ねぇアンパンマン! おしゃべりDX 腐食電極交換 修理

ねぇアンパンマン! おしゃべりDX

ねぇアンパンマン! おしゃべりDX 腐食電極交換 修理

このおもちゃは、かなり以前に、横浜のおもちゃ病院で一度拝見した記憶があります。手の黄色い手の中に基板に付いたタッチセンサーが仕込まれており、当時は、このセンサーでタッチを検知するんだーと記憶しておりました。

さて、今回のご依頼は、電池ボックスの電極の腐食で起動不良を起こし、ご依頼主様のお住まいの近隣のおもちゃ病院で一旦修理をしてもらったそうです。しかし、数か月ほどで再度動かなくなってしまい、昨今のコロナの影響でおもちゃ病院も開かれないままで、お困りとのことでした。という経緯ですが、前振りはこのぐらいにして早速拝見します。

既に、ご依頼の際に腐食箇所の画像は拝見しておりました。

正極側腐食
負極側腐食

先のおもちゃ病院様では、当日の作業も限られていたらしく、腐食部の研摩のみで一旦、うごくところまで対応されたそうです。

正極の腐食を見ると、かなりの腐食なので、恐らくヤスリで錆を落としたのだと思いますが、また錆があがってしまったようですね。

でもですね、正極の画像を拝見すると、研摩は軽くサッとした程度にしか見えないですね。いくら患者さんの多いとか、研摩のスキルとか無いとか、いろいろあるとは思いますが、ドクター様であれば、再発しないようにできれば念入りに研摩をしてもらいたいですね。表面的な錆取りでは、時間をおくと再度腐食が広がるので、以下を徹底したいです。

  • 電極を外し錆を落としきる。
  • 錆が酷ければ、電極を交換する。

さて、今回は、電極を外し新品の電極に交換しますが、これがとてもとてもたいへんでした。

まず、電池ボックスを含む本体をアンパンマンのお尻から引っ張りだします。

本体

本体は、結束バンドで固定されているので、布を切らないようにカットします。

ここで、重要な注意事項があります。この本体には取り付け方向があります。電池ボックスの蓋が背中方向になるのが正解です。というのも、起き上がっていることなどを検知する傾斜センサーが本体内部にあり傾斜センサーの方向が違うと起き上がっていることが検知できません。例えば、寝かせ動作をさせても、寝かせ動作をしてくれません。ご注意ください。

結束バンド

結束バンドは、300mmで足りました。

コネクター

アンパンマン側のセンサーとは、コネクターで繋がっているのですが、このコネクターもかなり固いので、本体側を開けツメを押しながらこじった方が取りやすいです。導線をひっぱると断線の危険性があるので、慎重に行ってください。

ヒューズ

電池ボックスの渡りには、ヒューズが取り付けたあります。今回は、切れてはおりませんでした。電源のプラス赤とマイナス黒を外して電池ボックスを取り外します。

ここでやっと、電極の交換ができますが、電池ボックスの腐食以外にSoC側の起動で問題が出ていないかチェックします。

SoC

おおお!アンパンマン おしゃべりいっぱいことばずかんでお馴染みのnuvoton製のSoCがお目見えです。外部電池に接続し起動してみます。

起動テスト

ひとまず無事、起動音が聞こえました。良好そうです。

次いで、センサーのテストをします。『なかよしタッチモード』なる各センサーに触れて遊ぶモードがあるので、それでテストします。ですが、頭のセンサーだけが、反応しません。

頭センサー

頭以外のセンサーは、プラスチック製の筐体に入れられており、頭センサーだけがぬいぐるみの皮の下にあります。

( ,,`・ω・´)ンンン?

センサーの故障か、配線の断線か、はたまたその両方か。。。

コネクター

このコネクターの根本もなんか怪しいかもしれない。。。

どの配線がどのセンサーに対応しているかを調べてみました。

このセンサーのセンスのメカニズムは、他のおもちゃでよくある圧電素子での振動を検知するのではなく、SoCのADCで配線の電位をループしながら観測しており、手を近づけるなどの静電気で電位が変化すると手で触れたと認識するようです。

取り扱い説明書には、起動時に手足などのセンサーに触れながら電源を入れないでとあるので、電源投入時に初期値を取得し、その初期値からの変位を観測していると思います。

コネクター対応図

頭センサーは、オレンジの配線です。もし、断線だった場合も考え、頭センサーを取り出し、導通確認をしないといけません。

頭センサーは、頭頂部に仕込まれており、縫い目を開いて確認しないといけませんので、ご依頼者様に開頭の承諾をいただきます。その間に電池ボックス側の修理を進めておきます。

電極間の抵抗値

電池ボックスの各電極の抵抗値を確認します。

やはり、錆の酷い端の正極端子は、まったく導通しておりませんでした。その他の導通は問題ありませんでしたが、腐食のあった正極に対応する負極の電極も交換します。

ですが、正極の錆で電極が膨らみツメが取れません。いっくら引っ張っても裏から押してもビクともしません。そこで、CRCを吹いてツメが引っかかっている電池ボックスの縁を小さいマイナスドライバーでこじり広げました。そうすると、やっとこさ取れました。

ぬおおお!錆びた正極

液漏れは、3本の電池の端だったらしく、負極側に錆びが出ていたので、どちらも交換します。

この手の交換は、サクサクと行ってしまいます。

正極側と負極側

正極側と負極側を間違わないようにマスキングテープでメモを貼っておきます。

頭センサー以外の動作確認は、無事できているので、本体は、アンパンマンのお尻に入れて結束バンドで絞めておきます。

さて、懸案の頭センサーですが、開頭の承諾が得られたので、早速開頭します。

頭センサー

頭センサーは、頭頂部の十字に縫い合わされた箇所の裏に金属製シートをオレンジの配線と端子がカシメられております。

まず、断線を疑ったのですが、断線もなく、この金属シートに触れると良好に反応します。

ヤナ予感します。

もしかすると、観測しているADCの変位の数値ですが、設計時のマージン不足で、経年劣化などで金属部分の抵抗値が変化し、手で触れたと認識する閾値を超えることがなくなったのかもです。

この金属に触れると100%良好に反応しますが、ぬいぐるみの配下に仕込むと、静電気の影響が薄れ、また金属シートの経年劣化で抵抗値も上がり、変位の閾値を超えることができなくなったようです。

縫い目は開いたままでの反応も手のひらでなら反応したり、指先は反応しなかったりと不安定です。

ウーン、困りました。

元の通りの感度に修理するのはSoCのプログラムの定数を変更でもしないかぎり不可能でしょう。試しに、アルミ製の針金を内部で金属シートに触れるようにしこみ感度をみました。

めちゃくちゃ感度いいです。

自分がおじさんだからなのか、手の静電気が帯電しづらいのか、、、。

針金で代用する案も含め頭センサーについて、ご依頼者様に相談したところ、やはりお子様が遊ばれる玩具なので、金属むき出しは危険かもしれないとのことで、頭センサーの感度修復は、お見送りになりました。材料代の負担がネックになりますが、導電性の縫い糸でも改善するかもしれないので、次回同様な案件があった場合の宿題にしたいと思います。

元気100倍!アンパンマンですね!

以上で、今回の修理作業は完了です。


娘が早く早く!と待ちわびていたようで、抱きしめておりました。

 電池を入れて動作確認も無事で私が頭を触れると反応してくれました。(娘は反応しませんでしたが) 娘がアンパンマンの為に作ったネックレスを首にかけてずっと抱きしめております。

ここまで丁寧なお仕事をしていただき本当に心より感謝しております。

おもちゃは子供にとって、とても大切な友達です。親とは違った関係性があります。

私にとってもこんなに大事に遊んでくれるアンパンマンが動かなくなり、切ない気持ちになっていました。

どこか、おもちゃの病院はないかインターネットで探していて、宅配おもちゃ病院の瀧下様を知りました。

藁にもすがる気持ちでメールを送らせていただきました。

 半年ぐらいかかるかと思っていたので娘にもアンパンマンが治るなら我慢できるかなと話していました。

こんなに早く元気になって戻ってきてくれるとは思いませんでしたので本当にとても嬉しいです。

瀧下様、ありがとうございました。

できるだけおもちゃを壊れないように気を付けたいと思いますが、また今後もお世話になるかもしれません。

~依頼様のご確認より~