たまごっち 液漏れ修理 クリスタル交換
大切に保管していたたまごっちが動かなくなったとのことで修理のご依頼がありました。
保管時にボタン電池を入れたままにしてしまい、電池を変えようとした際に液漏れを起こしていたそうです。液漏れを可能な範囲で拭きとったが、新しい電池を入れても起動してくれないそうです。
この手の液漏れは、残留の粉と黒く変色した腐食部分のせいで導通が取れなくなるんですよね。では、早速順に診ていきましょう。
その1.右上の緑のたまごっち
やはり電極に液漏れの粉を腐食痕があります。電池の導通障害になっているので、綺麗にお掃除します。
それと、ボタン電池間を橋渡しする電極も診ます。
影響は、限定的でしたね。腐食部は、ルーターで研摩しておきます。これで起動まで無事修理はできました。押しボタンの電極もお掃除しておきます。
まま汚れていましたね。これで綺麗になりましたが、ボタン側に接触不良が出ておりました。※後述
電極パターンも腐食なく綺麗な状態です。押しボタンの裏面もアルコールで拭いておきます。
この黒い塗料は、導電性の抵抗値を持った塗料となります。劣化によって導通が取れなくなります。
実は、動作確認にて押しボタンの反応が悪いことが分かりました。過去の修理実績では、アルミ箔で補修したことがあるのですが、アルミ箔を接着剤で接着してしまうので、万一失敗した場合は、元に戻せません。なので、全くボタンが効かないくらい接触が取れない場合の策となります。
動画の通り、かなりの押し込みをしないと反応しないのですが、前述のリスクをご依頼者様にご相談した結果、現状のままでということになりました。
因みに、導電塗料で補修するという策もありますが、先の黒塗料への食いつきが悪く塗布しても剥がれてしまいます。また、ボタンのシリコン自体も塗布が厳しいという点もあるかもしれません。
次に、左上の森で発見たまごっちを診ます。
その2.森で発見たまごっち
森で発見たまごっちも電極に腐食はありましたが、導通を阻害する致命的なレベルではありませんでした。
電極の表面に錆は広がっておりますが、突起部では導通がありました。そこで、直接半田部に単三乾電池2本の外部電池ボックスで電圧を印加します。
ですが、うんともすんともです。やはり、電極の腐食以外にも何かあります。
そこで、たまごっちの故障あるあるの、クリスタルの発振を診ます。
電圧を印加しても発振せず、Hi側に張り付いたままですね。早速交換してみます。
さて、困りました。手持ちの32.768kHzのクリスタルは、シリンダー型の3 x 8mmサイズしかありません。純正のサイズは、2 x 6mmです。
図のような取り付けていますが、これでは筐体の周囲に干渉して収まりませんでした。そこで、電池ボックスの上に横になるように後で取り付けしなおしました。
これで無事起動するようになりました。
と、ここで問題発生です。
無事に直ったと高を括っていたら、次の日、再動作確認をすると、また起動しないうんともすんとも状態になりました。
外部から電圧印加したり、ケースから外して入れなおしてみたりをすると、突発的に起動したりします。
森で発見たまごっちは、液漏れの腐食が基板の配線にも広く回っており、それはもうどうしようもないのですが、部品の半田部の腐食や目視できないクラックが懸念されるので、実装部品を一式再半田してみます。
- 電池ボックスの電極の半田
- 交換したクリスタルの電極パット
- 電源用電解コンデンサー 47uFのパット
- 液晶周辺のSMD部品のパット
するまぁ、無事に起動するようにはなりましたが、ここで騙されてはいけません。この点の突発的に動いたり動かなかったりする事例ってよくあります。
おもちゃ病院に、故障したおもちゃを持ってきたが、ドクターに診てもらうと無事動いてしまったり、無事修理してお返ししても、自宅に到着すると、また故障していたりと。
原因は、さまざまなんでしょうが、半田付けなどをしていると、熱での膨張や基板の応力などで直後は無事動くが、熱が冷めると or 時間が経過すると、また故障が再発してしまいます。
そこで、森で発見たまごっちも、翌日まで冷えた部屋に放置しておき、そこで再度動作確認をしました。
再確認の結果、無事に起動もでき、安心してお返しできます。
では、次に左下の銀のてんしっちのたまごっちを診ます。
その3.銀のてんしっちのたまごっち
このてんしっちのたまごっちは、色違いの2つのご依頼があったので、筐体の色で区別するようにします。
こちらのたまごっちも液漏れの残留粉で接触不良が出ておりました。
まぁーこれはすごいことになっておりました。導通は、無理でしょう。ということで、粉を取り除き、腐食を研摩しました。
さくっと、起動もできたのですが、いきなり、お墓のシーンです。
何度、リセットしてもお墓です。時刻の設定はできます。ですが、お墓にしかなりません。
実は、どのたまごっちもそうなのですが、遊び方を知らないので、このお墓のシーンは、ゲームオーバーと勘違いしておりました。
ご依頼様にお聞きすると、このてんしっちのたまごっちは、あの世で天使を育てるゲームとのことで、電源投入後やリセットで、このお墓のシーンになるのは、“正常”とのことでした。
少しそのまま置いておくと、おばQが現れました。何か進んでいるので、これが正常なのでしょうね。
以上で、銀のてんしっちのたまごっちは修理完了です。次に、金のてんしっちのたまごっちに取り掛かります。
その4.金のてんしっちのたまごっち
ご依頼様が一番よく遊んでいたたまごっちとのことですので、気合いを入れて診断しましょう!
電極は、やはりよく遊ばれていたとのことで綺麗でした。
では、早速、ボタン電池を挿入しましたが、うんともすんともです。森で発見たまごっちと同じです。開封して中を診ます。
これといった目視できる故障無さそうです。外部から電圧を印加しても、やはりうんともすんともです。
森で発見たまごっちと同様に、クリスタルを確認します。
やはり同じようにHi側に張り付いておりますね。クリスタルを交換してみます。
クリスタルを仮止めで交換し動作を診てみますが、起動動作が変です。
再起動を繰り返しているようです。
電源系の電解コンデンサーかもと思い交換をしてみたのですが、効果はありませんでした。
この金のてんしっちのたまごっちは、ボタン電池の電池ボックスの電極には腐食は無かったのですが、なぜか基板上の配線に酷い腐食が回っております。特に押しボタンのパターン配線です。
うーん、森で発見たまごっちと同様に実装部品の半田クラックや腐食があるようですね。一式再半田してみます。
刻印が不明なのですが、トランジスタかレギュレータか、何かしらの制御素子らしいので、半田クラックなりがあると、問題起きそうですね。
ということで、再半田を行いますと、無事、お墓が現れました。
液晶が切れているのでは、筐体から外しているので、導電ゴムの電極が浮いているせです。
無事起動できるところまできましたので、仮止めのクリスタルを取りつけます。
3 x 8mmのクリスタルは収まりが悪いので、寝かして取り付けます。
先の、押しボタンの接点パターンに腐食があったので、恐らくボタンの反応が悪いかまったくないかもしれないという予想はあったのですが、全く反応しませんでした。
基板上の銅配線パターンが腐食してしまって剥がれて一部パターンが無くなっておりますので、修復は不可能でしょう。案の定、組み上げて動作確認をしましたが、どんなに押し込んでも無反応です。
やはり、腐食が酷いと基板上のパターンもやられてしまい、修理不可能になってしまいます。
さて、ご依頼様へ、押しボタンが全く使えない旨を報告し、どのようになされるかをご相談した結果、起動のみしてくれればということで、クリスタルのみ交換ということで対応をしました。
さて、今回は、4個のたまごっちのご依頼でしたが、完遂率 3/4という成績に終わりました。プリント基板の配線の腐食は、可能であれば迂回配線などでも対応できたりしますが、押しボタンのパターンとなると、そうはいきません。残念ですが、金のてんしっちのたまごっちは、修理不可能ということでお返ししました。
この度はお忙しい中、修理を引き受けて下さりありがとうございました。
不具合の原因と修理工程の分かりやすい説明と、動作の確認などを写真や動画で随時ご連絡下さり、無事に起動した動画を見た時は感動しました。
修理完了後にまたもう一度動作の確認をして下さったりととても丁寧に診て下さり、本当に感謝しております。
これからも大切にしていきます。 ありがとうございました。
~ご依頼様のご感想より~