ラジコン修理の検査器として検波器を使用しています。といっても、市販の測定器ではなく、自作の検査冶具という位置づけといった具合です。
ラジコンが故障して動かないという症状だけでは、故障原因の切り分けが困難です。故障の箇所が、送信機なのか受信機なのか、もしくはその両方なのか、はたまたその他の駆動系なのか含めて故障の原因の切り分けをスムーズにするためです。検波器が無くてもオシロスコープがあればアンテナの送受信端での計測もできるのですが、やはり外出先でもサクッと切り分けをしたい場面に遭遇します。
電圧のアナログメーター付きが、今回新規に制作した検波器で2号機と呼ぶことにします。その下にあるUSB充電器の筐体に収めているのが、旧来の検波器で初号機と呼ぶことにします。
■初号機
初号機は、低VFのショットキーバリアダイオードを使用して、2段のチャージポンプ構成の至極単純なものです。ネットで検索すると、回路図なども簡単に探し出せる回路構成です。
検波器の他にリモコンなどに用いられている赤外線を検知する機能とスピーカーのチェッカー用にメロディーICを搭載しています。赤黒のクリップは、スピーカーチェック用に使用します。
初号機の難点は、LEDの点灯のみで確認する電波の強度が分からない点と2.4GHzなどのGHzオーダーの周波数帯の検査には、符号化されたパルスの通信形態の状況には不向きであることが多い点でした。
ある日、とある通販サイトで、パーツを物色していた時に、アナログデバイセズのAD8318を搭載したモジュール基板を発見し、おやこのモジュール基板は、何ぞや?とデータシートを確認すると、8GHzまでの検波に使用できそうであることが分かりました。旧来の検波性能に置き換わることを期待してデータシートを読んでみると、検波した電波に応じたパルス応答をVoutに出力するといった仕様のようです。
図38、中段の”AD8318出力”の下限が検知された電波の強度に相当するので、図7の対数適合度を参照しPin(dBm)の値を読み取るという作戦で、検知した電圧をマイコンのADで読み取り、PWMでアナログメーターに電圧として与えてやれば、検波強度も分かるのではないかと思った次第です。
■2号機
構成は、AD8318のモジュール基板とSMAアンテナ、処理演算用のマイコンの構成としました。AD8318モジュール基板の電源は、7V~12Vであるので、持ち運びを考慮し、電源は、006Pの9Vとしました。演算処理用のマイコンは、ADCとPWMを搭載している、おなじみのATtiny13aを使用することにし、電源をLDOで5Vに落とし動作させる。※当事者のスキルでATtiny13a/85/2313, Arduino UNO/Pro mini以外の選択肢な無いのが残念な感じです。
さて、構成が決まったところで、演算処理用のプログラム作成で難儀しました。
データシートにも記載があるのですが、パルス応答は、200ns間隔でとありますが、AD8318のモジュール基板とATtiny13a間で同期させることは、ほぼ不可能なので、ADCのサンプリングの間隔とサンプリングした値を眺めいろいろ試してみました。まず、規定間隔(応答性から100ms程度がよさそう)でサンプリングした値を処理してみます。
- サンプルした値をリスト化し、ソート処理した後、最頻値を採用する。
- サンプルした値をリスト化し、下限のピークを探し採用する。
- サンプルした値をリスト化し、平均化した値を採用する。
まず、動作させオシロでパルス応答をみながら、それぞれのアルゴリズムを評価した結果、平均化処理が一番安定した出力でした。
まず1.の最頻値は、パルス応答の図からも分かる通り、上限の値もサンプリングしているので、最頻値を採用するとおかしな結果となります。うまく、サンプリング感覚を調整できればいいのでしょうが、、、。とりあえず、却下。
また、2.の下限のピークを探す処理もだが、AD8318は、常に浮遊しているいろんな空中の電波をキャッチしているので、時折電波強度の強い値を出力します。いわゆる外れ値というやつで、ピークを検索すると、この外れ値を常に採用してしまいます。※計測データが、正規分布に従い、かつ、ばらつき(σ)の程度から外れ値を除外することも考えましたが、何せ自分部屋では、WiFiなんかの電波も飛んじゃってますし。。。本来であれば、電波暗室で計測すべきですが。。。
最終的には、平均化処理にて、この外れ値の値を、うまくぼかしてくれ、なおかつ大局的な値の結果への追従応答が程よかったです。う~ん、妥協した感じは否めません。エンジニア的には、もっとがんばれよ!という感じですが、改善は、宿題としたいと思います。さて、実際に検波した結果を掲載します。
2.4GHz帯の確認は、プレステ3のコントローラで、Bluetoothのペアリング時の模様です。
因みに、箱の中は、こんな感じです。
アナログメーターは、こちらで購入できます。
SMAアンテナは、こちらで購入できます。
念のため、006P用の電池ボックスも
【誤記訂正】
AD8313(誤) → AD8318(正)
AD8213(誤) → AD8318(正)
ブレークアウト基板に搭載されているデバイス型番に誤記がありました。上記の通り、訂正しております。ご指摘ありがとうございました。2019.4.22(月)