いずみ書房 トーキングリピーター修理

トーキングリピータ

いずみ書房さまのトーキングリピーターの修理依頼です。カードを挿入しても再生できなくなったとのことです。語学系の知育玩具として、よく修理依頼のある、ソニー製のトーキングカードプレーヤーがあり、ゴム系の経年劣化が、ほぼ100%の不具合原因でした。

今回の不具合原因も駆動機関ゴム系の経年劣化と思いきやゴムベルト、ピンチローラーなど弾力も摩擦も問題ありませんでした。

ピンチローラー
ゴムベルト

詳しく見てみると、カード挿入時にスイッチが入るのですが、その起動時のモーターのトルクが全く不足しており、カードを引き込めなくなっておりました。その原因を考察し、以下3点に絞ってみました。

  1. フライホイールの回転に何らかの摩擦が増加したか新たに生まれた
  2. 経年劣化によるモーターのトルク不足
  3. モーターコントローラ回路の不具合

1.については、確かに指回してみると、明らかに何らかの摩擦があるのですが、目視ではその原因が分からず、また分解して詳細の調査を試みようと思ったのですが、シャフトとホイールを外す冶具を持ちえていないため断念しました。※プラレールの車軸を外すのとは、訳が違います。

モーターのカシメ

2.については、グリスの固着やブラシの焼損などを推測したのですが、本品で使用されているモーターは、市販の模型用の筐体に似たタイプではなく専用モーターでカシメ部分も冶具なしでは開封もできないためこちらも調査を断念せざるを得ない状況でした。

さて、困りました。ここまでの作業で分かったことを列挙します。

  • モーター起動時のカード引き込みトルクが全く足りない。電圧レベルでは、電源電圧6.0Vに対し1.5V程度。
  • 少しでも容量の低下した乾電池では、全く動かないため、ACアダプターで動作確認をした。
  • フライホイールは、明らかに何らかの摩擦抵抗がある。
  • 初動引き込み時に指などでトルクを少し与えてあげると、正常に回りだし、以降何とか可動し続けるが、電源を落とし、時間をおくと、再生不良が再発する。
  • フライホイールは、分解解析できない。
  • モーターも分解解析できない。

残り手段として、駆動回路系の不具合調査を開始しました。

C1470データシートより

本品には、NEC製のC1470というモーター駆動用のレギュレータが使用されており、そのデータシートよりアプリ回路を見つけました。モータからの電流をモニタリングし起動時の電圧降下を補償するようコンパレータが仕込まれ電流制御を行っているようです。

回路図には、トルク制御と速度制御用の定数を決定する抵抗の場所が明記されております。本品の実際の回路を調査し回路図を起しました。※いつもは、手書きなのですが、見辛いかと思いCADで作図してみました。

実際の回路

S8550を電源スイッチングとして使いC1470の回路もほぼデータシートの回路のままでした。さて、図中のRtであるトルク制御抵抗を調整すると、モータ起動時のトルクを回復できる可能がありそうでしたので、R37を半固定抵抗器に交換し調整してみました。

トルク制御抵抗

結論としては、トルクを増すことはできましたが、増加分のトルクを持ってしてもカードを引き込むことはできませんでした。

当医院で考え得る不具合要因と提供できる作業は、全て解析調査しましたが、残念ながら修理することはできませんでした。

トーキングリピーターとしても正常な状態が不明なまま解析をしていたため、場当たり的な作業に終始した点は否めません。特に冶具なしには分解できない機構の場合、その時点で終了となってしますので、今後の課題としてどうすべきか宿題としたいと思います。