たまごっちピース 液晶故障

たまごっちピースの修理依頼がありました。

たまごっちピースは、正確にはたまごっちP’sと表現するらしいです。

今までpeaceという平和という意味かと思っていたのですが、バンダイのホームページで確認するとたまごっち P’sでした。

因みに、2012年の発売で既に12年程前の商品です。

不具合は、液晶の発色で黄色が強いということと、ビープ音が小さく聞こえるそうです。

同じたまごっちピースを複数お持ちで、他のたまごっちと比べてても小さく聞こえるとのことでした。

また、液晶の縁に黒い変色が見え、液晶レンズに虹色の滲みも出ているそうです。

盛りだくさんですが、ひとつひとつ診断します。

まず、左側の黄色枠の箇所です。特にキャラクターの上にある滲みが操作中に気になってしまうということです。

実は、左端の縁にもそれらしき滲みは出ていますよね。

これって、液晶の問題ではなく液晶の前面と本体カバーの間にあるプラスチック製のレンズの湾曲や深い傷によるものです。

液晶からの光が偏光されてプリズムのようになっているためです。

この深い傷ですね。

細かい傷で曇って見えないようであれば研磨剤で研磨することもできます。

ですが、今回のような深い傷は、そもそも研磨してフラットにはできません。

それよりも研磨剤を使用して研磨すると傷の周辺にも細かい傷が多く付いてしまいます。

見えなくなってしまったものをまた遊べる程度にまで研磨するというレベルでの研磨ならありです。

ただ、じっとみてください。

深い傷以外の周辺がとてもきれいでピカピカなのです。

これを研磨するのに忍びないので、当医院在庫のたまごっちiDLのレンズがあるので、それに交換してみます。

因みに、180°くるっと回して設置しようかと思ったら、逆側に滲みがでるのもということで別の策を考えました。

まぁまぁきれいな状態のレンズです。

細かい擦れ傷はありますが、液晶の描写はどうでしょうね!?

いいんじゃね!

滲みもなくなり、細かい傷はありますが、これで遊べるでしょう。

ということで、深い傷が付いてしまうと傷の湾曲で液晶の光が偏光され虹色に見えてしまうことが分かりました。

では、次に縁にある黒い滲みを診断します。

レンズ交換前の状態は、これです。

右端の赤枠に何か黒い染みが広がりはじめているように見えます。

依頼者様は、何か故障の前触れかと心配されておられていました。

これだけをぱっと見るとやはり心配になりますよね。

実はこれもレンズの縁の湾曲による偏光です。

液晶横の筐体の黒いところが見えているだけです。( ̄▽ ̄;

分解して液晶自体を確認します。

レンズを外し同じ縁の部分を拡大鏡で撮影しました。

液晶のRGBのドットを描画外の境目がくっきりしていますね。

レンズの縁の湾曲がきついので、この黒い部分が、さも描画されているかのように見えていただけでした。

これは湾曲したレンズを使用しているので避けられない症状です。

その旨を説明し納得安心したもらえました。

では、次行きましょう!

液晶の描画において、黄色の発色が強い件です。

明るさMaxで発色を確認します。

言われてみれば黄色が強いかな!?

という感じでした。

実は、お問い合わせ時に拝見した画像がこちらです。

黄色の発色は強そうです。

依頼者様は、この状態で使っていると、時間が経過するうちに黄色の発色の強さが弱まっているとの情報もありました。

拡大鏡のドットを確認しましたが、これだけで黄色が強いという判断も実は分からなかったりします。

液晶の専門家ではないので、確実ではありませんが、RGBフィルター青の発色が弱くなっているかもしれません。

本来青を混ぜて薄黄色にすべき発色が全て黄になっているかもしれません。因みに、黄は、R=255,G= 255, B=0です。

かつ、時間の経過で発色の具合も変化が現れるという具合であれば、やはり液晶フィルターの劣化か故障の線が強そうです。

もうこうなると液晶の交換以外に手出しできなさそうです。

説得力はありませんが、FPCケーブルの半田付けやバックライトの半田付けを溶かしなおしてみたりしました。

FPCケーブル上のチップ部品には手出しできません。

失敗すると補修が困難になりそうです。

残念ながら、何も改善されずで、液晶の発色で黄色が強いという件は、修理不可能としました。

ジャンク品からの液晶移植もできるかもしれませんが、FPCケーブルが、恐らく紫外線固着側の接着剤で基板と接着しています。これを剥がせる自信がありません。

念のためメンテナンスとしてクリスタルと電源用の電解コンデンサーも交換してみましたが変化なしです。

最後に、ビープ音が小さい件です。

目視上問題なさそうです。

電池ボックスの蓋をあけて状態では、他のたまごっち同様の音圧ですた蓋を閉めるとやはり小さく感じます。

この圧電素子も新品のΦ=20mmの圧電素子に交換してみます。

交換はしてみたものの、やはり変化はありませんでした。

たまごっちのビープ音は、BTL駆動のような、COBから出ている配線に100Ωのダンピング抵抗を介して圧電素子が駆動されております。

100Ωのダンピング抵抗は、他のたまごっちシリーズでも同じ回路構成になっておりました。

音圧が小さくなった原因は、COB内のICのIO回路のドライブ能力が低下しているためと思われます。

残念ながら、音圧についても修理不可能となりました。

今回の依頼においては、液晶レンズの傷の偏光解消のみで、他の箇所については現状のままとなりました。

たまごっちの液晶については、チラつきなどいろいろ故障が起こることも予想され、製造年からかなりの年数が経過しております。

いづれも経年劣化による故障となりそうです。


今回もいろいろと訳ありな個体でしたができる限りの手を尽くしてくださり本当にありがとうございました。

解決できない不具合もございましたが、そこも含めて更に長く遊べるよう大切に扱っていこうと思うことができました。

~依頼者のご感想より~