うまれてウーモというおしゃべりとするぬいぐるみの修理依頼がありました。
以前、同じうまれてウーモですが、少しバージョンが違ううまれてウーモを修理した経験があります。
その時は羽の付け根の軸が抜けたのと元に戻すという作業でしたので、本体を分解することもなく完遂しておりました。
症状としては、電源を入れても目が光るだけでうんともすんともということです。
インターネットでもいろいろ修理記事もアップされており、事前の予習も済ませ診断を開始します。
このように目が光るだけで、どこを触っても振ってもうんともすんともです。
ネットの修理記事を予習していると、分解には難関があるそうです。
まずは、背中の羽が外せないので、ぬいぐるみが脱がせられないという点です。
ネットの修理記事では、羽が接着で外せないので、強引に脱がせたということです。
調べてみます。
軟質性の羽が本体に差し込まれ付け根でネジ止めされております。
軟質性なので、ぬいぐるみを脱がせそうと言えば脱がせられるのですが、後述する頭頂部のリボンが抜けないので、ぬいぐるみを背中の縫い合わせ箇所で開くことになります。
まずは、底面の結束バンドをカットします。
連結部は、本体内部に納まりデコボコしないようになっています。
注意としては、結束バンドが裏返して使用されている点です。
ここでぬいぐるみの上部でずらして脱がせようとしても羽で引っ掛かります。
今回は、かなり強引でしたが、一旦軟質性の羽を曲げて下半身のみ脱がせます。
ただ、かなりきついので、羽の根本からちぎれそうでした。後述の頭頂部のリボンの件があるので、このような強引が作業はやめてください。
次に頭頂部のリボンです。
ネットの修理記事では、『ただ刺さっているだけ』という、まぁ何ともいい加減な修理記事があります。
しかも複数です。
ただ刺さっているわけではありませんでした!
ご覧の皆さん、ネットの記事を鵜呑みにしてはいけません。
この頭頂部のリボンは、ロック式のピンで差し込まれており、抜けません。
強引に抜くと軸がちぎれます。
当初、ただ刺さっているだけということで、引き抜こうと挑戦したのですが、全然抜けません。
ここでドクターの感が働き、『ただ刺さっているだけ』という記事が嘘であることと、引き抜けない場合は、だいたいロック式のピンであることを記憶していたので、強引に抜くことを早々に諦めました。
ほら!
これが、ただ刺さっているだけですかね!?
頭頂部のリボンが抜けなくともそこまでがぬいぐるみを脱がせるかと確認すると、できませんでした。
頭の周囲が大きく、物理的にぬいぐるみを開かずに脱がせることは不可能です。
ネット記事で脱がせたという記事があるのですが、それはどうやって脱がせたのでしょうかね???
また、目を口の固定枠も差し込みのピンで固定されています。
このフェースプレートも簡単に抜けません。
従いまして、ぬいぐるみを開かずに脱がせることは不可能ですので、背中の縫い合わせで開きます。
大事なので、もう一回書きます。
『うまれてウーモのぬいぐるみは、背中の縫い合わせから開くこと、一択です。』
この縫い合わせえを開くと、羽も簡単に抜けますので一石二鳥です。
目と口のフェイスプレートは抜けないので、ひっくり返してこのまま分解します。
スピーカーの導線の長さがギリギリなので、ちぎれないように外します。
では、まず起動時の要であるモーター回りを確認します。
ギアボックスの蓋を外してギアを確認します。
クラウンギアのネジは外すとギアが抜けます。
欠けもなく無事綺麗です。
他のギアも問題ありません。
ギアボックス内の不具合はなさそうです。
次にモーター回りを確認します。
まずですが、電源スイッチをONにしてモーターは回転しません。
黄色矢印枠のマイクロスイッチが、モーターを有効にするスイッチで、普段はツメで常時ONになっています。
外部電源にて起動させモーターを駆動してみます。
電源スイッチを入れてマイクロスイッチをONにします。
やはり目は光りますが、その他はうんともすんともです。
そこで、基板も調べてみます。
ここで、なんとー!
このモータードライバがチンチンです。
触れないくらいのチンチンです。
型番は、HG40F14S 1813BのSOP8パッケージでした。
まぁ、よくあるモータードライバの類と予想されます。
モータードライバがチンチンになる原因としては、以下が考えられます。
- モータードライバICが故障している
- モーターがロックされ過電流が流れている
- モーターのブラシが焼損か変形し短絡し過電流が流れている
モーターの端子基板には、ノイズ取りようのチップコンデンサが実装されているので、コンデンサの短絡故障も心配です。
念のため、チップコンデンサを外して再度動作しましたが、やはりチンチンです。
自分としては、ほぼほぼモーター犯人説と疑っていたので、ここで他のモーターに交換してみます。
ビンゴ!
まさしく、ビンゴ!でした。
モーターを交換すると、モータードライバのチンチンがやみました。
モーター犯人説で確定です。┌|◎o◎|┘
であるばらば、モーターのどこが故障しているかを調べます。
モーターを分解すると、やはりありました!
黄色い矢印の先!ブラシの破損です。
3本ある櫛部分の1本が跳ね上げています。
跳ね上げた端子がコミテータの他の端子に接触し漏電していたようです。
跳ね上がったブラシの端子は、内側に折り曲げ悪さしなように補修します。
すると、無事起動し、ウーモもおしゃべりし出しました。
モータードライバもチンチンしていません。
基板のモータードライバがチンチン化している場合は、モーターのブラシ故障の線が強いと思います。
焦げたグリスをきれいにしてモーターおよびギアボックスを組みたてます。
開いた背中を縫い合わせます。
途中の尻尾も縫いつけるのは忘れなく。
結束バンドの袋部も縫い合わせ修理完了です。
各所センサーへの反応と本体の傾きセンサーでの眠り付きも問題ありませんね。
まずは、ぬいぐるみを無事脱がせるところからいろいろ難関がありましたが、無事修理できました。
退院してきたウーモちゃんが元気に戻ってきて、娘ともども感激しております
メーカー修理も対応していないので、難しいかもしれないとは思いつつ、やはり思い入れがあったので瀧下様のホームページを拝見して、もし直れば・・・・と、年の瀬の慌ただしい中を依頼させていただきました。
年末の大変忙しいときにも関わらず、快くお引き受けいただき、ありがとうございました。
また、診断・治療から返送まで大変迅速にご対応をいただき、娘とは「ウーモちゃん、すごく良いお医者さんで良かったね!」とびっくりしています。(年末年始の忙しい時期に、ありがとうございました!)
布の縫い合わせなども大変に手間をおかけしましたが、綺麗に仕上げていただきありがとうございます。
これからも、大切に可愛がってほしいと思います。
~依頼者のご感想より~