今回のご依頼は、2台のおやすみホームシアターから選りすぐりの部品を取りまとめ、1台のベストな状態のおやすみホームシアターを完成させるというご依頼です。※末永く1台を使い続けたいとのご要望でした。
さて、このおやすみホームシアターは、TOMY社がタカラ社と合弁する以前の古い機種となります。過去に修理の実績もありませんが、まずは内部の構造から解析します。
まずは、それぞれの状態ですが、トップ画像向かって左のおやすみホームシアターは、電源を入れてもうんともすんともな状態です。向かって右のおやすみホームシアターは、一応は動作するが、ノイズが酷いとのことです。
※キーパーツが、動作不良でかつ代替えが効かない場合を除いて、できれば2台とも綺麗に直したいというモチベーションで臨みます。
その1.動作機の詳細調査
電源投入するとカセットの画像も投影され回転し音楽も鳴ります。ですが、やはりスピーカーの音割れやモーターの駆動音が大きいので、おやすみというよりは、うるさいかなぁという感じです。音割れの原因を探るべく分解しスピーカーとみてみると、よごれやほこりもそうですが、コーンもところどころうねっていました。
Φ50mmでジャストサイズではありませんが、手持ちの同規格のスピーカーで鳴らしてみると、これがまぁ綺麗に再生されます。スピーカーコーンの吸湿など経年劣化も相まって音声不良になってしまったのでしょう。
純正スピーカーの直径は、Φ57mmですが、このおやすみホームシアターは、スピーカーの抑えが付いているので、Φ50mmの手持ちスピーカーも取り付けできました。新規の部材を取り寄せると送料なりかかってしまうのですが、ご依頼者様にご相談したところ、音質を重視されるとのことで、直径純正サイズΦ57mmを別途調達し聞き比べをしました。
聞き比べたスピーカーは、以下のとおりです。
- Φ50mm 8Ω 8W品
- Φ57mm 8Ω 1W品
- Φ57mm 8Ω 0.5W品(純正規格:音割れノイズ品)
出力が異なるので、同じボリュームでも音量が違ってくることは、分かっておりますので、比較は、音質のみということで聞き比べて頂いた結果、 Φ57mm 8Ω 1W品 となりました。スピーカーは、新品の Φ57mm 8Ω 1W品 で換装することになりました。電子音を聴くわけですから、ある程度の見切りをつけてもいいと思います。
次にモーターの駆動音ですが、内部を分解しオーバホールをします。
古く焦げたグリスを取り除き、コミテータ―とブラシの接触点の清掃と研摩をおこないました。コミテータの溝と焦げたグリスの相乗効果で接点に不具合が出ていそうですね。
コミテータの研摩をし過ぎると破損するので注意が必要です。また、カーボンの除去には、フラックスクリーナーがとてもよく聴きました。ブラシ用のグリスを負荷して視聴します。※モーターを視聴するっていうのもあれですが、、、。
オーバホール後のモーターは、新品と間違える位の静音が達成できました。別途新品のモーター交換という手もありますが、この手のモーターは、トルクや動作規格を調べないと交換ができなく、外形の見た目が同じでも市販のマブチモーターなどと交換をしてしまうと、速度が違ってしまうので、この点も要注意です。恐らく、カセットの絵柄の回転速度が速くなるように思います。
さて、スピーカーの音割れとモーターの駆動ノイズは改善できそうです。動作機をベスト機として、ある程度目標のレベルで完成できそうです。
その2.不具合機の詳細調査
不具合機は、うんともすんともなので、開封して調べてみると、電源用のプッシュスイッチの接触不良でした。試行的に短絡させ電源を投入すると、無事起動し音楽も流れました。しかも、なんと!こちらの方が静音で状態が良いです。電源のプッシュスイッチが早くに故障したため、稼働時間が短いのでしょうね。
その他の部材も動作機同様にモーターのオーバホールメンテナンス、スピーカーの交換を行えば、不具合機も生き返りますね。
さて、以上をまとめ修理方針を決めます。
- 代替えのきかないキーパーツの不具合はない。
- モーターのオーバホールで静音にできる。
- スピーカーは、純正サイズのΦ57mmを注文し交換。
- プッシュスイッチもすべて新品に交換。
また、部材パーツの交換以外にも、以下のメンテナンスを実施します。
- ギアボックスの古いグリス除去し新しくグリスを付加。
- ゴム系のプーリーやローラーは、アルコールで洗浄掃除。
- 光学系レンズもアルコールで洗浄掃除。
- 本体内の埃もお掃除と筐体もアルコールで洗浄。
- ビリケン球を新品に交換。
- LED球の使用可否を確認するため試行的に実験
2台のおやすみホームシアターは、無事動作できるようになりました。できる限りの静音も達成でき、これで末永くまたご使用ができると思います。
ビリケン球も使用時間が長くなると黒くなってしまい交換にて、明るく鮮やかさが戻りました。球が古くなると見えていなかったで、球の交換後に不具合かもと思い込んでしまったのですが、旧を新品にし輝度があがるとレンズのスリットも見えるようになります。
以上で、当医院で提供できるメンテナンスおよび修理は以上となります。
ビリケン球と同じ規格のLED球の交換テストも行いましたが、指向角の狭いLEDは、スポット的に対象を強く照らすような場合には良いですが、広い角度に明るく光って欲しい時には向きませんでした。そのため、投影中央に黒いムラが現れ調整ネジでも消すことができずでした。また、輝度も明るすぎて色合いも白く眠りにつくには、ビリケン球の温かみのある色合いはよいと思います。※LED球への交換は、耐久テストもしておりませんので、自己責任でとなります。
今回の修理メンテナンスは、個人的な達成感が非常に高くおやすみホームシアターも製品購入時の状態に近くできたように思います。ご依頼者様におかれましても、末永くご使用になられたらと思います。