踊る豚のぬいぐるみ ギア割れ交換 スイッチ接点清掃

踊る豚

踊る豚のぬいぐるみ ギア割れ交換 スイッチ接点清掃

踊らなくなったとのことです。左手の起動スイッチで音楽にあわせ踊るそうです。

過去にも首を絞めると鳴く鶏踊るペンギンなどの修理経験もありましたが、同様のぬいぐるみと思われます。

起動スイッチは、反応する時もあるそうなので、単なる接触不良かもと推測し診断開始です。

お尻のところに電池ボックスがあり、そこに単三乾電池3本を入れて主スイッチをONにします。この時点では、まだ反応はありません。基板上のCOB内のマイコンはスリープしており、左手のスイッチでウェイクアップしメロディとダンスを披露するような感じでしょうか。

到着後に動作確認を行うと、左手のスイッチはやはり接触不良で強く押し込んでも三回に一回しか反応してくれません。しかも、反応しても内部で何かモーターがうぃーんと鳴ったままうんともすんともです。

背中

では、内部の状況を確認するため、開封しますが、一応念のためご依頼者様に開封の許可をいただきます。

実は、開封を使用と背中の縫い目を探していると、既に手で縫い合わされたような形跡があります。なので、開封はいとも簡単でした。

手縫いの痕

ぬいぐるみを切り開くと、外側の皮の内側にガーゼ生地の内張りがあります。

内張りの縫い方かたしても、何やら人の手が加えられているようです。後で事情をお聞きしたところ、このぬいぐるみは、譲り受けたぬいぐるみで、以前の主様がおもちゃ病院に出したことがあったそうです。

開封すると、左手のスイッチの導線が、本体側とコネクターで接続されているのですが、恐らく以前の修理は、そのコネクターが抜けてしまったようで、コネクターが接着固定されておりました。

鶏?

脱皮をさせると、豚というよりは、どう見ても鶏にみえますが、恐らくこの手のぬいぐるみには、同じ機構が流用されているのでしょう。皮を変えれば、鶏にも猫にも犬にもなるのでしょう。

それと尻尾です。尻尾には、梱包用の針金が仕込まれているのですが、どうみても胴体側のフリフリ機構にも接続できるような感じもあります。ですが、接続用の部品に一切なにもないので、豚の場合は、尻尾は振らないのでしょう。犬などに転用する場合は、尻尾にロッドのような部品があって、フリフリ機構にネジ止めすると、ダンス中は、尻尾も振るようになるのでしょうね。

ここで再度動作確認をすると、なんと!無事に動作します。メロディがなり、ダンスをし始めます。

モーターが空回りもせず、ダンスをしはじめました。ん?(。´・ω・)ん?

けど、私は騙されないぞ!

ご経験のあるドクター様なら、ここで直ぐギア割れか何かで空回りが起きていたと推測できると思います。

ぬいぐるみの皮を被ってた時は、機構の動作に何らかの抵抗(両腕のバタバタさせる動作など)があり、ギアの空転が起きていたが、ぬいぐるみの皮を取り払うとその抵抗が無くなったので、空転せずに回り始めてだけですね。

案の定、指で腕を抑えると、メロディが止みギアが空回りし始めました。

このぬいぐるみは、モーターに過大な負荷がかかると、メロディ再生ができなくなります。恐らく、モーターの回転が異常な力で押さえつけられるかなどのでコミテータ部に過電流がながれ、メロディ再生の制御側がダウンしてしまうのでしょうね。

では、空回りしているギアを突き止めましょう。

内部

ギアボックスは、下部の下っ腹にあります。完全に脱皮っせるため、両足の股間の付け根のネジを外し両足を外します。そんで、邪魔なので、首と両腕と尻尾の機構も外してしまいます。

ここで、ギアボックスが外せるようになります。ギアボックスは、モーターがプーリーゴムを回しその回転がギアボックス内のギアに伝播しております。

発見!

ピンセットで少しずらしてみると容易に軸を移動します。ピニオンギアが割れて軸に対しスカスカになり空転しております。完全に割れていないので、回転抵抗が低いと力は伝播していたようです。

ギアの縦割れ
交換ギア

がっつり割れていました。ギアの規格は、よくある8T m=0.5ですので、手持ちのピニオンギアと交換します。

さて、ここで1点気になることがありました。

先のぬいぐるみの皮は剥いだ状態での動作確認時ですが、ダンスの最中、モーターが正転と反転を繰り返し切り替えするのですが、そのタイミングのメロディが変になり音量も低くなります。何とも違和感がありました。恐らくですが、モーターも駆使され続けグリスが焦げてかしているのだろうと思われます。

今現在、回ってはいるのですが、消費電流が多くなりモーターのブラシの寿命や電池の持ちも改善したく、今回もモーターのオーバホールをすることにしました。

モーターのサイズは、マブチ製モーターの260型モーターと同型です。

劣化グリス

やはり、グリスがえらいことになっておりました。綺麗に除去しブラシ用のグリスと塗布しておきます。

お掃除
ブラシグリス

ブラシ用のグリスは、ミニ四駆でお馴染みのタミヤさんのモーターグリスを使用しております。

モーターも再度組み上げ安定化電源で動作確認を行います。かなり静音になり、消費電流も幾分低くなりました。早速、ギアボックスに戻します。

ギアボックス

交換したピニオンギアもギアボックスの筐体にギリ接触しないように気を付けてねじ込みます。この時点でギアボックスのみの動作確認を行います。

問題なさそうですね。正転/反転切り替え時の不具合も出なくなりました。

ここまでいろいろ作業をすると、基板に半付けされていた導線が次々ともげてしまい再度導線を剥き直し半田付けします。

導線外れ

ギアボックス回りの修理は、以上となりますが、左手スイッチの接触不良を診ます。

左手のスイッチ

『PRESS HERE』ここを押せ!の下にはタクトスイッチが仕込まれおります。接触の具合をみるため、手のひら!?を開きます。

接点汚れ
電極

やはり表面が汚れておりましたので、接点復活剤を吹いて磨いておきます。また、極間のショートに使われる電極のたわみを改善して接点も磨いておきます。これでかなり接触が改善できました。

と、ここまでで丸一日が掛かってしまったので、最終の縫製は翌日取り掛かります。

一応念のために皮を被せる前での動作確認をします。問題なさそうですね。


翌日

作業を再開します。

裁縫

内張りをその皮のぬいぐるみを縫い合わせます。手持ちの縫い糸で近い色の糸で縫い合わせます。

内張り
ぬいぐるみ

途中の尻尾や左手の縫い合わせも忘れずに。


診断から修理に至る要所要所で、細やかで適切な説明と 画像、動画を添付して頂き安心してお任せできました。

玩具の内部を見ることは無かったので、驚くことも多く、 興味深く見せて頂きました。

「チキンダンス」のメロディに合わせてぬいぐるみが踊り終わった後、 手のバッグが揺れている姿をまた見られて家族で喜んでいます。

本当にありがとうございました。

~ご依頼者様のご感想より~

ドレクセル ノアの方舟 オルゴール 修理

ドレクセル ノアの箱舟 オルゴール

ドレクセル ノアの方舟 オルゴール 修理

地域で外来勤務しているおもちゃ病院にて、オルゴールの修理のご依頼がありました。

症状としては、ゼンマイを巻いてもオルゴールが鳴らないとのことです。動かしてみてもゼンマイは巻けるようですが、オルゴールは一向になりません。

このオルゴールは、木製の本体の中にオルゴールのムーブメントが内蔵されており、ムーブメントの回転に合わせて中央の水車の滑車のような回転体が回るという仕組みです。

本体を眺めてみます。

側面

各所の飾りは、接着剤で貼ってあります。ネジ止めはないです。

ゼンマイのツマミ

ムーブメントの羽を止める機構がないので、ゼンマイを巻くとそのままオルゴールが演奏される仕様のようです。

オルゴールの仕様に、羽をレバーかピンなどで、止めておき演奏の開始と停止を制御できる機構があります。このオルゴールもその羽の部分に何か不具合が出て演奏ができなくなったものかもしれません。

底面

板材で接着してあります。また、両側の板も木製の軸で接着してあります。原因調査のために分解方法から検討せねばなりません。

ご依頼様に分解に際し、ノコギリなどで接着部分のカットの了承を得ておきました。また、オルゴールのムーブメントが破損し修理不可能な場合に備え、元々の曲名もお聞きしたのですが、不明とのことでした。

まず、接着部分は、底面の板2枚、上面の方舟の屋根、支柱4本です。

底面の板と方舟の屋根は、接着面を剥がして剥離します。支柱は、綺麗に抜くことができないため、ノコギリでカットします。元に戻す際にできる限り綺麗に戻すためノコギリを入れる箇所も最低限にします。

ノコ入れ
ノコ入れ完了

可能な限りで綺麗にカットし無事開封できました。

分解前に本体の内部は、ネジ止めしてあるとムーブメントまでのアクセスが容易になるので、それを期待していたのですが、やはり残念ながらネジが見当たりません。(XoX)

ネジがない

回転体中央の金属製の円盤は、オルゴールのムーブメントの軸にネジ止めできる円盤であることは分かるのですが、そのムーブメントがどのように固定されているのか分かりません。

背面のゼンマイのツマミと滑車の金属板は、同じ軸の両側にねじ込んでいると思われます。

ゼンマイのツマミ同様に滑車の金属板も反対に回せば外れるように思いますが、ムーブメントの故障の状況が不明なので、不用意に回してしまうと破損してしまいます。

うーん、困った。ー_ー’

いや、待てよ。これでは製造時にネジ止めもしていないのだから、ムーブメントは、接着固定で間違いないと思われます。そこで、背面のゼンマイのツマミを外して押してみます。

バキバキ音がします。マズイかな!?

滑車を引き上げてみます。また、バキバキ音がしましたが、うまくかなり剥離できました。

接着固定

やはり推測どおり、ムーブメントは、接着固定してありました。で、ムーブメントは、こちらです。

ムーブメント

やっと、ムーブメントに出会えました。横から覗いてみると、すぐに異変に気付きます。

板バネの終端が変

分かる人ならすぐ分かるかと思いますが、ゼンマイのハウジング内の板バネを外で引掛けている終端が無くなっています。

これでは、ゼンマイをいくら巻いてもバネは巻けませんね。原因の一つが判明しました。

滑車の中に、このような破損部品が転がっていました。

破損部品

多分、バネの終端の取れた止め部分でしょう。

でもこのままでは故障の解析ができませんので、滑車からも分離します。

ですが、ビクともしません。

プライヤーでゼンマイのツマミ軸を強固に摘まみ滑車を逆に回してみると回りだしました。ですが、かなり固いです。

ムーブメントを取り出すと、やはり板バネの終端が無くなっており、ゼンマイを巻いてもハウジング内部で空回りしておりました。

そこで、終端部分の処置は、後ほど考えるとして仮止めをして動かしてみます。

仮止め

ですが、仮止めをしてゼンマイを巻いても動きません。なるほど、板バネの破損以外にも故障原因があるようです。

調べてみると、速度調整用の羽の溝に糸くずが絡まっておりました。

糸くず

糸くずを綺麗に取り払うと羽が勢い良く回り出しました。

やっと回ってくれました。一安心です。

羽回転

ここで、新年一発目の故障原因に関するひとりブレストをします。

  • ゼンマイを巻いてもオルゴールが鳴らない
  • 羽に糸くずが絡まって回らない
  • 板バネの終端の止めが破損して取れている

まず初めにムーブメントの羽に糸くずが絡まってオルゴールが鳴らなくなったと推測されます。

おや?巻がたりないのかな?と思い、さらにゼンマイを巻いてしまいます。

でも鳴りません。だって、羽に糸くずが絡まっているんだもん。

たぶん、もっと巻いてみれば、鳴るのかもとさらに追巻きをしてしまったのかもしれません。

そうすると、板バネに強大な引きの力が掛かり終端の止めが引きちぎれてしまったのだと思います。調べてみると、オルゴールのゼンマイの巻きは、3周程度とあります。

そのため、板バネがハウジング内で空回りしていたのだと思います。

恐らくですが、板バネの終端が引きちぎれてしまった時には、大きな音が鳴ったと思います。さて、原因が分かったところで修理の方針です。

絡まった糸くずは、除去できたので、板バネの終端をどうするかです。

元のようにくびれのある終端を作ってあげてもいいのですが、先の通り、元に戻しても再度引きちぎれてしまうことが予想されるので、今回はより確実に止めることができるようネジ止めをします。

終端は鉄に焼きが入っているSK材のように固いですが、M2のドリルで穴をあけてM2のネジとナットで止めます。

M2の穴

焼き部分の中央に穴をあけてM2 * 20mmのネジを入れてネジの真ん中でダブルナットで絞めます。

ネジ止め
ダブルナット

こうすれば、ちょっとやそっとではちぎれないでしょう。

ダブルナットには、ネジ止めとして、ロックタイトの嫌気性の接着剤で固定します。この状態でオルゴールの動作確認をします。

ムーブメント動作確認

問題なさそうですね。あとは、粛々と分解した本体を組み上げていきます。

ですが、滑車とムーブメントのねじ込みで、早速問題が起きました。

元のような位置までねじ込みができません。

元々ネジ止め用にネジ止め剤が塗布されていたのですが、溝内部まで綺麗に除去できなかったためかもしれませんが、プライヤーで固定し、自分の全力をもってしてねじ込みできる位置までねじ込んでも元々の位置までねじ込みできませんでした。

これ以上やると、軸が折れそうです。ねじ込みがあまいと、滑車が本体側面板に干渉してしまうのですが、本体の接着固定時に調整をします。

ねじ込みが完了したら、滑車とムーブメントを側面版に接着します。

元の接着剤の残りは、綺麗にルーターで除去し脱脂しておきます。

貼りつけ完了まで重しで固定します。

重し

先の懸念とおり、側面との浮きが元の状態より広くなってしまったので、逆側の側面に滑車が干渉してしまいます。

そこで、位置をずれし側面版を貼りつけます。

浮き

側面版の接着固定時に厚紙を挟み、底面の板を方舟の屋根を接着します。

厚紙
側面接着

支柱のは、ノコギリでカットした長さと+α滑車の浮き分隙間が空きます。

浮きは、オルゴールの上部がより広くなっておりますので、上部の支柱には2mm程の木材を噛ませて接着し下部の支柱は、木工用ボンドを隙間に流し込み接着固定しました。

無事滑車の擦れもなく修理完了しました。

本体内部が、どのような故障しているのか、分解はどのようにすべきかを模索しながらの修理でしたが、無事作業ができて安心しました。