1474のコレクタ電圧が下がりません。モーターは、両端子とも電源の6Vに吊ってあり、スイッチが入ることによってマイナス端子が、GNDに落ちるという回路仕様です。
電源の供給経路とカード検知のスイッチとの関係から、Q214のトランジスタがどうも犯人のようです。A933からC1474へベース電圧 4Vが印加されてもコレクタ電圧が下がり切りません。取り外しチェッカーで確認すると、やはり破損しておりました。
さて、C1474も交換をしようと思ったのですが、既にディスコンのようで、データシートすらネットで検索できませんでした。
回路上で仕様を確認すると、トランジスタの要件は、以下の通りです。
- NPNトランジスタ
- VBEOの最大定格が、4V以上
- モーターを直接駆動するため、Ic = 800mA程度は欲しい
当医院在庫で該当しそうなトランジスタは、SS8050かC2120でしょうか。
内緒なのですが、モーター駆動ということで高耐圧のMPSA42に最初交換をしており、モーター駆動電流が足りなくカード送り途中で止まってしまう事態に遭遇しました。MPSA42のhfeは、実測で110程度でした。モーターの規格も不明なので、何ともいえないのですが、SS8050やC2120のhfeが、290程なので、両者で約3倍の電流差になりえます。モーター駆動の場合は、耐圧もそうですが、起動/駆動電流が重要になると勉強になりました。
さて、話をトランジスタの選定に戻します。2SC1474は、基板のシルクから日本製の足並びと同じで刻印正面左からECBです。SS8050は、海外製で 刻印正面左からEBCなので、足の組み替えが必要なので、今回は、足の組み替えの不要なC2120としました。
無事トランジスタの交換も完了しモーター駆動力も復活しました。
次に、経年で劣化したゴムベルトとゴムローラーの交換となりますが、当医院在庫のゴムローラーのサイズが合わず、今回は、ゴムベルトのみの交換をしました。
ゴムローラーは、パーツサイズの採寸と業者発注を考えると、納期にひと月程掛かりそうで、かつパーツのお代もかさみます。
今回は、ご依頼者様とご相談しゴムローラーは表面を紙やすりで粗くし、アルコールで洗浄するまでとしました。
今回は、修理に約ひと月を要しましたが、回路解析など得意分野が生かせ復活させることができました。また今後も活躍してもらえると思います。
以上で修理は完了となります。