たまごっちプラスカラー 液漏れ腐食重症 発振回路修理

数年ぶりにたまごっちを遊ぼうということで電池を交換したが、時計が進まず卵が孵化しないとうことでした。

因みに、羽化(うか)は、昆虫で、孵化(ふか)は鳥類や爬虫類だそうです。

じゃあ、たまごっちはどっちなの?

ですが、卵なので孵化ですね。

では、早速診断を開始します。

まず、電池ボックスの電極の液漏れの腐食が広がっています。

恐らく導通が取れていたのかもしれませんが、カツカツだったかと思います。

前述の1日ほど経過すると電源が落ちるという症状は、この接触不良かと誤認していたのですが、こちらは単なる液漏れで後述で判明する主因ではありませんでした。

電池ボックスの外からの目視ではそれほどでもないかな!?

と思いきや本体を分解すると…

┌|◎o◎|┘

まさしく地獄絵図かのような光景です。

アルカリ乾電池から強アルカリの水酸化カリウムが染み出し固まった光景です。。

保管時の乾電池外しは徹底しましょう。

電極の腐食が酷いので電極を交換してしまいます。

単四用の電極がサイズぴったりです。

電池ボックスの蓋止めのピンも削れていましたので、補修しようかと思ったのですが、蓋と止めるだけなので、現状のままとなりました。

さてさて、本体を分解して内部を確認しますが、そもそも卵が孵化しない場合、時計が進まないのが原因ですが、皆さんもご存じのとおり、32.768kHzの発振に不良が起きていますね。

クリスタル部品自体の故障か、発振回路の故障かなので、詳しく調べてみましょう。

早速ですが、電池ボックスの負極も腐食があり分解のタイミングでもげてしまいました。

カツカツで接続していたのですが、分解のはずみでポロっとちぎれたのでしょう。。

芯線も腐食していたので、導線は正極/負極とも交換します。

やはり発振回路にひろく液漏れの腐食が広がっていますね。

ちょうど、電池ボックスの負極の裏側にこの発振回路が位置していたので、液漏れの液がこの基板にも降り注ぎ付着し影響がモロに出たようです。

では、この状態で電源導線を仮付けし起動してみます。

お問い合わせ時に通り、卵は、コロコロしますが、やはり孵化しません。

もちろんですが、時計も進んでいません。

やはり発振回路が停止していそうです。

因みに、時計用の発振とシステム用発振回路は別々回路なので、時計が進んでいなくとも起動しますし、システム自体は動作します。

時計用の32.768kHzの発振もオシロで計測してもうんともすんともです。

まぁ、そりゃそうだよね、発振回路がこの腐食状態であれば発振はできません。

Hiに張り付いたままです。

発振回路を詳しく目視確認します。

発振回路の外付けコンデンサーや帰還抵抗、制限抵抗も液漏れの粉で埋もれ基板の配線にもこびりついています。

テストパッドも設けられていますが、粉が吹いています。

アンプバッファは、COB内のICチップ内と思われますが、その他の回路は、基板からも推測できました。

発振回路については、こちらに詳細がありますので、勉強できます。

自分は、車載マイコンの設計と評価をしていたエンジニア時分に、これでもかという解析と評価をしていたので、たまごっちでも同じような発振回路にお目にかかれるとは思いもしていませんでした。

液漏れの腐食によるリーク電流や基板の誘電率の変化、何より各部品の劣化が進行しているので、この時点で本来であれば修理不可能と判断となります。

このレベルの液漏れ腐食は、小手先の腐食部分の洗浄などは無力と思われます。

ですが、宅配おもちゃ病院は違います!

他のおもちゃ病院では、お手上げでもできる限りは尽くします!

ᕙ( ‘ω’)ᕗ

クリスタルを交換し、基板や部品に影響の出ないクリーナーで掃除します。

強くゴシゴシすると、弱ったパターンが剝がれるので、拡大鏡で確認しながら洗浄します。

クリスタル交換します。

クリーナーでざっくり除去できるこびりついた粉を物理的に除去します。

それでも残った粉は極細のピンセットで地道に剥がします。

この過程を4,5回繰り返し、もうこれ以上物理的に剥がすとパターンが剥がれてしまうかもしれないという程度までとしました。

次に半田付け部分に腐食とクラックも入っているだろうから、各チップ部品の半田付け部を溶かしなおしします。

すると、時計が進み始めました。

⸜(´・∀・)_∠※ ヤッター!

しばらくすると、卵も孵化し成長し始めたました。

ですが、だいたいこの手は、糠喜びがほとんどです。

時間が経つと再発します。

というのも、半田ごてで一度熱しているので、その熱の影響で一時的に動作しただけであり、熱が冷めると再発することが多いです。

で、このまま時間をおき経過観察します。

ごはんやおトイレ、お風呂や庭の植物に水をやったりします。

自分も夕食を取りお風呂にも入って様子見しましたが、なぜか時間の進み方に早かったりと不可思議がことが出ています。

やや怪しい気配がムンムンしていますが、リセットしてみたり様子見を継続します。

ですが、翌朝、時計が停止してしまいました。

というか電源も落ちていました。

_| ̄|o チーン

もう、強制リセットしても、時計は進むことはありませんでした。

依頼者のところで、1日経つと電源が落ちるという現象は、これだったのですね。

もう、ここまでか、、、。(´・_・)

COB内のボンディングに剥がれがあって基板を温めるとくっつき、冷めると離れているのかもしれません。

であれば、やはりもう、ここまでか、、、。(´・_・) Part2

いやいや、こんなことではあきらめません。

何度もですが、こういうときは基板を眺めるに限ります。

なんと!

メインICのあるCOB側の基板面にVIAの穴を伝ったであろう液漏れの粉と腐食が広がってします。

ただですが、この回路付近は、発振回路とは無関係ではあります。念のためですが洗浄と粉を除去しておきます。やはり、時計は止まったままうんともすんともです。

この腐食については、何を期待してもいなかったのですが、再度基板を眺めていると、この時です!

歴史が動きました!⸜(´・∀・)_∠※

再度、発振回路を眺めていると、原因が判明しました。

※やはり、行き詰ったときは基板を眺めるに限りますね。

前述の発振回路のチップ部品の底面に取り切れない液漏れの粉が詰まってします。

25xの拡大鏡でやっとわかるレベルです。

おそらく、この粉で制限抵抗や帰還抵抗の抵抗値が変化していそうです。

また、外付けコンデンサーにおいても容量値も変化し発振条件の定数が変化します。

もう、この影響しか考えらませんというか、もうここに望みを託すしかありません。

極細ピンセットで残留の粉をそぎ落とします。

※画像を撮影していませんでしたが、カメラのマクロ撮影でも分からないレベルです。

さてさて、無論、一時的な回復はするのは分かり切っていますので、十分を時間をかけて経過観察しようと思ったのですが!

時計が安定しません。悪化しています。

万策尽きました。_| ̄|o チーン チーン

でも、また時計も止まるんでしょう!?

やっぱりね。しばらくすると止まります。ー_-;

ですが、何気にクリスタルの足をピンセットでちょんちょんしてあげると再度動き出しました。

ですが、この状態で24時間経過観察しましたが、やっぱり時計は再度停止します。

外付けコンデンサーなりの定数が変化してしまい、外部からトリガを与えないと初動しません。

んんん?

クリスタルの足をピンセットでちょんちょんして動き始めるなら、また半田クラックでもあるんじゃね?

ってことで、期待もせずクリスタルを再半田してみました。

するとどうでしょうか!

時計が進みだしました。ですが、これも糠喜びにならないように熱が冷める十分時間が経過するのを待ちます。

ドキドキです。

また停止してしまわないか、ドキドキしながら待ちます。

待つこと24時間以上経過しました。

無事です。

これ、直ったんじゃね!?

たまごっちもスクスク成長しています。

途中、なんども乾電池の抜きと差しを時間おいて繰り返しやってみたり、強制リセット繰り返したりしましたが、無事稼働します。

これ、直ったんじゃね!?

こんな感じで動作確認

当医院での診断と修理は以上までができる限界でしょう。

もう何度も途中くじけそうになりました。

この状態で依頼者様に返却し、依頼者様のところで、数日稼働をみてもらいます。


ここで返却し数日経過、、、。

※もうドッキドキです。


本日、3日目の動作確認させていただきました。

昨日と同じく、無事稼働しております。

また修理について感想なのですが、液漏れという酷い状態から、何度も何度も細かい所まで作業していただいて、ただただ驚いておりました。

時計も無事稼働しており、卵から孵化した瞬間も興奮して動画を撮っていました☺️

私の思い出のたまごっちに再び命を入れてくださりありがとうございます。

瀧下さんの熱心な治療のおかげです。

この度はありがとうございました🥰

ボランティア活動、陰ながら応援しております☺️

本当にありがとうございました。

~依頼者のご感想より~

と、返却から三日経過確認してもらい無事稼働とのことでした。

めでたしめでたし~。