アンパンマン たのしくレッスン! いっしょにステージミュージックショーの修理依頼です。電源を入れても無反応ということでしたが、動作を確認します。
まず、電源のスライドスイッチを入れますが、電極の錆かスライドがきつめです。点灯するLEDも暗いです。何かが起きているようです。案の定、LEDが点灯する以外は、うんともすんともです。
考えられる不具合は、以下のあたりでしょうか。
- 電池ボックス、基板間の断線もしくは線路の抵抗値変化
- スライドスイッチの接触不良もしくは線路の抵抗値変化
- 線路半田不良
- メイン制御ICの動作不良(クリスタル不良、電源断もしくは異常)
早速、開封して電源周りをチェックです。電池および電池ボックス端での電圧チェックは、問題なし。次に基板端の電圧を確認します。
基板構成は、制御ICが乗るCOB子基板と鍵盤が乗る大きなメイン基板の2枚構成です。メイン基板端での電圧は、問題なし。※因みに、安全設計のためポリスイッチが搭載されております。では、COB子基板を確認します。
COB子基板上は、シンプルでCOBとクリスタル部品のみ搭載されております。クリスタルの発振を確認します。問題なさそうです。次に供給電圧を確認します。
COB子基板端の電圧は、2V程度に降下しております。2Vが正規の電圧なのか確認します。電池ボックスは、単三乾電池が4本なので、6V→2Vへのレギュレートが、正規の仕様なのか確認します。
回路経路を確認しましたが、途中に電圧レギュレータなどの電圧制御回路がなく、チップ抵抗のみを介して電源が供給されております。では、そのチップ抵抗端(COB側)での電圧を計測します。
あら? 同じ配線経路ですが、こちらは、5Vを指しております。従って、プリント基板の配線経路上で電圧降下を起こしております。経路を確認すると、パターンの腐食を発見しました。この腐食分の抵抗成分で電圧降下を起こしていたようです。※ここで、電源LEDが暗くなっていたことの説明がつきました。
拡大めがねで経路を追うと上図U1のシルク上に腐食部分が見えます。※ピンセットでこじっているので、傷あります。液体をこぼしたわけでもないので、うーん、製造過程で不純物でも混入してしまったのでしょうか。。。
さて、この配線を再建するため、リード線にてCOBのVDD端と先のチップ抵抗端を結線します。結線を行い電源を投入すると、ドキンちゃんが、何やら無音のなか動き出しました。???まだ、何かおかしい箇所がありそうです。
ドキンちゃんの動き以外を注意深く観察すると、鍵盤の押下に対する鍵盤LEDの点灯が見られるので、どうも音以外の動作は問題なさそうだが、何故か音が出ていないようです。ということで、COBへの電源ラインで腐食があったので、音関係の配線のラインも確認します。
本製品は、左右にスピーカーが搭載されておりステレオ音を楽しめます。基板をスピーカー端子からの配線を逆に辿るとオペアンプ(TDA2822)にたどり着きます。では、このオペアンプの電源を確認します。データシートによると、2pinがVccですね。案の定、計測をしても電圧が印加されておりませんので、音声の増幅がされていないようです。回路を解析すると、2TYと刻印がされているS8550のチップトランジスタにたどり着きます。COB基板のP25端子を制御端子としてベース制御しエミッタの電源をコレクタ側のTDA2822に供給制御しておりました。図にすると以下のような感じです。
2TYのチップトランジスタにて、TDA2822の電源を制御しているので、2TYのコレクタとTDA2822のVcc間の配線を確認します。
ありました、R22のシルクの上に断線部分がありました。こちらの配線を再建します。
以上、2箇所の再配線を行い動作を確認します。無事、音声も動作も確認できました。
前述で、ドキンちゃんのみが動作していると記載しましたが、本体を裏返して動作をみていたためでした。正常に表に返して動作をみると、アンパンマンもバイキンマンも動作しました。※アンパンマン、バイキンマンは、下から突き上げるカラクリ機構のため、裏返しでは動作していないようにみえるためでした。
ジュースなどをこぼした場合、浸水による腐食で、抵抗値変化や断線は過去に経験がありますが、その形跡もないまま、腐食と断線があらわれるとなると、製造段階での不純物の混入で腐食が後で進行したケースかなと考察しました。
鍵盤および各所のボタンも埃で接触不良が出ておりましたので、清掃して修理完了です。
祖母からもらった大事なピアノでしたので子供も大変喜んでこれからも大事に使ってくれそうです。
~ご依頼者さま ご感想より~
修理も迅速に丁寧にしていただき
大変感謝しております。
ありがとうございました。